第82話

 時間が経つにつれ、教室にも人がちらほらと増え始める。しかし、大方見知った顔ぶれであった。


 そしてほぼ全員が集まったと思しきタイミングで、教室の扉からある人物が入ってきた。以前クーリア達のGクラスを担任していた、ナイジェル・マンセルだ。


「げ」

「……マンセル先生。生徒の顔を見ての第一声がそれなのは、どうかと思いますよ」


 サラが苦言を呈する。まぁ以前からの問題児が集まっていたのだから、思わずその声が漏れるのも無理はないだろう。


「…とりあえず、席つけー。出席取るぞー」


 サラの言葉が聞こえていたのかどうかは分からないが、まるで誤魔化すように出席を取り始めるのだった。







「やった!お姉ちゃんの隣だ!」

「結局同じ並びになったわね」


 リーフィアとサラ。その2人に左右から挟まれるようにしてクーリアは座っていた。これは高等部一年の時も同じだったのだ。


「…頼むから寝ないでくれよ」

 

 クーリアと目が合った瞬間、ナイジェルがそんなことを口走る。しかし、その声色には少なからず諦めの色が含まれていた。一年間クーリアの担任をしてきて、クーリアの性格は嫌でも理解していたからである。


「……善処します」


 そんなナイジェルの言葉に、クーリアがちょっとの間をあけ、そう答える。

 まぁ隣にリーフィアがいるので、できる限り寝ることはしないだろう。

 …凍りたくないので。


「とまぁほとんど見知った奴がほとんどだとは思うが……俺がこの教室の担任、マンセルだ。これからよろしくな」


 ナイジェルがそう言って片手をあげる。教室にいた生徒は少し反応に困り、ただ苦笑いを浮かべるのだった……






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る