歩きながらマイクロバスの窓に視線を走らせて中を窺う。

 少なくとも二人は乗っているな。助手席側の列の席に座っている人が見える。前から三番目の席に男。五十代くらいの中年か。最後尾座席から一つ前の席に女の子。小学生に見えるな。招待状に書いてあった幼き助手か?

 女の子と目が合った。愛想の良い笑顔で煌月を見ている。

 ドアを開けて、頭に気を付けながらバスに体を乗せる。予想を裏切らない狭さに、のそのそと車内を進む。既に乗り込んでいる招待客の視線が煌月に向けられる。

 運転席側の列に三人座っている。丸眼鏡の四十代くらいの男、二十代前半くらいの若い女性。二十代後半くらいの男は寝ているようで、目を閉じて倒した座席に背中を乗せている。

「なんやごっつデカイヤツが来おったな」

 丸眼鏡の男が半笑いで声を掛けてきた。前から二列目の運転席側の席から顔を出している。

「こんなマイクロバスじゃ狭くてかなわんやろ?」

「ええ。でも慣れてますので大丈夫ですよ」

 背中を丸めてゆっくりと歩く。

「ねぇ巨人のお兄さん、一番後ろが空いてるよう」

 若い女性が手を上げた。茶髪のショートヘアーだ。白いパーカーで前のファスナーを少し下ろしていて、インナーの深緑のシャツが見えている。見た目はボーイッシュな感じだ。運転席側の最後列の一つ手前に座っている。煌月と目が合った女の子の席とは、通路を挟んだ反対側だ。

「ありがとうございます。最後尾に座らせてもらいます」

 巨体を引きずるように一番奥へ進んでいく。四座席分が横並びの最後尾座席に辿りつくと腰を下ろした。通路の真正面の席だ。トランクは横の座席に置いた。空き座席のほうが多いくらいだから占有しても誰も文句は言わない。頭は天井に触れているがそれはいつもの事。

 ここには私を入れて六名。参加者はこれで全部だろうか。

 佐間も何人招待されているか知らなかったし、招待状にも書かれていなかった。

 着席の直後、前の座席の上からひょっこりと幼い顔が現れた。先程目が合った女の子だ。顔立ちは日本人よりも西洋人に近い。

 ボリュームがある長い黒髪を、高めの位置でツインテールにしている。髪留めは両側とも金属のリング型の物で深紅の細いリボンがついている。リボンは髪を纏める為ではなくオシャレで付いているようだ。

 煌月の頭と同じ高さで二人の視線が交差する。翡翠のように鮮やかで美しい小さな瞳が煌月の顔を覗き込む。

 煌月は表情を柔らかくするのと同時に「こんにちわ」と目の前の少女に挨拶をした。

「こんにちわ。貴方も招待されたのね」

 少し高い、見た目どおりの幼い声が返ってきた。

「ええそうです。そちらのレディも招待状を頂いたようで」

「そーなんだぁ。一泊二日でしょ、とっても楽しみなんだぁ」

 ご機嫌で屈託のない笑顔を見せた。

 二日間の日程だが、これはリアル脱出ゲームとしてはかなり珍しいという。勿論招待状に書いてあったので着替え等を持参してきている。参加者全員がそうだろう。

「お名前教えてくれる?」

「五鶴神煌月です。煌月と呼んでください」

 煌月が名乗ると少女はグリーンの瞳を大きく見開いた。

「その苗字の漢字ってもしかして漢数字の五、鳥類のつる、神様の神? 下の名前が『きらめくつき』と書く?」

「そうです」

 目の前の少女はすぐに五文字の名を理解したようだ。前の方の席で関西弁の男が手帳に何か書き込んでいる。

 名前もだが特に『ゴカクガミ』なんて珍しい苗字だ。初見でどちらも一発で漢字を当てられる可能性は無いと言ってもいい。この子が私の漢字を当てた理由はもしかすると。

「お嬢さん、天野・ルナアリス・奏という名前ではありませんか? 私が受け取った招待状に助手と書いてあったのですが」

 少女は僅かにツインテールを縦に揺らして、

「そうなのです。私の招待状に煌月さんの名前が書いてあったよ。初めまして『白髪の名探偵』さん」

 謎解きの一つという可能性があったが、他の参加者の名前か。では『幼き助手』というのはパートナーということか?

