第20話 反省文
「ただ…い…ま」
「どうしたの?大丈夫?」
「え?」
母親の態度に拍子抜けした。
凄い剣幕で怒られると思っていた。
「ちょっと座りなさい。」
ダイニングテーブルに、向かい合って座った。
「どうゆう事?何があったの?アミがそんな悪い事するなんて。」
「悪い…こ…と…?(苦笑)」
「相手の子は不良みたいな子なの?無理やり連れ回されたなら、ちゃんとそう言わないと!」
「ちがう!その子と一緒に居たかったの。無理やりじゃ無い。」
「一緒に居たかったって。もしかして付き合ってるの?」
「まだ付き合ってない。」
「まだって事はそうゆう事?」
返事が出来なかった。
「でも、そんな事しちゃうなんて悪い子なんじゃ無いの?お母さん、それなら賛成出来ないわよ?」
「悪い子じゃ無い!バスケ部で来年のキャプテンの候補でプロバスケの選手目指しててファンクラブもあってカッコよくて優しい人!…だもん…。」
「キャプテン候補?イメージしてた子とは違うなぁ。何が起こったの?」
「わかんない。衝動的にそうなった。」
「あぁ。あんた衝動を抑えられない子だったわね。あぁ、そう。じゃあ、合意だった訳か。じゃあ、明日反省文ちゃんと書きなさい。」
「はい…」
明日、部活を休み反省文を書く。
キャプテンの候補…。
いま、どんな風に怒られているのかを想像したら涙が出て来た。
母親に話せたから、自分の感情を表に出せたのかもしれない。
「どうしよう…キャプテンになれなかったら…どうしよう。ひっく、うぁあ。」
「なに、なにぃ?もう、ちょっと…あんた。」
と、言いながら立ち上がり、私の所に来ると抱きしめてくれた。
母親の胸にしがみついて泣いた。
「はいはい。よしよし。もう。 …ん?もしかしてアミが連れ出しちゃったの??」
胸の中で顔を横に振る。
「ん?ん?違うの?」
縦に首を振った。
「キャプテンになって、体育大に行って…プロにならなきゃいけないのに、ひっく、私のせいで、キャプテンに、なれなかったらどうしよう!うぇ〜(泣)」
「これからもっと頑張るしか無いんじゃないの?こんな事でさ。いや、お母さんがこんな事って言ったらおしまいだけどさ、遠足別行動しちゃっただけで犯罪を犯した訳じゃないんだし。本当に凄い子なら、こんな事は影響無くキャプテンになれるわよ。」
顔を上げ母親を見る。
「そうかなぁ?」
「そうよ。で、その子何ていう子なの?」
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母親に、出会いからの話をちょっとだけした。
「青春!だわねぇ〜。」
と、嬉しそうにしていた。
部屋に入りスマホを確認すると、テヨンとユリのグループにメッセージが数件入っていた。
既読を付けないように見てみると、テヨンからのメッセージが見えた。
[アミちゃん、ユンくんと付き合ってないとかもう、通用しないからね?]
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翌朝、朝練を終えて教室に入って来たユンを見て少しホッとした。
私を目で捉えると、笑ってくれたから。
「お家の人、大丈夫だった?」
「うん。アミは?」
「大丈夫だったよ。ちゃんと反省文書きなさいって。」
「そうだよ。それ!面倒くせぇな!」
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休憩時間、同じ班の子達に
「昨日はごめんね。」と謝って回った。
どの子も気にしていない、様子で笑って許してくれた。
特に男子達は、ソジンと友達になれたお礼にと、先生に聞かれたらトイレに行ってるとでも答えてやろうとしてくれていたらしい。
結局、私たちが居ない事に先生が気付いたのでは無く
レストランの前に居合わせた生徒や、走っている私達を見た生徒達から先生の耳に入った様だった。
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「はぁ。原稿用紙2枚も、何を書けばいいの?」
「作文得意なんじゃなかったの?」
「反省してたら書くけどさ。してないんだもん。」
「あはは!反省してないのかぁ?悪い子だねぇ(笑)」
「ユンくんしてる?」
「してる訳ないじゃん。」
「あ、そうだ!見て!持って来ちゃった。」
カバンから、マンボウのボールペンを出してユンに見せた。
「ぎゃははは!持ってくんなよ!」
と言うと、自分のリュックに手を伸ばし中を探り出した。
リュックから出した手を見ると、マンボウのボールペンを握っていた。
「あははは!ユンくんも持って来てるんじゃん!あはは!」
2人で涙が出るまで笑った。
「あぁ。おもしれっ。これさ、こうなるんだよな。」
と、ユンはボールペンの先の部分をふで箱に入れてチャックを閉めた。
上の、3分の1の部分が外に出てチャックも半分までしか閉まって無かった。
「きゃはははっ。」
「これで、書いてみるか。」
「書けないでしょ?私もやってみよ。」
2人で書いてみる。
案の定、マンボウの部分が重くて書き辛い。
「いや、無理!」
また2人で爆笑した。
「おい!お前たち何の為に残ってんだ!ちゃんと書きなさい!」
職員室から戻って来たナムシン先生に叱られた。
黒板の横にある先生用の机に座ると、書類を出し何やら書き始めた。
「先生ここに居るからな。早くやれー。」
ガッカリした顔で目を見合わせ、原稿用紙に向かった。
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やっとの思いで書ききり、先生に合格を貰ってから下校した。
部活が終わるよりも早い時間の下校に嬉しそうにしている姿を見て、少し救われた気分だった。
私達は、部活の終わる時間まで、公園で話をする事にした。
とても楽しかったのに…。
別れる間際になって、ユンは急に表情を変えた。
それを見て、胸がぎゅうっと締め付けられた。
俯いたユンが、
「もう、毎日は会えない。ごめん。」
と、言った。
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