反旗
第1話 反旗①
歴史というのは積み木のようなものだ。一つでも違う詰み方をすれば結果が変わっていく。この物語の世界はその積木が今とは程遠い詰み方をされた世界線の話だ。
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今、ここグロワール帝国では盛大に凱旋パレードが行われている。
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グロワール帝国
現在で言うウクライナ、ルーマニア、トルコなどの黒海を囲む地域で構成された帝国。ウクライナの肥沃な大地やバクーの油田などを確保しているため国はとても栄えている。現在の皇帝はノブレス・オブリージュ。
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この戦争の総司令官でありこの国の最高司令官である俺ことエミル・アカルはこの凱旋パレードを見てため息をついていた。何を隠そうこの国は現在進行形で経済破綻へのカウントダウンが進んでいる状況なのだ。もともとはこの国はこの世界でも3本の指に入るほどの経済大国だったにも関わらず、皇帝が変わってから財政は悪化していく一方。そんな状況の中で盛大な凱旋パレードなど自分の首を自分でしめるようなものだ。
なぜそんなことがこの国で起きてしまうのか。それは現在の皇帝ノブレス・オブリージュが先を見通す力に欠けている…いや、はっきり言ってしまえば救いようのない馬鹿だからだ。国のことは考えず自分の生活さえ維持できればいい。そしてその自分の生活を守るためならどんな侵略戦争だって行う。今回だってその一環だ。そんな外交をしていれば周辺諸国との関係だって冷え込む一方になるのは当然のこと。今回の戦争だって先代の皇帝の時代は友好的だった国との戦争だ。名前とは親の願いが込められたものだが、こうなってしまっては皮肉にしかならない。
今回の戦争は現在の皇帝を表している非常に良い例だろう。もともと非常に多量の貴金属や資源が埋蔵されている場所で周辺諸国で協力して統治していくという約束になっていたのにも関わらず、そこを独占することによる利益に目がくらみ突如領有権を主張し占領することとなった。
幸いにも作戦が非常にうまく進んでいき、敵が対応する前に占領することができたので大きな戦闘に発展することにはならなかったが間違いなく周辺国の顰蹙を買っただろう。
ただ、今の政策は間違っているといくら進言したとしてもまともに取り合わず、何ならそう進言したものを事実上の左遷にするなどめちゃくちゃなので貴族、軍人のほとんどがもうあきらめている。幸いにもこの国は大国だ。自分たちの代だけで完全に国が消滅するといったことはないだろう。もし本当に国が消滅しそうになったらクーデターでも起こしてどうにかするしかないが、そんなことは起きないと願いたい。
盛大な凱旋パレードも終了し今度は論功行賞が宮殿の中でとりおこなわれる。この国では一番大きな報奨があるものは最後の残しておくという文化があるため部下や戦友が報奨をもらっていくのを眺めていく。
そしてついに俺の番が来た。
「総司令官、エミル・アカル。貴殿には今回の功績をたたえて100万エクセル、そして黄金鳳翼賞を授ける」
それを聞くと周囲から大きな歓声が上がる。黄金鳳翼賞というのはこの国で事実上最高の勲章であり、長い歴史の中で授与されたのは3人しかいない。ただ俺の気持ちとしてはあまりうれしくない。まずお金だが、そもそも俺は侯爵家出身のためそもそもあまりお金に困っているわけでもなく、さらに今更お金ををもらったとしても、もう小国の国家予算に当たるぐらいは個人で持っている。それに勲章だって所詮は飾りだ。確かに勲章のデザインはかっこいいし、つけてみたいとは思うがそれはそれはあくまでも写真撮影の一瞬だけとかそういう瞬間だけで十分だ。こういうのをもらえばもらうだけゆっくりと休んで暮らすという夢も間違いなく遠のく。
「ありがたき幸せ」
しかし、ここは公式の場だ。心の中でそう思っていたとしても態度はかしこまらなければならない。内心うんざりとしながらも俺はお辞儀をして、勲章を受け取ると皇帝の前から下がろうとする。
「少し待て。私からもお前に特別な報奨を渡そうと思う」
しかし、俺が皇帝の前から去ろうとすると皇帝自身が俺に声をかけてきた。このような場で皇帝が直に話しかけるなんて異例なことだ。俺も驚いたし後ろもざわついている。
「お前には私の娘である、アイシャを授けよう」
「丁重にお断りさせていただきます」
そういった瞬間先ほどまで騒がしかった場が一気に鎮まる。
…やってしまった。こういう場ではどんなことが起きても自分を出さずにプログラムで動くロボットのようにふるまうと決めていたのに…。
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改稿作業に終わりが見えてきたため少しづつ投稿を再開します!
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