第十話 私は絶対悪くない/Hok from UK
というか俺は、女子になんて興味なかった。
だって女子って馬鹿じゃん。隣のクラスの誰々がイケメンだって言ってキャーキャー騒いで、隣の区のサッカー部のエースがプロにスカウトされたって話でワーワー盛り上がって。本当馬鹿。まあ、あいつらが全員馬鹿じゃなくっても、俺は俺の実力で今の地位を確立したんだけどね。ダンスで。
俺は英国からの帰国子女で、英語はペラペラ。向こうでブレイクダンスに染まって、今は浅瀬船中学のダンス部に所属してる。女子の方の副部長の秋泉とは普通に会話ぐらいはするかなって感じ。秋泉は女子の中ではまあまあマシな方。今イケてるダンサーの名前もだいたい知ってるし、リスペクトしてるダンサーの動画を見せたら「すご〜い」とかキャーキャー言うだけじゃなくて「ウチはこういうの目指してるんだよね」ってすぐスマホ(一応うちの学校はスマホの持ち込み禁止なんだけど)を差し出してくるから、アリといえばアリかなって。秋泉が幼馴染の田中美樹を紹介してきて、一応付き合うって流れになったのもまあ──秋泉の顔を立てたって言い方が正しいか。あと女子バレー部のレギュラーだし、運動部のわりにムキムキしてないから……似合いのカップル扱いされれば校内での地位も上がりそうだなって。それと体目当てだよ、ぶっちゃけ。悪い?
正直、浅瀬船になんか入りたくなかった。軽く検索かけても治安の悪い公立中学って有名だし、俺ぐらいの英語力があれば私立にだって入れた。それなのにダディが……ああ、父親のことだけど、とにかくdadが「公立の雰囲気も知っておいた方がいい」って言うから仕方なく……。
こんなことに巻き込まれるぐらいだったら、momに加勢してもらってdadを説得して、私立中学を受験しておくべきだった。苅谷夜明。あのクソ女のせいで、本当に迷惑してる。
俺以外の4人が「悪魔が見える」「狐の声がする」とか言って不登校になってるから、一応俺もそれに倣って学校には行ってない。というのも、俺たち5人は苅谷夜明に対するいじめを行った加害児童ってことになってるから。
huh?
いじめ? 加害? 俺が? 他の連中は知らないけど、俺のは許される範囲っしょ。ああいう陰キャがいちばんムカつくんだよな。クラスの中で『犬ごっこ』を流行らせたのは俺。クラス替えしてすぐの時期、なんとなーくみんなが打ち解けてないから、交流のために提案したってワケ。それをあの女。苅谷夜明は馬鹿にしたような目で見やがって。
『ふうが悪い』だっけ? 意味不明なんだよ。日本語喋れっつーの。
苅谷夜明を夏休みの学校に呼び出したのは、一応カノジョの田中美樹。美樹とは夏休みに入ってから保健室で何回かヤッてたし、あとはプールとか、とにかく夜の学校は俺らの遊び場になってたから、侵入するのは簡単だった。裏門の鍵をちょっと……ね。
で、美樹は苅谷夜明が大事に大事にしてた狐の絵が描かれたしおり、西林が破いたそれを餌に、あのいけ好かない女を学校に呼び出した。
「七不思議を全部動画で撮影したら、しおりは返す」
自分のオンナだけど、馬鹿なんだなって思った。それに、そんな言葉に釣られて夜の学校にやってくる苅谷夜明も。
女は、マジで馬鹿。
苅谷夜明が七不思議を全部動画で撮ったかは、知らない。あの女は明け方に用務員室で血を吐いて倒れてて、自殺未遂したって大騒ぎになったから。自殺未遂で、どうやったら血を吐くことになるんだかマジ謎なんだけど。
ただ──その直後かな。俺以外の4人が、「悪魔」とか「狐」について騒ぐようになったのは。俺には見えないよ、そんなの、別に。でも一応は参加しておかないとまずいかなって思って、momに「devilがこっちを見てる」って訴えて部屋に引きこもった。dadに言わなかったのは、dadはそういう超常現象を信じないタイプだって思ったから。俺と同じだ。男だもんな。
美樹からは毎日メッセージが送られてくる。美樹には狐が見えてるらしい。
huh?
やっぱ、女って、どっかおかしいんだよな。俺はホモじゃないから女とセックスするけど、まあ、結婚願望はないかな……。女の面倒見ながら一生過ごすぐらいなら、男同士でつるんでる方がかなりマシ。
──そう。思っていたのに。
momが他の家の保護者と相談して、霊能者に相談するってことになった。錆殻光臣とかいう、テレビタレント。あんな奴を信用するなんて、momも所詮女だよな。
そうだよ、momは女だから。騙されやすくって弱くて馬鹿だから。美樹や、苅谷夜明と同じだから。
だから。
俺の部屋に今いる、この、黒い、ヤギみたいなやつは、幻覚で。
momがあんまり騒ぐから、俺もちょっと心配になっちゃって、幻を見ているだけで。
「
なんでヤギが、悪魔みたいな生き物が、美樹の声で俺を呼ぶんだよ。
「
なんで。
俺は何もしてない。何も悪くない。悪魔に呪われる覚えなんてない!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます