「がっしりと」#みかんの短編部屋お題より(BLより)

隣の彼は体格ががっしりとしていて、とても羨ましい。この薄い腹を見よ。となりは分厚い本のよう。隣にいるのが恥ずかしくて、そそくさと着替えて、そそくさと逃げるように去った。はあ、とため息をついていたら「なぁオレなんかした?」とがっしりは追いかけて言ってきた。


なんで追いかけてくるのか。

わからなくて「別に」と話題を放りなげる。

「いや、だって、なんか、こっち見てたし。気ぃ悪くした?」

それは自分次第というか、コイツのせいじゃないんだ。いやコイツの身体のせいだけど。

「あ~、鍛えてるなあって。体格の違いにさ~」

「……なんだ、それかよ。気にすることか~?」

「うっわ、その台詞、いっちばん聞きたくない。僕はあばらも浮いてるボキボキですよ」

ふっとコイツは笑って「なんだよ、ボキボキって」と口にした。

「まー、なんだ。気分は悪くしたけど、そんなに重要そうじゃなくて安心したわ」

「どこをどう安心するんだよ」

「身体鍛えてるのとボキボキさんの意識は遠くねえって話」

「わけわかんねえ」

コイツは笑って体育館へ去って行った。

「近いって言いたいのかよ」

そんな近さは同性であるくらいなのに、追いかけてきた時の顔は焦っていて、僕は、そんな顔をさせる男なのだろうか。そんなことない、と唇を噛みしめた。

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