「ねぇお兄さん、名探偵っていうのはさ。もしかして難事件を解決したことがあるからそう呼ばれていたり?」

 後ろの席を勧めてくれた若い女性が割り込んで聞いた。煌月は一瞬黙る。その質問に答えたのは前の席に座っていた中年男性だ。

「そこの兄さん、一部の警察関係者から『白髪探偵はくはつたんてい』って渾名で呼ばれてんだよ」

 年相応と言って間違いない渋い声だ。彼は通路に体を乗り出して煌月達を見ている。

「私の事をご存じで?」

「俺は三流新聞記者の真似事をしているんでな。ネタ探してる時に警察関係者に聞いた事があるんだよ。警察に非公開で協力している一般人が、警察が手を焼く難事件を何件も解決してるって話。その特徴は身長二メートルの大男で若いのに白髪。冷静で特に推理しているときは無表情が多い。あと珍しい苗字だとも聞いた。すぐに分かったよ」

「成程ジャーナリストの方でしたか」

「ジャーナリストなんてもっと真面目で正義感のあるヤツの肩書だよ。俺には大した信条もプライドもある訳じゃねぇ」

 中年男性は半笑いで手を振った。

「えっ、マジでミステリー小説に出てくる探偵のような事をやってる人なの?」

「そうらしいぞ。当然表には出ないし、白髪探偵の取材や記事にはしないってのが暗黙の了解だから、普通は知らんだろう。警察関係者でも一部の人間しか知らんと聞いたし」

 煌月は嫌な顔をせずに、というより無表情で三流新聞記者を名乗る男の話を聞いていた。

「ワーオ! シャーロック・ホームズかエルキュール・ポワロだぁ!!」

 ルナアリスは小さな体を上下させて煌月に熱い視線を送る。

「なんやなんや、ミステリー小説の主人公みたいなヤツなん? 堪忍してぇな、こらとんだ伏兵やでぇ。賞金持ってかれてまうやん」

 関西弁の男がわざわざ席を移動して会話に加わった。

「賞金狙いなら確かに危ねぇな。日本の探偵は浮気調査とか人探しが大半で、警察の捜査に関わるなんてのはほぼ無い。それなのに捜査協力の要請を何度も受けてるってことは、相当頭が良いんだろうからな」

 中年男性の説明と賛辞に対して、煌月は殆ど表情を変えなかった。

「警察に協力している事と、警察関係者から白髪探偵と呼ばれているのは事実です。ですが私は探偵ではありませんよ。ましてやミステリー小説に出てくるような探偵では、ね」

「えっ? なんでや? リアル名探偵ちゃうんか?」

「他者から見れば、確かにそう見えるでしょう。そこを否定はしません。ですが、そもそも私は自分がそういう探偵をしているという認識がありません。私がやっているのは、与えられた情報と調査の結果から犯人を確定すること。それと裁判で有罪にする為に、一切の矛盾と反論と無理やりな理屈を排除する手助けです。その方法と過程が推理と呼ばれているだけです」

