死んだ筈の俺がダンジョン攻略させられてる件。しかもそれが配信されていて俺の刀がなぜかケモミミになってるんだが?

ポンポン帝国

第一章 初配信

第1話 配信準備

『まもなく二番線を特急電車が通過いたします。危険ですので黄色い線までお下がり下さい』


 聴こえてくるのはよくある独特な声のアナウンス。駅員さんはどうしてもこの声を出さないといけない病気なのだろうか? まぁ慣れてくると違和感はなくなるんだけど。


 そして俺の隣にはそれをふざけて真似している友人の松井。こいつはいつも調子だけはいい。控えるつもりのないその大きな声は今も周囲の人間を笑わせている。その結果、松井だけじゃなくてその隣にいる俺まで同じものとして見られるのだ。


「おい、進! 俺のモノマネの出来はどうだ??」


 なんか俺に言ってきてるんだけど、無視だ、無視。同じだと思われると正直恥ずかしいしな……。


緒日辻おひつじ しんくーん!! 聴こえてますかぁ!?」


 聴こえてないふりを続ける。本当はあまり仲がいいとは思われたくないんだ。別に悪いやつじゃないんだけど、やり過ぎてしまう事が多い。そして俺はそれにいつも巻き込まれる。


「ハァ……」


 一緒に帰らなければそれでいいんだろうけど、高校に入ってからずっと一緒のクラスで同じ部活に所属して、家も近所となったら無視して帰る方が難しい。これが女子だったら毎日がウキウキだったんだけどなぁ……。


 ちなみに俺はバスケ部だ。まぁそんなのどっちでもいっか。


 いつもより深く溜め息を吐いていると、アナウンス通りに電車が近づいてきた。部活の後な為、既に空は暗い。電車のライトがどんどんこちらへと近づいてくる。このまま通過するのもあってその速度はそれなりに速い。


 ぼーっとその電車を見ていると、不意に松井の身体が押し出されるように前に躍り出た。咄嗟に手を差し出そうとするが松井は線より手前に踏ん張った。


「あっぶね。何すんだよ!」


 松井が振り向くとそこには酔っ払いがいた。どうやら千鳥足になっていて足がもつれて松井に寄りかかってしまったようだ。


「ガキがうっせぇんだよ!!」


 酔っ払いはそのままの勢いで松井を突き飛ばした。


「あっ」


 今度こそ松井が勢いよく飛ばされていく。必死になってどこか掴まろうとしたその先にあったのは戻し損ねた俺の手だ。


「うおっ!?」


 思った以上に勢いのよかった松井に掴まれてしまった俺は、松井と一緒になって弾き飛ばされる。



 勿論、電車の方に。



 投げ出された俺達に迫ってくるのは予定通りに通過する電車だ。それもかなり近い。


 あぁ、こんなとこで俺の人生終わるのかよ。


 スローモーションで見えるその景色にどこか俺は諦めに近い状態になっていた。


 おいおい、松井、ひどい顔だな。


 俺が最期に思ったのはこんなちんけな事だった。


――――――――――――――――――――――――


「ん…………?」


 気が付くと俺は土? の壁に囲まれた部屋に立っていた。周囲を見て見ると、松井が気を失っているのか、地面に寝転んでいた。


 松井の姿を見て思い出す。


「お、俺、電車に……?」


 思い出した途端に背筋がゾクっとした。一瞬だったが見えていた電車に潰された松井の姿。そして俺にも訪れた衝撃。確かにあれは現実に起きた事だ。


「そうなるとここはどこだ?」


 あんなの受けたなら死んだだろう。それともあれか? ここはあの世なのか?


『まもなく、ダンジョン攻略を開始します。お手元の武器を装備してお待ちください』


 静かだった空間に突如聴こえてくるアナウンス。それと同時に何かが俺の目の前に落ちて来た。


「こ、これって刀か?」


 落ちてきた物を確認するとそこにあったのは一振の刀だ。


「これを持てって事か?」


 恐る恐る目の前の刀を手に取る。ずっしりとしたその質感はとても玩具とは思えない。鞘から抜くとそこには間違いなく、本物の刀があった。思わず持つ手が震えてくる。


「そ、それにしても何も起きないな。装備ってこれを持てって事じゃないのか?」


 現実逃避するかのように独り言を続ける。そうでもしないと気が狂いそうだったからだ。


『装備した事を確認。チャンネルの作成に移ります』


「えっ?」


 アナウンスが聴こえてくると、目の前に野球ボール位の真っ黒な球体が浮かび上がった。


『チャンネルの作成完了。配信準備に移ります。…………準備完了。それでは配信を開始します』


 アナウンスと同時に球体の真ん中がパカっと開き、目が出てくる。よく見ると中はレンズになっていた。これカメラか。そしてそれと同時にいつの間にか現れていた扉が開かれた。


「は、配信ってこれからどうしろってんだよ……」


 扉の先には道が続いている。何もないこの部屋にこのまま居たって何も解決しそうにはない。どうやら行くしかないようだ。


「おい! 松井起きろ!!」


 とりあえず松井を起こそうと揺さぶるが全く起きる気配がない。


「だめか。はぁ……、一人で様子を見に行くしかないな」


 溜め息を一つ吐くと刀を手にそのまま扉の向こうへ歩き出すのであった。


――――――――――――――――――――――――――――


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