第13話 依頼人
俺は依頼人の家の前に来ていた。
「ここで、間違いないよな?」
今思えば、俺の外見は目つきが悪くて、ガタイのいい
全くそんなことは無いのだが。
今までの人生、人に嫌われたことはあったものの好かれたことなどなかった。
ネムさんも疑っていたわけではないだろうが、少し疑問を持っていてもおかしくはない。
「まあ、今更だけど…。」
俺はドアをノックした。
「そういや、俺を見て驚かないかな?」
ここに来て、自分の外見を思い出す。
何せ初対面なのだ。
「は~い。」
若い女性の声がした。
え?女の人?
家事手伝いっていうから男性かと…。
ドアが開けられた。
目の前には銀髪で、背が低く髪が長い女性が立っていた。
「ああ、冒険者の方ね。どうぞ入ってください。」
彼女は俺を見ても動じることなく、落ち着いた口調で家に招き入れた。
「あれ?」
俺は呟いてしまう。
この人エルフじゃないだろうか。
耳が長くてとんがっている。
新緑の瞳が神秘的な色をしている。
彼女は、俺の言葉を全く気にしていない様子だった。
「私は、カモミール・ムルフェ魔法使いをしています。研究してるとお掃除やら食事やら疎かになってしまって、今回依頼しました。」
俺は自己紹介をする。
「俺は荒滝 未来です。ミライと呼んでください。簡単な料理や掃除くらいなら出来ます。よろしくお願いします。」
ぷっ
カモミールは笑い出した。
「ミライくんだっけ。外見と中身が全然違うね~。今まで苦労してきたんじゃない?まあ、この世界なら生きやすいだろうから安心してね?」
「え?」
俺は一瞬不安になった。
「ごめんごめん、私少し見える人だからさ。今までの君の過去とか…。異世界から来たとか言わないから安心して?」
俺の中でエルフのイメージがガラリと変わった。
「ちょ、ちょっと?カモミールさん?何ですかこれ…。」
前の世界のごみ屋敷っていう感じに近いだろうか。
「どうもお掃除って苦手みたいでね。出来なくてさ。一応努力はしたんだけどね…。」
これはかなり
酷すぎる。
足の踏み場もないとはこのことか。
「はぁ。まあお仕事だし。頑張りますか。」
俺は袖をまくって、近くにあるゴミ?に手を付けた。
少しは綺麗になったかな。
時間の感覚がわからない。
半日は経ったのだろうか。
外を見るとまだお昼前かもしれない。
「お~だいぶ片付いたね。良かった、良かった。」
「こうなる前に何とかしてくださいね?」
「はいはい。」
「大丈夫だよ、そしたらまた雇うから…。」
全く懲りていないようだ。
俺の仕事は家事手伝いのみ、あまり口うるさく言わないでおこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます