陰キャボッチ、玄武に挑む④

 一寸法師。

 日本御伽話の一つであり、めっちゃ簡単かつ大事なことだけ話すと鬼に食べられた一寸しかない小さな男の子がお腹の中で針を刺しまくって勝利したという話になる。

 重要なのはこのお腹の中で暴れたという部分。

 これを僕は対玄武戦でも出来ないかと思ったというわけだ。


「名付けて一寸法師大作戦」


 玄武の体を通って胃の中にまでやってきた僕はここで水素爆弾を爆発させていく。

 爆発によるダメージだけでなく核汚染によるダメージで削ることも考えての水素爆弾チョイスである。

 水素爆弾の破裂を受けて荒れ狂う胃酸に血を吹き出して肉を落としていく胃壁。


「どんどん行くか」

 

 荒れ狂う胃を超えて更に進んでいく。

 水素爆弾を、かつては世界最強の爆弾とされていたツァーリボンバーを毎秒単位で落としていきながら。


「……ちょっと不味いかも知れない」

 

 既に玄武の体の内部はボロボロ。

 爆弾を受けてぐちゃぐちゃであり……だからこその問題が一つ。

 

「やべぇ、出れなくなった」

 

 道がない。

 先に進む道も上から肉が落ちてきて塞がれてしまったし、


「……超えられるか?」

 

 下へと視線を落とした僕は声を漏らす。


「いや、いくか」

 

 僕ならばこいつの肉を突き破って外へと脱出することだって出来るだろう。

 兵装を展開。

 巨大ドリルを起動した僕は自分の身を光化学シールドで守りながらどんどん肉の壁を掘り進めていく。


「ふんふんふふーん」

 

 ただひたすらに肉を進んでいき……そして。


「光だ!」

 

 ついに肉の壁を突き抜けて外へと出てくる。


「……ふぇ?」


 それとタイミングを同じくして。


「ガァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 内部がズタボロへと成り果てた玄武。


「ガァ……」


 彼が力尽きてしまった」


「あっ……」

 

 ここで一つ情報を。

 僕が肉の壁を突き破って外に出てきた、そこに至るまでの道に硬い亀の甲羅はなかった……つまり、僕が突き破って出てきたのは亀の腹。

 そう、僕は今まさに力尽きて倒れる玄武の真下にいるのだ。


「あぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!?」

 

 玄武の真下にいる僕はそのまま彼に押しつぶされることになったのだった。

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