2021/03/19-2
警備員に守られながら、
ガラス張りの進学塾に吸い込まれる
子供たちは、誰も眠らない目をしていた。
現実の夢を見続けていた。
どこか羨ましく思うが、
それは恵まれた環境ではなく、
若さだけなのだろうな。
雨に濡れたら熱を出す、子供ゆえの弱々しさ。
幼い子供ゆえの保護者がいる安心感。
大人の私が失ったものか。
ただただ、嗅覚のみが、
私にもあの時があったのだと語る。
独特なペトリコールの匂いがした、
あの蒸し暑い、
透明な水泳バックを持った少女の頃。
親とも、兄妹とも、友達とも、
違う人生を歩み出していた日々。
ふと、
群れずひとりの、
くるぶし丈の靴下の少女が目につく。
明るい黄色のワンピースと、
念入りにレインコートを着た彼女は
傘の中で俯いていた。
人生の寂しさを仄かに知り初めた少女。
雨風に黄色のワンピースが翻る。
その色がレインコートを透いて、
キャンディを薄い紙に包んだみたいだった。
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