 はっきりとそして堂々と自分の意見を述べる。ルナアリスは何度か頷き、若い女性は口を半開きにして固まった。

「本人はどういう考えにせよ警察から頼りにされてる切れ者なのは確かだ。謎解きゲームの相手とすれば間違いなく強敵だな」

「最強のプレイヤーだよね。私と煌月さんがペアだよ絶対。招待状に書いてあったもん」

「招待状の文面を見れば確かに、初めて会う人とチームを組むルールのようです」

 幼き助手と書いてあったが、まさか他の参加者のことだったとは。

「ええなぁ。可愛い女の子とペアって羨ましいわ。ワイの招待状に相方の名前が書いてあったんやけど、絶対男やもん」

 関西弁の男は残念そうにおどけた。

「ねぇちょっとクイズを出してもいいかな?」

「腕試しですか? いいですよどうぞ」

 ルナアリスの挑戦を煌月は迷いなく受ける。

「私ね、名前を聞いたら分かると思うけど混血なんだ。結構珍しいかもしれない『クォーター』なんだよね」

 確かに顔立ちと瞳の色はアジア系とは少々離れているイメージがある。

「私のお母さんと母方の祖父は『ペンス』、母方の祖母は『セック』。お父さんと父方の祖父は『セン』、父方の祖母は『ラッペン』。私に流れる四つの血はな~んだ? ちなみにこのクイズ、一発で当てた人は今までいません」

 出題が終わった直後に煌月は左手を口元に当てた。脳内で情報を整理しつつルナアリスの家系図を描く。

 これはクォーターである彼女のルーツ、両親と祖父母の出身国を四つ当てるクイズだな。四つの国と関連がある何かが分かればいい。一発で当てた人がいないということは、相当な難易度なのだろう。でもどれも知っているから国を絞るのは難しくない。

 左手を口元に当てて頭脳をフル回転。解答までは四十秒。

「分かりました。これは『補助通貨』ですね。センは『日本円』。ペンスはイギリスの『ポンド』。セックはスウェーデンの『スウェーデン・クローナ』。ラッペンは『スイスフラン』だけど、スイスじゃないね。『ラップ』だとスイス一択だが、『リヒテンシュタイン』じゃないかと」

 ルナアリスは雷が直撃したように煌月を見つめたまま固まった後、火山が噴火したように大きな声をあげた。

「大正解! 凄いよ! ノーヒントの一発で当てる人なんて初めてだよ!」

 煌月は左手を口元から離して座り直した。

「ホントに凄いわ。ウチもさっき挑戦したけど『補助通貨』の単位だなんて全く分からなかったもの。米ドルとユーロには結構詳しいんだけどなぁ」

 彼女は連続不正解記録に一役買っていたようだ。

「そないな問題よう分かるなぁ。クイズ自慢のワイもお手上げやったよ」

 正解した煌月は少しだけ表情が柔らかくなった。

「スウェーデン・クローナの補助通貨は『オーレ』だけど、ノルウェー・クローネとデンマーク・クローネも『オーレ』だから、三択の運試しになっちゃうんだよね。だからこれだけはスウェーデン・クローナの通称の『セック』にしたんだ。でもよくラッペンでスイスにしなかったよね。スイスフランの補助通貨だから、知っている人でもここはスイスって答えて間違うのに。でもラップが分かってたから『公用語』まで知っていたって事だよね?」

「国と通貨の組み合わせだというのはすぐに分かった。ただ問題は、ラッペンがスイスフランの補助通貨だが、スイス以外にイタリアの一部とリヒテンシュタインって国も通貨にしているって点。スイスの公用語の一つ『ロマンシュ語』ではラップだってのは知っていたので、それだとスイスで確定だった。ラッペンはドイツ語だから、イタリアは除外できる。スイスとリヒテンシュタインはどちらも公用語がドイツ語なので二択」

 淀みがない一本調子の煌月の解説に四人は聞き入っていた。

「決め手は先程のルナアリスちゃんの言葉。『結構珍しいかもしれないクォーター』。あまりニュースにならない、少なくとも日本ではマイナーというかあまり聞かないような国かと思ったので、リヒテンシュタインと回答してみました」

 ルナアリスは小さい手を叩いて、「完璧! 百点満点の回答です!」

 宝くじで高額当選したかのような満面の笑みを見せた。

「ちなみにミドルネームは、ルナにするアリスにするかで両親の意見が割れちゃったから、両方合わせた愛情たっぷりの名前なんだよ。だからルナアリスって呼んでほしいな。勿論奏でもいいし、呼びにくかったらルナでもいいよ」

