俺TUEEE異世界転生でチート無双してたらハーレム悪役令嬢パーティーから追放されたけどもう遅いのでダンジョン配信するわザマァ

雪下淡花

mp0. モノローグから始まるプロローグ

時は2023年。


異世界から突如侵略してきたダンジョンを攻略するための配信ライブが巣ごもり需要により人気急上昇になっている。


俺、アレックスも最近になってトレンドの流れを察知して手早くおこぼれにあずかろうと配信の準備をしている真っ只中だ。


あーあ、なんでこんなご時世にソロライバーになっちまったのか。

俺はこれまでのことを思い出しながら深く反省した。



~~~

あれは10年前。キルラキルが放映されていた頃…。


おや? 今ドキッとしたか?

そう、あの時からもう10年が経っているんだ。

時間の流れってのは早いよな。

ちなみにまどマギは12年前、らきすたハルヒは16年前だ。


話が逸れたな。

2010年代前半、SAOの熱狂も冷めやらぬ頃。

俺アレックスも他の例に漏れず、ネトゲのMMOみたいにスキル制があるのが当たり前になっているファンタジー異世界に転生していた。90年代のフォーチュンクエストでは半ば取り入れられていたスタイルだが人口に膾炙されるのに時間が要ったということだろうか。


夜中にトラックに轢かれたら死後の世界の狭間で女神が現れて「間違いだったから」とチートスキルを与えられて転生し、そのスキルを元手に最強無双で敵を倒しまくって女の子にモテまくっていた。

スマホ太郎を参考に、「俺また何かやっちゃいました?」なんてとぼけながら問題解決してやると異世界の少女たちはいくらでも惚れてくれたし最終ルート確定させなければ実質何股でも可能でやりたい放題できた。

それが今では……。

畜生、転生者に救いは無いってのか!?


そもそも転生って何だ。生前と年齢も同じ姿形も同じで着てる服まで一緒だったら転生じゃなくて転送じゃないのか?それにどいつも転生先の生活になじんで、元の世界に戻りたい素振りも見せない。

スローライフに行き着く奴らもいた。


一方俺はというと、これまでの俺TUEEE無双やチートスキルでキンキンキンキンしてるだけだと飽きられてきたので「才能があるけど周りから理解されずに貶されてパーティーから追放されるが、実は俺がやってきたことが超重要だったせいでパーティーが内部崩壊していくのをザマアと思う」系にシフトしていった。

これはヤバいぜ。インフラエンジニアの保守的な日常そのまま過ぎてわかりみが深い。

自分からアピールするより、他人が困る姿を見て自分が実は大切な人だと思われたい。そんな現代の若者の歪な欲求を垣間見てゾッとしたぜ。

自称社内ナナチ的なポジションを狙ってる奴はこれ系にハマるとヤバいから気を付けた方が良いぜ。これは自戒だがよ……。んなぁ。


ともかく、俺もその潮流にあやかってパーティーから何とか追放されようとしたんだが……。冷静に考えるとプロの世界ってのは怖いもんで、勇者パーティー級になると1000匹テイマーぐらいザラにいるんですわ。年に10冊の単行本新刊とか。バケモンかっての。自分にある才能に自惚れていて「実は俺有能なんだけどなー」なんてやってる隙に勇者パーティー様の方は、来年アニメ化が決まったとか特典付き販促して貰えたとかパチスロに載せてもらうとかどんどん先の方に進んで行ってしまってた。時代の潮流に取り残されたザコの追放なんて見向きもされなくなっていった。


まあ仕方ないんで悪役令嬢でハーレム組んでみるかと思ったものののおジャンル違いでしてよと一蹴され、気がつけばベッドに寝転んでショート動画をスクロールするだけの毎日。


そこでふと気付いた。


「あれ、俺って異世界に転生したんじゃなかったっけ?」と。

そう。実は異世界でダンジョンに籠もっていた俺はダンジョンごと現代世界に再召喚されたのだった。


現実を浸蝕するように異世界から伸びてきたダンジョンは、その中でだけは異世界と同じようにスキルが使えるらしい。しかし放置しておくとモンスターが溢れてきてしまう。

現代人たちはダンジョン攻略を配信することで攻略情報を共有しつつ、その中で目立って人気配信者になることを夢みている。


そんなわけで、俺は2000年代の異世界人として初のダンジョン配信者を目指すことにしたのだった。


アバヨ、10年代のなろう系の呪い達。今まで世話になったな!

俺は新世代が来る度に這いずり寄っておこぼれを頂戴しに行くからな!


俺はカメラをセットし終えて配信のチェックをした。

「えーっと、映ってるかな~? とりあえず誰も見てなくても、これからもこんな感じでずっと続けていこうと思いま~す」



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