第23話 家の増築

 やっと目標額である50,000Gをためることができたため、今からさっそく家の増築を大工屋に行ってもらう。


「サイモンさん、アランさんよろしくお願いします」


「おうよ、任せとけ!」


「ええ、任せてください」


 光り輝く頭に鉢巻きを巻いたガタイのいい男性は親方のサイモンさん。黒髪で長い髪を後ろで1つにまとめた髪型でさわやかなイケメンの男性が弟子のアランさん。


 事前にどのくらい増築に時間がかかるかなど確認してみたが、すぐに終わるから見ててもいいし何か用事済ませててもいいとのこと。どんな感じで行われるのか気になったので見学をすることにした。

 建物内に生き物はいない状態にだけはしてくれとのことだったので、マロンは今俺の腕に抱かれている。


「んじゃ、さっそく始めるぞ」


 どうなるのかワクワクしながら見ているとサイモンさんとアランさんが光り輝きだした。別にサイモンさんの頭がツルツルだから光っているわけではなく全身から光がでている。光っているがまぶしいと感じるほどの光量ではなかった。そして、動き出したと同時に今度はその速度に驚いた。例えるなら動画の倍速再生を思わせるようにシャカシャカと動き出した。まさかそこだけ時空がゆがんでいるのか。大工は時空を操れるのだろうか。ゲーム的な処理と言ったらおしまいだが。


「おう!バッチリ終わったぞ!」


「実際に中を見て気になるところがあったらお伝えくださいね」


「ありがとうございます」


 ほんとにあっという間に終わってしまった。俺はお礼を伝えさっそく家の中に入る。


「おー!広くなってる」


 元の広さは独り暮らしの部屋ってくらいの広さだった。それが3倍に広がっている。そして一緒に購入していたペット用の滑り台も設置されている。滑り台は上る用の階段と滑る面が前後にあり、側面に小さい動物なら通り抜けれられる穴が開いている木製のものになっている。


「マロン、好きに遊んでいいよ」


 マロンは初めてみる滑り台に興味があるようで近づいていく。そしてマロンは側面に空いている穴に入ってじっとしている。


「そっちかい」


 ウサギだからやはり隙間や穴が好きなのだろうか。でもせっかく買ったし一回くらいは滑ってみてほしい。俺はマロンを何とか説得することにした。


「マロ~ン、これはもっと楽しい使い方があるんだよ~」


 マロンは俺に声をかけられるとピョコっと穴から頭だけ出す。


「こっちの階段から上って進むとツルーと滑って楽しいぞー」


 しかし、マロンは動かない。くそ、俺のアピール力が足りないというのか……。


「一回だけ一回だけ。先っちょだけでいいから。お試しにやってみよう」


 自分でも何を言っているのかよくわからないがとりあえずマロンに頼み込む。


「ぷぅ~」


 俺の頼み込みが功を奏したのかマロンは「しょうがないにゃあ…」という感じで穴から出てきてくれた。


「よ~し、こっちから上るんだよ」


 マロンはぴょんぴょんと階段を上っていき頂上に到着する。しかし、そこから滑る前方の方をじっと見つめて動かない。俺は滑って着陸する床の方に回り込む。


「マロン、そのまま進むんだ。怖くないよー」


「ぷぅ」


 そしてとうとうマロンは前に進む。滑り出したマロンは前足をピンと伸ばしブレーキをかけるような姿勢をとる。その姿勢のまま滑り俺のもとまで到着する。その間に俺はしっかりスクショを撮り続けていたがマロンが到着したのでその場で抱え上げる。


「マロン、どうだった?楽しかった?」


「ぷぅ」


 そう一鳴きしたマロンは俺の腕からぴょんととびだして滑り台の階段を上り始める。どうやら楽しいと思ってもらえたようだ。よかったよかった。


 それからしばらくマロンが何度も滑り台を繰り返し遊んでいるところを眺めて過ごすことにした。


「よし、今日はそろそろ終わるか~。……ん?」


 ログアウトしようと思っていると新着メッセージを知らせるアイコンが視界の隅に表示される。このメッセージはVR機器自体のものでゲームとは関係ないものだ。


「なんかやり取りしてることあったっけ?えーと差出人は……」


 差出人は『Fantasy World Online 管理AIテミス』と表示されている。


「?今更FWOからメッセージ?しかも運営じゃなくて管理AI?」


 んー、FWOは複数の管理AIで運用されていることは運営側から公表されているが管理AIの名前は特に言及はなかったし気にしたこともなかった。

 そして、メッセージの中身を確認した俺はその内容にまた驚くことになるのであった。

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