怖そうで怖くないちょっと怖い話

花綻ことん

アレが来る日

 長野出身のBさん夫婦は実際の海を見たことがなく、生まれた子供が五歳になった時に、海を見に行こう、と東北のある県へ旅行に出かけた。どうしてそこに決めたかというと、テレビで綺麗な砂浜が紹介されているのを見たからだった。

 東北新幹線の最寄りの駅で降りるとレンタカーを借りて、カーナビを頼りに海を目指した。

 しかし目的地まであと10キロもないくらいの距離で、マップデータがありません、とカーナビは案内を中断してしまった。画面を見ながら海の方に向かったが、何故か近くをぐるぐると迷いながら、何度か同じ道を辿ったりして、なかなか海には出られなかった。

 これはおかしいと、Bさんは車を寄せ、近くを歩いていたおじいさんに話しかけた。

「テレビで紹介されてるの見て、○○海岸に行きたいんですけど、迷ってしまって」

 おじいさんはあー、と唸ると海岸の方を見やり、それから腕時計で時間を確認した。

「悪ぃけんど、今だっきゃちょっと無理がもな。アレ来てるはんでや。昼飯まだが? んだば、この先さある○○食堂さお勧めだ。ラーメンうめえがら。のんびり飯食ってからだば、多分ちょうどいい時間さなるして、へば行げるようになってらど思う」

 おじいさんの言う食堂でおいしい煮干しラーメンを食べて、そのあとはすんなりと海岸に着いたそうだ。

「アレが来てるって、何が来てたんでしょうね。たどり着けなかったってことは、見ちゃいけないモノなんでしょうけど」


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る