 腕試しというなら負けたことになるのだが、悔しがる素振りは無い。

「白髪探偵、恐るべし」

「ただの偶然ですよ。通貨には人一倍詳しかったから、正解が分かったというだけですよ」

「知識の量も頭の良さの指標だと思うがね」

「ワイもそう思うでぇ。なぁ、ゲーム始まったら手加減してや」

 年配二人は値踏みするように煌月に視線を送っている。

「ところで、皆さんのお名前を窺ってもよろしいですか?」

 煌月の問いに最初に答えたのは若い女性だ。

「ウチは木村美緒きむらみお。美緒って呼んで。どこにでもいそうな名前でしょ。高校生の時に漢字まで被った同姓同名が同じクラスにいて、めっちゃ苦労したことのある自慢の名前よ」

 若い女性が白い歯を見せながら名乗った。

「名前被りって結構大変だったんじゃないの」とルナアリス。

「そりゃね。教師も大混乱よ。テストの採点とか、成績をつける時とか、大学受験の時とかさ。でも流石に教師も生徒も対策はしたね。白髪探偵さん、どうやったか分かる?」

 煌月は左手を口元に当てた。

「方法はいくつもあります。例えば苗字で呼ぶ方と下の名前で呼ぶ方で分けるとか。眼鏡の有無でもあれば利用できる。テストで名前を書く時などに、例外的に苗字の頭にアルファベットや数字を書き加えるのも一つの手ですね。

 個人で違うけど絶対に忘れないもので識別する方法。生まれた月が違うなら星座も使えるだろうし、血液型の違いとかも利用できるかと。出身の県が違う、住んでいる地域が別々ならそれも使えるかと」

「さっすが探偵さん。すぐにスラスラ出てくるところが凄い。ウチは『獅子』の木村って呼ばれていたわ。もう一人は『乙女』の木村ね。木村って苗字は私達二人だけだったからこれで何とかなったのよ。テストの時は出席番号だけ間違わないように神経を使ったね」

