第16話 優しい嘘 1
土曜日の昼下がり。
日柄もよく、空一面は水色で彩られ、てっぺんには白い太陽がキラキラと輝いている。
照り付ける陽光は体全体を突き刺すかのように鋭く、熱い。
日焼け止めを塗っておいてよかった、と心から思いつつ、最寄りのバス停に向かって足を進めた。
横には、白のスウェットに黒のスカートを身に着けた一人の女性。
それは言わずもがな、如月美桜であった。
仲のいい中学校からの同級生や、ようやく打ち解け始めてきたクラスメイト、ではなく休日の昼間から家庭教師といるのか。さらに言ってしまえば何故家庭教師と勉強ではなく、外出をしているのか―――それは、家庭教師である如月美桜の提案から始まった。
今から見れば前日である金曜日の夕刻。
いつもの如く家庭教師はやってきて授業を施していく。
そこに意義も異論もなく、忠実に着実に勉学に励み進展させていた。
最中、休憩として休憩をした時のこと。彼女は突然、明日の予定は開いているの、なんて聞いてきた。
頭の中で明日の予定を振り返る。
偶然、本当に偶然にも予定は開いている、か。
あるとするなら、明日は久しぶりに母が午後から休みだったため、外出にでも誘ってみるのもありかな、なんて思いつつ、
「取り急ぎの用事はないです。今のところは空いていますよ。仮に予定を上げるなら、久しぶりに午後から休みの母を誘って出かけてみようかなって思ってました。土日も僕を養うために働きづめなことが多いですから――」
と正直に返事した。
「そっかそっか。…実は明日ね、いっぱい買わないといけないものがあるんだ」
如月美桜は笑顔でそう言った。
同時に、そのセリフから何か嫌なものを感じ取って。
「服とかそういう物ですか?―――って、まさか荷物持ちをさせるつもりじゃ…」
察しがいいね、と彼女は親指を立てながらはにかんだ。
と、いうわけで、土曜日の昼間から家庭教師である如月美桜と共に行動することとなった。
近所には買い物できる場所なんてコンビニくらいしかない為、ある程度店が並ぶ商店街のあたりまでいこうとバスに揺られて15分。
さすがは大学生か、200円のバス代を何も言わずにおごってくれて、颯爽と降車する背中に向けてお礼を言った。
バスの中は空調によって気温が調整されていたせいか、眠たくなるような温かさだったが、そんなゆとりな空間から一変、外へ出ると少しだけ肌寒い風が頬を撫でる。
少しだけ身を縮めつつ、周囲を見渡す。
商店街、とは言ったが正直大学生が大量に買いたいなんて思いそうなものはこのあたりにはない。
というか、郊外であるこんなさびれた商店街より東京都心で買い物をした方が良い物が沢山買えるだろうに―――良い物がなにかは、やはりわからないが。
そんなことを考えている間も、彼女は楽しそうに肩を揺らしながら街を歩く。
釣られるように、その後をついていく。
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