第28話 ユンとアミの決別
春休みに入ってもユンからの電話やLINEがあった。
LINEではいつも「話したい」って事が書いてあって具体的な事は何も無い。
無視するにもエネルギーが要る。
心が痛い。
自分が悪魔にでもなった様な気分になる。
だんだん心が揺らぎ、傾き、
電話に出たくなった。
出ようか迷って眺めている間に切れてしまう。
明日こそは、明日こそはと思いながら
春休み最終日になった。
――ピロロロロ♪ピロロロロ♪
(どうしよう…。出ようか…)
――ピロロロロ♪ピロロロロ♪
(あぁ、もう!どうしよう)
スマホをタップした。
「もしもし?」
「………」
画面を確認した。
切れていた。
その日を最後に
LINEも電話も無くなった。
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新しいクラスには、ユンはいなかった。
ジアンとテヨンが同じクラス。
自然と3人のグループになった。
2人は「3年でも続ける」って言ったくせに。と、ユンのLINEや電話が無くなった事を怒ってくれた。
でも、私はユンを責める気になれない。
私が全て悪いのだから。
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「あのね!ユンくんがね!キャプテンに選ばれたよ!」
「あぁ、そうなんだ。でも、もう良いよ?ユンくんの話し聞かせてくれなくても。」
「何言ってんの?私の推しの話し聞いて欲しいだけなのに!友達なのに聞いてくれないの?」
「わかった、わかった。」
「私は聞きたいよー?テヨンの推しの話し!」
「でしょう?聞いてね!」
テヨンはどこか天然なところがあるから、本当に聞いて欲しいのか、私のためなのかが分からなかった。
ジアンは絶対、私のためだ。
去年、ユンを好きになった時の事を思い出すと胸が痛かった。
ユンのクラスとは階が違っていて滅多に見かける事が無くなったのが救いだった。
(早く、春なんて終わっちゃえば良いのに。)
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5月のある日、とんでもない光景を
テヨンとジアン、そしてユリとソアと一緒に見てしまう。
登校してからチャイムが鳴るまでの間を、廊下に集まって話すのが日課になっていた私たちは、その日もたわいのない話をしていた。
何気なく窓の外を眺めると、ユンが駐輪場から校舎に向かって歩いているのが見えた。
「へ?ちょっと、待って…?」
私のただならぬ雰囲気を察して、4人が私の視線の先を見た。
4人は絶句した。
ユンが、女の子と話しながら歩いている。
雰囲気が、物語っている。
――2人は付き合っている。
距離は少しあったけど、女の子の眼差しと雰囲気で付き合っているとわかった。
私の出来なかった事を、こんな短時間で成し遂げるなんて、どんな女の子なんだろう。
ユンよりも女の子をずっと見ていた。
この子の何が良かったのだろう。
私には無い、決め手になった良いものに対して嫉妬した。
4人が私の様子を伺っている。
涙は出なかった。
どちらかと言うと怒りが強かった。
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5月のバスケットボール部の春の大会は、また優勝を果たしキャプテンとしての活躍もあったらしい。
ユンファンクラブ会員のテヨンが、情報を持って来た。
「ユンくん、やっぱり付き合ってるんだって。しかも2年生だよ。」
「だから、誰か分からなかったんだぁ。なるほどな!」
テヨンが腕組みして納得している。
「うんうん。女の子の方から告白して受け入れたんだってよ。」
「はぁ?去年の私のアレはなんだったんだよ。」
「私の見解ではね。多分ユンくんあの子の事好きじゃ無いよ。」
「何でわかんのよ。」
「だってあの子、〝選ばれし者〟じゃ無かったもん。」
「ん?あの練習見に行ってなかったの?」
「うん!シュートを決めて、見たか?の指差しも無かったし!ちょー暗いの!バスケやってるユンくんも暗くてなんか雰囲気変わっちゃった。ファンサービスも無くなったし。楽しく無くなって来ちゃった。」
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私と一緒に居た時よりも楽しそうでない事や、〝選ばれし者〟に指名しなかった事ににホッとした。
だけど、ユンは心変わりした。
私が意固地になって逃げ続けていたばっかりに。
後悔しても、し足りない位の後悔をしている。
みんなの前では色々言っていたけど、悲しくて悔しくておかしくなりそうだった。
授業中も無性に涙が出てきて、寝たふりをする事もあった。
(あの、渡り廊下に連れて行ったのかな?)
――ズキンッ。
それを考えるたびに胸が痛くなる。
私がユンに恋をした渡り廊下に、あの子を連れて行って欲しくない。
私にした事を他の子にして欲しくない。
プレゼントも手を繋ぐ事も、髪を触る事も…。
どうして手を離してしまったのだろう。
どうして、こんなに忘れられないんだろう。
あまりの辛さにLINEはブロックして、番号は着信拒否の設定をした。
連絡が来ないのは、このせいだと思い込みたかった。
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怒りと、悲しみを行ったり来たりしながら毎日をなんとかこなしていた。
7月になり、また大会が始まる頃2年生の子とは別れた、女の子から別れを告げたと聞いた。
ミヨン先生からまた、読書感想文の挑戦の話を貰ったけれど断ってしまった。
早く3年が終わって欲しいだけの私に、何かを成し遂げたいという気力は無かった。
目立つ事なく卒業する事しか頭にない。
8月の大会でソウル西校が優勝して、9月にはまた取材がたくさん来ていた。
私はテヨンの情報の元、ユンの載っている雑誌や新聞を買った。
私の見たかったユンの姿がそこにあり、誇らしかった。
テレビ番組もまた2週に渡って放送された。
お母さんも、私と一緒に泣きながら見てくれた。
またBlu-rayにダビングをして、映画のDVDの棚へしまう。
この事は全部、友達には言えなかった。
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怒りや悲しみ感情の揺らぎが落ち着いた1月下旬頃、ユンがソウル体育大学の推薦を貰ったとテヨンから聞いた。
着実に夢に向かって進んでいる。
私も進まなくては…。
ユンが着地と夢に向かって進んでいる。
私も前に、自分の為に進みたい。
私はやっぱり映画が好きだから、映画の事が学べる大学に行く事にした。
誰もが進路を知っている、有名人のユンとは違って、私はひっそりと。
私が進学するのを知っているのは、4人の友達だけ。
ひっそりと受験し、ひっそりと合格した。
祝福してくれるのは、両親と友達4人と先生たちだけ。
ユンに祝福して欲しいだとかは、思ってはいない。
早く高校生活を終わらせたかった。
卒業式がこんなに待ち遠しくなるなんて、思ってもみなかったな…。
長く苦しかった1年間が、やっと終ってくれた。
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