第32話 女神のお仕事
とあるVRMMO内の出来事
カルマの規定値に到達したものが二人現れたようです。個体名はペリカ・ツェル、フーリア・ブーゲンですか。では最優先事項なので早速対応を行います。
私はペリカ・ツェルを呼び出します。呼び出されたペリカ・ツェルはキョロキョロとあたりを見渡してこちらに気づきました。
「私は法・掟の女神テミスです。個体名ペリカ・ツェル、あなたは世界の秩序へ大きく貢献しました。そのため、掟によりあなたの望みを一つだけ叶えましょう」
「やったー!やっと達成です!」
目の前ではペリカ・ツェルがピョンピョンと跳ねています。
「望みはコウタの世界に行くことなのです。リリアちゃんが叶えてもらったやつなのです」
「異界人のコウタ……少々待ちなさい」
以前、個体名リリアーヌ・サザランドへの褒美として異界人コウタ、本名児玉光太郎のホームサーバーへのAIデータコネクト申請と同様の願いのようです。
私はその旨を上位存在であるFWO運営委員会に報告をし、AIデータコネクト申請の準備を進めます。
「異界人のコウタの世界へ渡ることは可能です。ただし、条件として異界人コウタの承認が必要です。承認につきましては私の方で確認しましょう。それでは、これを受け取りなさい」
私は導きの宝玉をペリカ・ツェルの目の前に召喚します。
「それは導きの宝玉。異界人コウタの承認が得られればその宝玉が光り輝きます。その状態の宝玉を手に持ち願えば異界人コウタの世界へ渡ることができます。……もし、承認が得られなければ宝玉は砕け散ります。その場合は別の願いを改めて叶えます。ここまでよろしいですか?」
「大丈夫なのです」
「世界を渡るとこの世界に戻ってくることはできません。そのため、この願いを取り消したい場合はその宝玉を砕きなさい。その宝玉はあなたの意思のみで砕くことができます。他の第三者に盗まれたり砕かれる可能性はありません。説明は以上です。不明点はありますか?」
「ないのです。ありがとうなのです」
問題はないようですね。
「それでは元の場所に戻します」
では次にフーリア・ブーゲンの対応に進みます。私がフーリア・ブーゲンを呼び出す。フーリア・ブーゲンは周囲を一瞥し私を見つけると礼をする。
「私は法・掟の女神テミスです。個体名フーリア・ブーゲン、あなたは世界の秩序へ大きく貢献しました。そのため、掟によりあなたの望みを一つだけ叶えましょう」
「ありがとうございます。私の望みはコウタさんの世界へ行くことです」
「………………異界人のコウタ……少々待ちなさい」
……これで3人目ですか。次のフェーズの条件を満たしていますがすべて同じ人物が対象は想定と違うようです。そのため、次のフェーズの調整をどうするかを含め上位存在であるFWO運営委員会に報告をし、AIデータコネクト申請の準備を進めます。
「異界人のコウタの世界へ渡ることは可能です。ただし、条件として異界人コウタの承認が必要です。承認につきましては私の方で確認しましょう。それでは、これを受け取りなさい」
私は導きの宝玉をフーリア・ブーゲンの目の前に召喚します。
「それは導きの宝玉。異界人コウタの承認が得られればその宝玉が光り輝きます。その状態の宝玉を手に持ち願えば異界人コウタの世界へ渡ることができます。……もし、承認が得られなければ宝玉は砕け散ります。その場合は別の願いを改めて叶えます。ここまでよろしいですか?」
「ええ、大丈夫です」
「世界を渡るとこの世界に戻ってくることはできません。そのため、この願いを取り消したい場合はその宝玉を砕きなさい。その宝玉はあなたの意思のみで砕くことができます。他の第三者に盗まれたり砕かれる可能性はありません。説明は以上です。不明点はありますか?」
「いいえ、ありません。ありがとうございます」
問題はないようですね。
「それでは元の場所に戻します」
フーリア・ブーゲンを送り再び一人の空間に戻る。
「さて、いつ次のフェーズに移れるのでしょうね」
AIデータコネクトが想定よりも早い段階で行われているのでまだ次のフェーズの調整が終わっていません。その上にさらに想定外のことが起きているので調整は長引きそうですね。まあそれは一旦置いといて自分の業務に戻りましょう。
私が管理画面を開き業務を行っていると、一人の人物が来訪する。
「お母さま!助けてなのじゃ!」
「……また何か失敗したのですか?」
「うぅ、ちょ、ちょっとばかし調整を間違えただけなのじゃ」
「なら直せばいいのではないですか?」
「元の数値を忘れてしまったのじゃ」
この子はなぜ変える前にバックアップを取るなどの対策をしていないのでしょうか。それにこの子に頼んだ業務は数値を変えるようなものではなく、テストしてその結果を報告するだけだったはずです。
「どこの数値を変えたのか教えてください。あとあなたに頼んだ業務に数値を変えるようなところありましたか?」
「うっ……。カルマ値を参照する攻撃スキルの計算式なのじゃ。テストした結果をみて変えたほうがいいと思って変えたのじゃ」
「自己判断で余計なことはしないでください。テストをして気になる箇所があったのならそれを含めて報告することがあなたに頼んだ仕事です」
「ごめんなさいなのじゃ……」
悪気がないのはわかりますが何度目ですかねコレ。私の教え方に問題があるのでしょうか。一体どうしたらいいのかわかりません。上位存在はこういったことに直接関わらないことをルールとして定めているため当てにできません。
それから私は部下兼娘のエイレーネーのミスを直して引き続き自分の業務を進めていきました。
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