第28話 無事に…。

俺たちは夕方に何とか王都に入った。

すぐに冒険者ギルドへ向かう。

盗賊と化した冒険者を通報するためだ。

盗賊は有名なCランク冒険者達だったらしい。


「信じられませんが、本当のようですね…。おそらく登録抹消の後、逮捕されることになるでしょう。」


王都のギルド職員の女性が説明する。


「それにしても、よく無事でしたね。まだEランクなのでしょう?」


「アハハ…。」


俺は誤魔化すように笑った。


「たまたまですよ。運が良かった。」


「なんてこった!この方は…モゴモゴ…。」


オーランドさんが余分なことを言いそうだったので、慌てて止める。


「では。」


俺は慌ててオーランドさんを外に連れ出した。


「すみません。口をふさいでしまって。でも大げさには言ってほしくなくて。」


謙虚けんきょなのはいいことですが、もっとほこっていいんですよ?」


「…まあ、いいでしょう。今夜はご馳走しますよ。それと報酬は倍に引き上げます。」


かくして俺はオーランドさんに夕飯をごちそうになり、高級宿まで手配してもらった…もちろん代金もおごりである。


村までの帰りは馬車を用意してもらった。


「アルティナ王国、今度ゆっくり観光してみたいものだな。」



****



「本当に倍の金額だ…。」


4万ネルを冒険者ギルドで受け取った。

そもそも本来の仕事自体、商品はほとんど納品できなかったわけで…。

俺が持ってた高級品だけ納品出来たのだ。


店の人は最初は驚いていたが、盗賊自体珍しくないようなので、よく無事で…と心配されて終わった。

オーランドさんからは次も是非お願いしますと頼まれたけど…。

俺まだEランクだしなぁ。

今度からもうちょっと上手く逃げれるように?ならないと。

ちゃんと魔法とか使えるようにしたほうがいいかも。

初級っていうだけあって、誰でも使える魔法なんだろうし。




「「ええ―――っつ 」」


「盗賊に襲われただって??」


アンとファーレンさんに驚かれる。

村に帰ってきたのでファーレンさんとアンに挨拶をしにファーレン宅に寄ったのだが。


「怪我してないかい?というかよく無事で帰って来れたな。」


アンは驚きすぎて放心状態だ。

おーい戻ってこい~。

顔の前で手を動かしてみる。

しばらくだめかも。


「外は結構危ないな…無事で良かったが…。」

ファーレンさんもアンが放心状態で、気になってちらちらと見ている。


「商人相手でしたので、狙われたのかもしれないですけどね。」


「仕事を請け負うときは気を付けないとだな。何が起こるかわからんし。」


「まあ、しばらくは大人しくしてますよ。」

お茶をすすりながら、言う。


「まあ、そうしてくれると助かる。娘も気が気じゃないだろうしね。」

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