カクヨムから紙の書籍向けに改稿するに当たり苦労したこと

紙屋ねこ(かみやねこ)

ログラインという背骨を物語から引っこ抜きもう一度入れ直す

今年もまた秋の小説の各賞の受賞者が出る季節になりました。


そんな時期になってようやく第8回 角川文庫キャラクター小説大賞・奨励賞受賞作を刊行していただける運びになりました

「後宮の宵に月華は輝く 琥珀国墨夜伝」

(鵲の白きを見れば黄泉がえり~死者の手紙届けますから改題)

2023/10/24発売予定です!

公式サイトで各所通販サイトに飛べます

https://www.kadokawa.co.jp/product/322212000867/

お近くの書店さんで手に入れたいとか思ってくださった大変徳の高い方はよかったらe-honさんやHonyaclubさんなどで予約をしていただけると確実かと思います!


とひとしきり宣伝を挟んだところで本題です


第8回 角川文庫キャラクター小説大賞の申し込み総数が519作のうち、57作が一次選考を通過し、そのうちカクヨムからの投稿は28作でした。

約半数がカクヨムから通ったんだと思うと、思ったよりもWeb投稿からの一次選考の通過者が多いんだなと思った記憶があります


Web初のヒット作がやはり目立つからと言うのもありますが、人によってはパソコン環境がなくても小説が書ける時代になったということだと勝手に思っています(あくまで個人の感想です)


というわけで

『カクヨムから紙の書籍向けに改稿するに当たり苦労したこと』


と言う形で創作術的なエッセイを宣伝代わりに書いてみます


大前提として、あくまで今回の角川文庫キャラクター小説大賞に関して感じたこと、ということを踏まえて読んでもらえればと思います


実は最初に担当さんから言われたのが

「プロットから作り直しましょう」

ということでした


賞をとった作品が、プロットの作り直しからするの!?と思う方もいるだろうし、実際リアル友達からは「賞をとってからこんなに作品になるまで時間がかかるとは思わなかった」と驚かれたりもしたんですけど……


この辺はあくまで私の勝手な妄想込みですが、正直、どこがよくて拾ってもらえたのかさっぱりわからず(直球でお伺いもしつつ…)自分なりに考えたのですが、やはり小説の賞というのは、ともかく作品主体で見ていただいていて、文章の完成度も含めて、『小説としての完成度』の高い方(もちろんほかの要素も含めてだと思いますが)から大賞、優秀賞、奨励賞となっていて、自分の小説は拙いところもあるけど光るところもあったということだろうと


じゃあそれをどう商品としての書籍にするのかというときに、拙い部分をできるだけお金をいただけるだけのレベルに引き上げないといけないわけですね!


そんなわけでいったん書きあがった小説から背骨を引き抜いて、まっすぐにして入れ直すみたいなことをしていました。

これが理屈ではわかっていたのですが、ものすごく大変で、最後の最後まで足掻いた部分でした


ようするに「物語のログライン」をきちんと見直して、そのログラインに沿った物語になっているかを修正するということだったと理解しているのですが、理論ではわかっていても修正の仕方がわからない


小説の構造にもよるのですが、

自分の話は「物語のログライン」とともに「登場人物たちそれぞれのログライン」があるような形になっています

そのうち、もっとも大事な主人公の夏月(かげつ)のログラインを明確化するのにとてもとても苦労したのでした


正直に言うと、普通は物語に関してはともかく、主人公のログラインというのはここまで苦労して直さないのでは?と思うくらい考えたので、キャラクターを突き詰めて書くというのは基本中の基本なのだと改めて思いました


最終的に提示した物語のログラインは『代書屋をやっている藍夏月(主人公)が冥府の神・泰山府君とともに事件を解決するお話』だったので、そこはWeb投稿の段階からあまり変わってはいないのですが……。


ようするに「自分(作者)はこうだと思って書いた」を「読んだ人は違ったふうに受け止める」というズレがあり、そのズレをいかに少なくするように修正するかというのは、作家側の感覚にゆだねられる部分が大きいので、そこを編集さんとコミュニケーションをとりながら直す能力が求められると言うことだと思います


細かく書けたらここでいったん内容を分けるところですが

思ったよりも感覚的な話になって具体的に書けてないので

次の段階も一度に書きます


さて

ログラインの見直しがあまりうまくいかなかったので……

とりあえずできるところからとっかかろうと思いました

それが

『Web小説の連載形式から一冊の文庫本への直し』

です


これは必ず指摘されるだろうと思っていたので、そこまでの驚きはなかったのですが、直しをするに当たって角川文庫のほかの方の作品を、自分が改稿するポイントを踏まえながら読み返しました


結局のところ、もっとも小説の勉強になるのは、小説の書き方を読むことよりも、本になっている小説を読み、どこまで分解し、どこまで理解できるかに尽きるのだろうと


最近ではWeb連載がそのまま書籍化されるケースもありますので、これはケースバイケースの話ではありますが(作品そのものがWeb連載の段階でかなり完成度が高いというケースもあると思いますし)

基本的には横書きでの読みやすさと縦書きでの読みやすさは違うと思っているので

縦書きでの読みやすさを追求する形での文章の推敲をしつつ、連載形式の階段を外しました


連載形式の階段を外すというのは

具体的に言うと、シーンとシーンを基本的に繋げました


物語はおおざっぱに三章形式とか四章形式とかありますが、

Web連載だと一回分が3000文字くらい?で考えていたので、ものすごいたくさんの章があったのです


なにかで流れてきていたのですが

『クライマックスとは、時間に対して描写が厚くなっているところのことだ』

※普通の部分では見開き2Pで一日とか一週間の時間が進むのに対して、クライマックスでは十分とか一時間とか、短い時間に対して何十ページもの描写が割いてあるという意味


と言うのを見かけて、なるほどなーと思っていたのですが

この、クライマックスだと自分が思っている部分を中心にして、連載形式のちょっとした締めの部分を次に繋げて、大きな山場をメインにして一冊の書籍としての読みやすさをあげたつもりです


これはWeb連載から一冊の文庫本への改稿では重要なポイントかなと思うので、もしチェックしてみたい方はぜひ文庫本を購入していただいて、読み比べていただければと思います!(宣伝)


あまりにも大変いっぱいの改稿をしたので語り始めると多分無限に長くなると思うので、ひとまずここで終わります(また何か役に立ちそうなことを書けそうだったら、あがってきます)


装画を描いてくださった七原しえ先生の大変美麗なキャラクターデザイン並びに書影が公開されてますのでぜひ見てやってください!

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