第20話黒いコートの何丘未玲

ゲンの瞳は、先ほどの招かれざる客を一瞥する感じ悪い眼つきのマスターから打って変わって懐かしい眼差しに移り変わっていた。

「引力に負けてるかな、60過ぎたんだけどねゲンくん、壱里山くんは・・・どうしてる?」恰もこの街のお姉さんと見紛うスタイルの良い未玲は相変わらず両手をダラリとして突っ立っていた。

「まあ座れ。」マスターらしく凛として言った。

「はい。」サロン入り口のカウンター前の木製のシングルチェアーを指差しながら、「座る前に暑苦しいコートを脱げ、寒いのか?」もう5月だぞと言わんばかりに左腕をグルグルと回しながらブロックサインとジェスチャーで脱衣を促していた。

「はい。」ゲンの言葉でシャキッとした未玲は一度座ってから垂直にスックと立ち上がり暑苦しい黒いコートをササッと脱いだ。

「脱いだらそ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る