第12話

熱が下がった。

だが頭がくらくらする。


「とんび、大丈夫?」

どこからともなく声がする。

「誰?誰の声?」


「一輪車、とんび君には危ないよ。」


一輪車、危ない

小学生の時に仲のよかった朋子ちゃんだ。


昔、それでもと一輪車に乗って頭からひっくり返った。

あの時、一緒にいた朋子ちゃんが刹那目を閉じたのだ。

僕が大怪我をする瞬間だったのだが、その時なぜか体が浮くような感覚が‥‥‥‥ないか‥‥‥あるわけない。



「どなたですか?

あれ?朋子ちゃんが来たって?

なんで、ご存知なのですか?」




その30歳代の男は、少し肩をすくめた。

「大変恥ずかしいんだけどね、実は数日前あたり、俺のじいちゃんが犬の散歩していてさ。

ちょうどここらへんで、ひっくり返っちまったんだ。」


「ああ、大変でしたね。

転ばれたとかですね。」


すると胸ポケットから、小さい紙を取り出した。

「こんな大切なもの、なんで直接渡さないかね」


男は、とんびにそれを渡した。

そこには、


(とんび君へ


とんび君、人ひっくり返しちゃだめだよ。

近いうちにまた会いにいくね。


                朋子)


とあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る