3 「あれ」を使う

 ほう、ほう、と、フクロウが鳴いた。


 アオイは木のうろの下、地中深くにある自分の小さな部屋にいた。木の根が絡まり合ってできた椅子に座り、スズメから預かった手紙を読んでいた。

 そこには小さな木のテーブルとベッドがあるだけの簡素な部屋だった。


「ほんとに、あの街のやつらは全員腐ってるね」


 高らかに声を上げて笑った。横に控え、片膝をついて座るスズメも頭を下げたまま、「はっ」と、答えた。


「しかし、あいつらが黒くいてくれるおかげで私たちも安泰なわけで」


 アオイは少し考えこみ、


「で、どうしようか、今回は」

「まず、ツキモリは空を飛べないので無理かと」

「たしかに。じゃあみかりんは?」

「前回飛ばされたまま、まだ戻ってきてはいない様子」


 ここで初めて二人が顔を見合わせた。


「男か」

「今回は百合かと」

「たしか自主企画を立てると言ってたね」

「……『みかりんと集いたいナイスボディなガールズ特集』」

「自主企画なのに企画主自ら金を出すのか」

「みかりんですから」

「だよね」


 アオイが不機嫌そうに黙り込むのへ、畳みかけるようにスズメは言った。


「金がなくなったら戻ってきますよ」

「困ったね」


 アオイもわかっているのか、困ってもなさそうに笑う。


「まあ、この依頼内容だと、バナナじゃ威力は小さすぎるしね」

「バナナとエリンギだけだと、また住民を喜ばせるだけですし」


 スズメの言葉に、アオイは「うむ」と黙りこむ。


「あれを使うか」

「あれですね?」


 スズメは顔を上げ、黒い笑顔を見せた。

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