閑話2

プールの見える部屋

 そのマンションは山を切り崩して建っているため。かなり高台な立地にある。


 マンションに入るとエントランスの先にエレベータがあり。そのエレベータに乗り5Fまで昇り。


 そこからまた別のエレベータに乗って、各フロアに行くという感じだった。


 …………


 7月初旬。


 僕は汗だくになりながら15階にある現場に向かっていた。


 エレベータを降り。目的の現場に向かい渡り廊下を歩いていると、斜め下の方から子供たちの声が聞こえてくる。


 声のする方を見るとプールで『きゃあ~』とはしゃぐ子供たちが見えた。


 その小学校のプールは屋上に設置してあり。


 高台の立地に建っているこのマンションからは、見下ろすような感じになるので、プールの様子がよく見える。


 『涼しそうで、羨まし~』と思いながら、現場に到着。玄関のチャイムを押す。


「はい」インターホンから家主の声が聞こえた。


「トイレの修理でお伺いいたしました。北区工務店(仮)のアカバネです」


 玄関が開き。中から40代半ばくらいの男性が出て来た。


 部屋に入り、トイレを案内される。


「このトイレの水が止まらなくて、困ってるんですよ」


「失礼いたします」トイレの便座を開けると、便器に溜まった水が水漏れでユラユラと揺れているのが分かる。


 それはトイレタンク内にあるゴムパッキンの劣化によって起きる水漏れだった。


「タンク内にあるゴムパッキンの劣化が原因と思われます。交換工事が8千円になります」


「それで大丈夫です。よろしくお願いします」


「承知しました」


トイレ内のパッキンを交換。水漏れがないのを確認してからお客様に声をかける。


「トイレの水漏れ修理完了いたしました」


「暑かったでしょう~良かったらこちらでコーヒーでもいかがですか」


「ありがとうございます」炎天下の中。工具箱を担いで歩き回っていたので、喉がカラカラだった僕は、二つ返事でコーヒーを頂くことにした。


 クーラーが効いたリビングに案内され、コーヒーを頂きながら修理代の清算を済ませる。


「消費税込みまして、修理代が8千円ちょうどになります」


「分かりました。ちょっと寝室からお金を取ってきますので、待っていてください」


 お客様がリビングを出て行ったあと。部屋の中を見渡すと窓辺に望遠レンズの付いたカメラが設置してあるのが見えた。


『凄いカメラだな~何を撮るんだろう』と思っていると。


「お待たせしました」お金をもってお客様が戻って来た。


 お客様からお金を受け取りながら「凄いカメラですね」とカメラの事を聞いてみた。


 お客様は少し動揺した感じで「て……天体観測が趣味なんですよ」と答えた。


 どこか話し難そうな感じだったので、それ以上話を広げるのをやめ、お暇する事にした。


「すいません余計な事を聞いてしまって、また何かありましたらいつでも連絡ください」


「いえいえ大丈夫です。ありがとうございました」


「失礼いたします」


 お客様に挨拶をしてから、玄関を閉めエレベータに向かう。


 …………


 リビングを出てすぐ、お客様が閉め忘れた寝室ドアの隙間から中にある本棚が見えた。

 

 本棚にズラリと並んでいたアルバムのタイトルは…………。


『〇〇小学校女子 プール写真集』だった。

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