第24話:新たな依頼

 翌日となり、太一たちは冒険者としての仕事をこなすため、朝早くから冒険者ギルドへ足を運んでいた。

 まずは自分たちで依頼を見つけてみようと依頼板の方へ向かったのだが、どうにも太一たちだけではどれがいいのか見当がつかず、結局はクレアを頼ることにした。


「あら、おはよう、タイチ君、ユウト君、コウタ君」

「「「……お、おはようございます、クレアさん」」」

「……元気がないみたいだけど、どうしたの?」


 そこで太一たちは自分たちでは依頼を上手に選ぶことができなかったことを伝えると、クレアは微笑みながらなるほどと頷いた。


「新人冒険者が最初にぶつかる壁ね」

「そうなんですか?」

「えぇ、そうよ。自分たちに見合う依頼選びは、新人に限らず冒険者に必須の能力なの。それを養うのが、新人冒険者が最初にぶつかる壁ってことよ」

「マジかよ。ってことは俺たち、まだまだってことじゃねぇか!」

「それはそうだよ。僕たち、冒険者には昨日なったばかりだもんね」


 勇人が頭を抱えると、その姿を見て公太が笑いながら答える。


「そ、それはそうだけどよぉ」

「少しずつ、学んでいけばいいのよ」

「そうですね。それじゃあ……申し訳ないんですが、また俺たちに見合う依頼を選んでいただいてもいいでしょうか?」

「それと、僕たちでも依頼を選べるように指導してもらえると助かります!」

「あっ! 俺も頼む! いや、お願いします、クレアさん!」


 太一たちから頭を下げられ、クレアは微笑みながら大きく頷いた。


「学ぶ心はとても大事よ! よし、ちょっと待っていてね!」


 そう告げたクレアは一度カウンターの奥に下がり、しばらくして戻ってくると、カウンターを別の職員に任せて個室へと移動した。


「あの、よかったんですか?」

「新人冒険者を育てるのも私たちの仕事だもの、当然よ」


 クレアには感謝しても仕切れない、そんな思いを抱きながら、太一たちは椅子に腰掛けて依頼選びのレクチャーを受けることになった。


「まずはランクを見ます。タイチ君たちはFランクだから、依頼書の右上に記されたランクのマークを見ることね」


 クレアが言うには、それから次に依頼内容に目を通すべきだと口にする。


「依頼内容には大きく分けて三種類あるわ。討伐系、護衛系、仕事系、この三種類よ」

「俺たちが昨日受けた依頼は、全部仕事系だったってことですね」

「その通りよ。討伐系は主に魔獣の討伐、護衛系は都市から都市に移動する人や隊商、それらの護衛かしらね」

「どっちも危険があるってことですね」

「討伐系は魔獣を相手にすることが多いから当然だけど、護衛系は場合によると人間との戦闘も考えられるから、気をつけないといけないわね」


 人間との戦闘と聞き、太一たちはゴクリと唾を飲み込んだ。


「そこまで緊張しなくていいのよ。人間との戦闘とは言ったけど、護衛依頼を受けられるのはDランク以上の冒険者だけだからね」

「……そ、そうなんですね」

「でも、Cランク以上を目指すなら、いずれは通らないといけない道になるわ。頭の片隅にでも記憶しておいてちょうだいね」

「……ど、どうする? ランク、上げるか?」

「……まあ、無理のない程度にならいいんじゃないかな?」

「……そうだな。ランクを上げないと受けられない依頼とかもありそうだしな」


 ややしり込みしていた勇人の問い掛けに、公太と太一が無理のない程度ならと答える。

 クレアもそれがいいと思ったのか言葉を続けた。


「それがいいわね。Cランクを目指すなら最低でも一回は護衛依頼を受ける必要があるけど、Cランクに上がってからは討伐系依頼だけを受ける人とかもいるからね」

「どちらにしても、護衛系も絶対に一度は受けないといけないんですね」

「これは規定だから、どうしてもね」


 今はまだFランクなので深く考える必要はない。そう考えた太一は護衛依頼を受けるか否かの判断は先延ばしにして、今やるべきことに集中することにした。


「話を戻すわね。護衛系は今のところないから、タイチ君たちが受けられる依頼は仕事系と討伐系の二種類よ。見分け方としては、依頼書の色ね」

「「「……依頼書の色ですか?」」」

「青色と赤色の依頼があったんだけど、気づかなかったかしら?」


 依頼板で見た光景を思い出そうとした太一は、確かに色違いの依頼書があったと頷いた。


「……確かに、ありましたね」

「んなもんあったか?」

「僕も覚えていないなぁ」

「みんな最初は内容ばかりに目が行っちゃうからね。まあ、私も説明不足だったわ、ごめんね」


 クレアが謝罪を口にすると、太一たちは首を大きく横に振った。


「俺たちが急いで依頼を受けたからで、クレアさんが悪いわけじゃないですよ!」

「そうだぜ! 選んでくれた依頼、新人には優しい依頼でめっちゃ助かったもんな!」

「うんうん! 僕、現場監督のおじさんと仲良くなっちゃったもんね!」


 太一たちがそれぞれ思いを口にすると、クレアは笑みを浮かべて小さく頷いた。


「うふふ、ありがとう、三人とも。それじゃあ、青色が仕事系、赤色が討伐系、ついでにだけど緑色が護衛系になるの。というわけで……ここに青色の仕事系依頼書を何枚か用意したので、ここから自分たちに合いそうな依頼を選んでみる?」

「「「はい!」」」


 こうして太一たちは、教えられた内容をもとに自分たちで依頼を吟味していった。

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