第10話:スキルの確認

「お待たせ……って、みんなどうしてそんなに笑顔なの?」

「「「早くスキルの確認がしたいんです!」」」


 これ以上は待ちきれないと言わんばかりに即答され、クレアはここでもクスクスと笑いながら一枚の布をカウンターに置いた。


「これはスキルを確認するための魔導具よ」

「「「魔導具!」」」

「うふふ、本当に面白い反応をしてくれるのね」

「「「はい! もうそれでいいです!」」」


 スキル、魔導具と出てきては、恥ずかしさを通り越して興味への気持ちの方が上回ってしまった。


「それじゃあ説明するわね。この布に魔法陣が刺繍されているから、そこに両手を置いてちょうだい。そうすると、こっちの冒険者登録を行うための用紙に自動でスキルが記載されるわ」


 微笑みながらクレアが教えてくれると、太一たちは誰から確認をするかを話し始める。


「どうする? 俺からでいいか?」

「ちょっと待て! 俺からだろう!」

「ぼ、僕も確認したいよ!」


 その様子を笑顔で見ていたクレアだったが、なかなか決まらないことにしびれを切らしたのか、笑顔のままで口を開いた――が、その声音は笑顔とは裏腹に語気がとても強かった。


「…………君たち~? 私も仕事があるの~、さっさと決めてくれないかな~?」

「「「……す、すみませんでした!」」」

「た、太一からでいいよな、公太!」

「う、うん! その次は勇人君でいいよ!」

「ありがとう! 最後が公太だな! よし、やります! やらせてください!」


 笑顔で怒るという器用な真似をされては、太一たちもこれ以上時間を掛けるわけにはいかない。

 太一、勇人、公太の順番でスキルの確認を行うこととなり、すぐに太一が魔法陣の上に両手を置く。

 すると、魔法陣から淡い緑の光が放たれた。


「……きれい、ですね」

「……あぁ、きれいだ」

「……すごいねぇ」


 太一たちが感動している間も、クレアは冒険者登録用紙を確認しながら仕事をこなしていく。


「それじゃあ次はユウト君ね」


 こうして勇人、公太とスキルの確認を行い、ついにどんなスキルなのかを確かめる時が来た。


「それじゃあ最初にタイチ君だけど……スキル名は【罠師】ね」

「……わ、罠師?」

「そうよ。それで、ユウト君が【快速】」

「……快速」

「コウタ君が【怪力】かな」

「……か、怪力」


 なんとなくスキル効果が分かってしまうスキル名に、太一たちはガッカリしてしまう。


「名前の通りなんだけど、罠師は罠を作るのが上手になって、快速は速度の上昇、怪力は力が上昇するわ」

「「「ですよね~」」」


 そして、予想通り過ぎるスキル効果の説明を受けて、大きく肩を落としてしまった。


「どうしたの?」

「……い、いえ、なんでもありません」

「……ま、まあ、ないよりはマシ、だよな?」

「……そ、そうだね。……うん、そうだよね」


 チートスキルではなかったことに肩を落としていた三人だったが、その中でも一番落ち込んでいたのは太一だった。


「……でもさあ、快速や怪力は使い勝手がよさそうだけど、罠師って……何に使えばいいんだ?」

「うーん……確かに、都市の中の依頼だとどうすりゃいいんだ?」

「僕も思いつかないかも」

「そうねぇ、主に害虫駆除とか、そういった感じになるかしら?」

「「「……が、害虫駆除」」」


 楽しみにしていたスキルの確認を終えた太一たちだったが、冒険者として生きていくことが本当にできるのか不安になってしまう。


「スキルが自分の思っていたものと違うというのはよくあることよ」

「……でも、害虫駆除って」

「害虫駆除のスキルじゃなくて、罠師だからね? 都市の中でできる依頼ってことだからああ言ったけど、外に出たら結構役に立つんだからね?」

「都市の外……でも外には魔獣が……」

「その魔獣を罠にかけるのよ!」


 魔獣は怖いものだと思っている太一たちからすると、積極的に都市の外に出ていくのは勇気のいることでもある。

 そんな彼らの雰囲気が伝わったのだろう、クレアは微笑みながら自分を頼ってほしいと口にした。


「私はタイチ君たちのアドバイザーよ? ディーさんたちにも頼まれているし、みんなのスキルを活かせる依頼を斡旋してあげるわ」

「……俺たち、冒険者としてやっていけるでしょうか?」

「大丈夫! 会ったばかりだから信用してというのは難しいかもしれないけど、これでも結構仕事のできる女なんだからね」


 最後の方は冗談交じりにウインクをしながら口にしてくれ、そんなクレアの姿を見ると太一たちも落ち込んでばかりはいられないと思えるようになった。


「……そうですね、ありがとうございます、クレアさん」

「そうだな! 俺たち、頑張ろうぜ!」

「うん! 頑張ろう!」


 不安がないわけではないが、それでもディーたちやエレノア、クレアの期待に応えられるように頑張ろうと太一たちは誓った。

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