「星座を使ったんだ。獅子の木村ってカッコいい~」

「でしょ? でも女子柔道部と間違えられたことがあってさ。男子生徒の間で変な噂が流れて恋愛はダメダメだったわ」

 木村は笑いながら隣の席に置いてあるバックから飲み物を取り出した。

「次はワイな。『羽田一志はねだひとし』ちゅうモンや。飛行機よりも鉄道が好きな羽田で覚えてや」

「鉄道好きの羽田さん」

 煌月が繰り返すと羽田はすかさず、

「親子二代の阪神ファンやからな」

「では野球と鉄道好きの羽田さんで覚えます」

「おっ、ええなぁソレ」

 羽田は手帳に書き込み始めた。

「そちらの方もお名前を伺っても?」

 振られた自称三流新聞記者の男性は眉を片方上げた。

「別に俺はいいじゃねぇか。女子のお二人さんの名前が聞けたんだからよ」

「貴方も参加者なのでしょう? なら名前を呼ぶこともあるかと」

「そやそや。減るもんやないし教えてや」

 中年男性は鼻を鳴らしてから、

大宮小次郎おおみやこじろうだ。好きに呼べよ」

「コジロウ? 剣豪みたいな名前やな」

「間違っちゃいねぇよ。親父が剣豪の佐々木小次郎が好きだったから、小次郎ってつけたんだとよ。もし苗字が宮本だったら武蔵と名付けたなんて言ってたな」

「ワイの名前よりもかっこええやん」

 半笑いで羽田は再び手帳に書き込む。その手帳を凝視している煌月に気が付いたのか、羽田はおどけたように、

「これはみんなの名前をメモっとるだけやから気にせんといてや。名前教えてくれたのに間違ったら失礼やからな」

 羽田は左手に持った手帳を軽く振った。煌月は視線を大宮に移す。

「大宮さんですね。よろしくです。もう一人いるようですがお休み中ですか?」

 年齢は煌月か木村に近い男。時々動いているので死体でないのは確かだ。

「さっきウチが話しかけたら、具合が悪いってさ。持参してきた薬を飲んだから、暫く休めば大丈夫だって。名前は聞いてないよ」

「そうでしたか。それでは後ほど聞くことにします」

 反応したかのように、もぞりと男の体が動いたが横になったままだ。

「皆様、お待たせしました。最後の参加者が到着したので出発します」

 案内人の声に吸い寄せられるように五人は正面を見遣る。最後の参加者は若い女性だった。

 脇の下まで届くロングストレートの黒髪は顔を四分の一程隠しているが、その隙間から垣間見えるその顔は雪のように白く、どこか神秘的な気配が漏れ出ているかのよう。群青色のワンピースに細いシルバーのネックレス。派手さは無く落ち着いた雰囲気がある。「お待たせ致しました」

 彼女の声は澄んでいて、声量は小さめなのにまるで空気を浸透するかのように最後部座席まで届く。前方の空いている座席に、流れるように黒髪をなびかせて静かに座った。

「えらい別嬪さんやな。……うん? どっかで見た気がするでぇ」

 羽田が率直な感想を零した。

「それでは出発します。ここから三十分程で会場に到着します」

 案内人は運転席に座りシートベルトを締めると、慣れた手付きでエンジンを始動させてマイクロバスを走らせる。快晴の空の下、駅前からいかにも田舎道といった道路を進む。

「やっぱりそうだ。ねぇ、もしかして女優の氷川冷華ひかわれいかさんでしょうか?」

「左様でございますよ」

 女性は振り返って澄んだ声で答えた。厚みのある口元には笑みが浮かんでいる。

「どっかで見たと思たら芸能人やったか」

「今話題の人じゃねぇか」

 大宮と羽田が食いついてきたがルナアリスは首を傾げた。

「有名人なの?」

「最近話題の女優さんさ。この前までやってたドラマ、準主役級だったけど主役よりも人気が出たって評判らしい」

「そのドラマ、視聴率が二桁超えた言うて大騒ぎや。ワイは見てなかったんやけど、友人がドハマりしとったな」

「へぇ女優さんかぁ」

 ルナアリスは興味がありそうだ。煌月は表情を変えずに氷川を見ている。

「小さい頃は子供服のモデルをやってて、子役とかもやってたんだよ。学業に専念したいからって芸能界から一時期離れていたんだけど、大学卒業してから復帰したんだって。ウチの大学でもドラマを見てファンになった子、いっぱいいたよ」

「それは大変嬉しいですね」

 氷川はクスクスと笑った。

「確か早稲田の大学卒で、高学歴芸能人の枠でクイズ番組に出とったな」

「はい、有り難い事に時々オファーを頂くことがあります。今回もそれが切欠で招待されたのでしょうね」

「今日はプライベートでしょ? ウチは暇人だけど氷川さんは忙しかったんじゃないんですか?」

 まさかテレビのドッキリ企画か何かに巻き込まれたんじゃないだろうな。

 体を動かさず眼球だけ動かして天井付近に視線を走らせる。

「マネージャーに相談してスケジュールを空けてもらったのです。今なら調整が出来るとのことでしたので、気分転換で招待を受けさせていただきました。最近スケジュールが過密気味で大変でしたし、ね」

 密かにカメラが回っているということはなさそうか。

「そうだったんですね~。人気者は大変ですね~」

 一番テンションが上がっているのは木村だった。

「でもお仕事を頂く立場ですのでとても嬉しい事です。気を使ってくれたマネージャーさんにも感謝ですね」

 氷川は静かに笑った。会場に着くまでの間は、氷川のトークショーで車内は盛り上がった。際どい質問にも嫌な顔を一つせずに答えた。

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