第21話 小さな社と道祖神 1
普段と何ら変わりのない、木曜日の通学路の道中。
行き交う車や駅へ向かって歩く人影も全く変わり映えしない。
高校に通い始めてまだひと月も経っていないというのに、数週間前まで新鮮だった通学路は今や見慣れた景色でしかない。
もしかしたら飽き性なのだろうか、とも思う。
これまで生きてきて、これと言った目標もなく、これと言って熱中した趣味なんかもない。
何となく生きて、何となく勉強して、何となく大きくなって―――そしてこれからもそうやって何となく大人になっていくのか、と想像すると憂鬱になりそうだったので頭を振って余計な思考を振り払った。
考えている間に気が付けば校門まであと少しのところまで来ていた。
距離にして約50メートルほどの地点。
視界の端、つまりは道路わきにソレは置かれている。
高層ビルだったり、タワーだったり、ともかくこの文明が発展した現代には似つかわしくない歴史的な価値を持つであろう、小さな赤い鳥居と、その奥にはこじんまりとした
いつからあるのか、誰が立てたのかも分からないが、古臭く小さな社。
通学路である上に学校からもかなり近いため、正門から登校する生徒の多くが眼にしており、自分も例外ではない。
とはいえ、そこにあるのを知っているだけで、何かをする訳でもなかった。
ただ、今日は朝から自分の生き方だったり、これからの人生だったり、あやふやで未確定なことを想像したせいなのか、普段気にも留めず素通りする社の前で立ち止まっていた。
ここで手でも合わせて目をつぶっていれば、もしかしたら神様仏様にでもお祈りしたりお告げを求めているんじゃないか、なんて思う者も少なからずいるはずだ。
今は正月ではないし、別に目立ちたいわけでも、ましてや居るはずのない神様なんかお願いをするほど時間を持て余していない為、ただ見てみただけだった。
視界に入ったソレは多少なり管理はされているのか、古いが汚れ切ってはいない。
役所や近隣住民か、土地の所有者か、それとも神社仏閣の関係者か。誰が管理していようと私生活には何ら影響はないため、深くは考えない。
そしてその小さな社の手前には小さな賽銭箱、そして社の中には石像が祀られていた。
石像というより、この場合は道祖神と表現した方が良いだろうか。
少し大きめの石を削って作ったのか、表面には二人の男女が立体的に刻み込まれていた。
ひと月弱、通学を続けたが、社の中まで見ることが無かったため、初めてそれを目撃した。
イメージする道祖神は、道端にぽつんと野ざらしで置かれているだけで、鳥居や社の中で祀られているような印象は無かったのだが、と考えていると後方から何やら声が聞こえてきた。
――イチ、ニ、サンシ、ファイオー!
それは陸上部が朝練習で校舎外周を走っている掛け声だった。
振り返ると、100メートルほど先に20人ほどの集団の影が見える。
邪魔をしてはいけないな、と早朝から体を酷使する学生に敬意を表しつつ、道の端に寄った。
彼らにとっては軽いランニングなのかもしれないが、100メートルほどあったはずの距離は一瞬で詰まって、気が付けば目の前を通過していた。
その最後尾には中学からの同級生で陸上部の東前大吾の姿があった。
大吾もこちらの姿に気が付いたのか、集団から外れるのを躊躇わずに、その場で足踏みをしたまま留まった。
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