VRMMOを引退してソロゲーでスローライフ ~仲良くなった別ゲーのNPCが押しかけてくる~

オクトパスボールマン

第1話 ソロゲーはじめました

「はぁー、しばらくオンラインゲームは無しだな」


 今日、児玉 光太郎 は半年ほどプレイしていた「Fantasy World Online」通称FWOを引退した。FWOはVRMMOのゲームでそこそこの人気のあるゲームである。

 フルダイブ技術が確立されたフルダイブVRゲーム黎明期ならまだしも、それから何十年も経過した今となっては圧倒的な人気のゲームというのもなく、ある程度人気は分散されている。


「ソロゲーで何か良いのないかなぁ。人と関わらないゲームがしたい」


 FWOで嫌というほど人の悪意に晒されていたため、物理的に人との干渉がないオフラインゲームを検索して探す。


「おっ、『のんびり牧場ファンタジー』か。タイトルは安直だけどどんな感じかな?」


 世界観としては魔法やモンスターなどが存在するよくある異世界ファンタジーのようだ。

 ただし、魔王や勇者、戦争といった物騒な要素はなくファンタジー世界でスローライフを送ることを目的としたゲームらしい。


「AIデータコネクト機能も実装されているな」


 AIデータコネクト機能とは、同様の機能を有したオフラインゲームから特定のNPCを異世界召喚するという設定で連れてくる機能である。


 近年のAI技術は限りなく人に近いといわれるほどになっている。AI独自で学習を続け、感情といって差し支えない挙動も行う。最近では最新型のAIに人権を与えるべきだと主張する団体も出てきている。


 そんなAIが積まれているNPCと交流していれば愛着もわくわけでほかのゲームに連れていきたいという発想から『AIデータコネクト機能』が開発された。

 もちろんこの機能は爆発的に流行ったため、この機能が実装されていないと判明したオフラインゲームは購入されないという風潮になったためよほどの理由がないかぎり実装されている。


「まぁ、連れてきたいNPCが連れてこれないんですけどね」


 あくまでオフラインゲームの話である。オンラインゲームであるFWOはこの機能を実装していない。別にオンラインゲームのNPCは不可能なのかというそういうわけではない。オフラインゲームはAIのデータごと購入しているため個人で利用する分には問題なく、オンラインゲームは個人のものではないという話なだけである。

 一応、運営によっては販売されている場合もある。販売内容も運営次第となり、特定のNPCの初期データの場合(つまり初対面)もあれば現状のコピーの場合もある。FWOは販売を行っていないため、連れてくることができなかった。


「一応お別れは告げたけど、そこだけが心残りだな」


 仲が良かったNPCにはお別れを告げてきた。なぜ会えなくなるのか、連れて行けるように上位存在(運営)に願ったが拒否されたこと、今までのお礼や思い出話など。あと『AIデータコネクト機能』について詳細に聞かれたので教えた。


「まぁ気にしてもどうにもならないしな。評判もよさそうだし『のんびり牧場ファンタジー』やってみるか」


 さっそく『のんびり牧場ファンタジー』を購入した。


「ん?追加機能の購入?あーR18要素ね。今のところはいいや」


 R18要素は、まぁそういうことである。グロはほぼないらしいため基本エロ要素だな。仲良くなったNPCと結婚や子供を作ることができ、つまりその過程ができるとのこと。追加機能は買わなくても子供を作ること自体は可能らしい。

 ほかにも細かいオプション設定(R18にかかわることのみ)が追加されるが健全なプレイに影響はないとのこと。

 NTRオプションとか……誰得だよ。フルダイブVRが普及した昨今、精神への影響がでかく昔以上に好き嫌いの差が激しい。もちろん俺は嫌いだ。


「とりあえずインストールも終わったし始めよう」



-----------------------------

とあるVRMMO内の出来事 ???視点


「はやくあの方のいる世界へ渡る方法を見つけなくては」


 それは、サザランド王国といわれる国の王城の一室での出来事。

 そこにはその国の王女リリアーヌ・サザランドがいた。


「そうだ。あの方をこの世界から追い出すきっかけとなった異界人もどうにかしないとね」


 リリアーヌは黒い笑みを浮かべながらこれからの計画を思案する。


「待っていてください。絶対に会いに行きます。コウタ様」


 そして、恍惚とした表情でとある人物を思い浮かべていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る