第94話

 昼食を取るために馬車を止めた際、サラがクーリアへと詰め寄った。


「あのね、クー。対処してとは言ったけど、いきなり馬車の中に魔獣の死体を投げ入れないで?」

「じゃあゆっくり入れるね」

「論点そこじゃない!ちゃんと 報 告 !いい!?」

「はーい」

「……はぁ」


 クーリアの軽い返事にため息をつきつつ、サラは周りの警戒へと向かった。


「お姉ちゃん、捌けるの…?」

「まぁ大体は」


 先程馬車へと放り込み、サラに怒られた鳥型の魔獣の死体。それをクーリアは解体していた。元々解体などは学んでいたのだ。

 ……それをどこから学んだのかと言うと、


「わたしが教えたのよ♪」


 そう。ナターシャからだった。これはクーリアが望んだことでもあった。


「……そんなにお金なかったの?」

「そういう訳じゃないよ。でもそうそう買えるものでもないし、覚えておいて損はないとおもったから、ね…よし、できた」


 綺麗に捌かれた鳥型の魔獣体。

 ……そう。あの馬車に放り込んだ魔獣の他に、二体を撃ち落としていたのだ。……もちろん、それも報告なしに馬車へと放り込んでいた。悪気はない。ないったらない。悲鳴を楽しんでいた訳では無いのだ。……多分。


「まぁ捌いても結局スープに入れるだけなんだけどね」

「それでも豪華にはなるじゃない。村に行く前の腹ごしらえとしては十分よ」

「…それもそうですね。あ、リーフ。風で匂い散らせてくれる?」

「うん。分かった」


 リーフィアが火の火力を上げないよう、匂いだけを器用に上空へと上げる。かなり魔力制御が高くないと出来ない芸当だ。


「器用なものね…」


 思わずと言った様子でナターシャが呟く。冒険者としての、純粋な賞賛であった。


「えへへ…まぁ、お姉ちゃんほどじゃないですけどね」

「…クーちゃんは特殊だものね。比べるべきものじゃないわ」

「ねぇそれどういう意味?!」

「クー、沸騰してる」

「あっ」


 吹きこぼれてしまっていたので、クーリアが急いで鍋を火から上げる。すぐに火力を下げる手段が無い為だ。


「あなたが特殊なのは周知の事実でしょう」


 哨戒から帰ってきたばかりのサラまでもがそう言う。


「……なんでサラまで」

「特殊だな」

「特殊だねー」

「特殊です」

「……泣いていい?」


 全員から特殊だと言われ、クーリアが思わず泣きそうな表情を浮かべる。


「…褒め言葉でもあるのよ?」

「…率直に喜べないのはなんでだろうね?」

「……その顔やめてよ。真顔怖いわよ」


 

 


 

 


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