第37話 君とのデート当日⑤
「さ、さて、気を取り直しまして、次はショッピングでーす!」
さっさとデザートを口に運んでしまって、変な空気になってしまったお昼ご飯を切り上げる。さすがにデザートを食べ終わる頃には気持ちも落ち着いてきた。看護師さんたちが私たちの様子を見ながらニヤニヤしてるのはずっと目に端に入っていて余計に恥ずかしかった。
「ショッピング?でも、ここには売店ぐらいしか……」
「ふっふっふ、私がなにも用意していないと思ったかい?今回のショッピングで使う通貨はこちらになります。」
山石君の手を取ってお手製の百円札や五百円札を握らせた。お手製はお手製でも私が作ったんじゃないけど。
「これってあれで使う……」
「そう。次は小児科のみんなに手伝ってもらったんだ。」
山石君は大体見当がついたみたいだけど、詳しくは伏せておいて食堂から連れ出した。次の目的地は小児科のプレイルームだ。
プレイルームに到着すると、子どもたちがバザーを開いて待ってくれていた。バザーはバザーでもここでの商品は、折り紙や粘土など子どもたちが手作りしてくれたものだ。今日のために作ってくれたものもあれば、今まで作ってたもので持って来てくれたものもあって結構な品揃えになっていた。
「あっ、つばめちゃんだ!」
「つばめちゃん、こっちに来てー。」
「つばめ、俺の店にも来いよ。」
「おーい、つばめちゃーん!私の力作見てってよー。」
お店をやってくれてる子どもたちがこちらに気づいて思い思いに声をかけてくれる。それに手を振って応対している間も、山石君は車いすの上で固まったままだった。
「これ……みんな今日のために?」
「まぁ、さすがに私たちのためだけにっていうのは難しかったんだよね。だから、バザーの日ってことで一般の人も交えてだけど、みんな頑張って用意してくれたんだよ。」
「すごい、すごすぎるよ。森野さんだって入院してたわけでもないのに、どうしてここの子たちとそんなに仲良く?」
「山石君のお見舞いに来た時、帰りとかに時々ここでピアノを弾かせてもらってたんだ。そしたら、いつの間にか仲良くなっちゃってて。ここの子たちはみんな人懐っこくて可愛いんだから。」
「そっか。森野さんはそんな人だったよね。誰かのために何かをすることにためらいがないし、いつの間にかこっちのテリトリーに入ってくるし、ちょっとくらい変なやつでも見捨てられなくて助けてくれるような、そんな人だもんね。子どもたちともすぐに溶け込めるはずだ。」
「その、ちょっとくらい変なやつって高校デビューはりきりすぎて金髪にしちゃうようなやつのこと?」
「あえてぼかして言ったんだから、そんなはっきり言わないでほしかったな。」
「ごめんって。とにかく!さっき渡したお金を使って一緒にお買物しよう!私たちのために作ってくれたものとかあるらしいよ!」
「そうなんだね。楽しみだなぁ。」
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