第85話 序列7位"浮遊"のフロウ
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ローズ
性別:女 種族:ハイダークエルフ 年齢:16歳
Lv 10
HP 5000/5000
MP 5000/5000
ATK 5000
DEF 5000
AGI 5000
INT 5000
LUK 5000
固有スキル
呪術・罠術・五感強化・魔の境地・守護神・叡智・サイボーグ・炎熱操作・戦士の誓い・透過・明鏡止水・???
武技スキル
刀剣術:Lv.MAX
体術 :Lv.MAX
魔法
全属性魔法
装備
黒衣一式(神級)
灰杖アロン(伝説級)
称号
狩猟神の加護・裏切られし者・失望する者・信じる者・恋する乙女・傅く者・従者の心得・武神・魔神・魔物キラー・盗賊キラー・ツンデレ
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フロウ
性別:女 種族:改造エルフ 年齢:16歳
Lv 20
HP 500/500
MP 4000/4000
ATK 2000
DEF 500
AGI 1000
INT 5000
LUK 0
固有スキル
浮遊・魔学・状態異常無効
武技スキル
弓術 :Lv.5
体術 :Lv.3
魔法
水魔法:Lv.4
風魔法:Lv.6
称号
なし
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悪の組織の構成員と言えば、大抵が危険思想の持ち主であり、どこか変わった部分があると思われがちであるが、そうでない者も中にはいる。例えば何か事情があって、その組織に身を置いている者や構成員が身内である者、そして……………よく分からない者である。今回はどこか掴み所のない相手との戦いをローズが強いられていた。フリーダムから、そう遠くない森の中で出会った両者。先手必勝、万が一にも逃してはならないと勢いよく魔法を放ったローズは同時に駆け出していた。相手の足元に罠を設置する為である。しかし……………
「ひぃ〜〜怖いですぅ」
「なっ!?」
何と魔法を躱されてしまったのだ。それも固有スキルである浮遊を使い、宙に浮いた状態で…………決して、油断を怠っていた訳ではない。これは相手の方が回避に関してローズの想像の上を行っていたという話である。
「ちょっ!降りてきなさいよ!"風切響"!」
「む、無理ですぅ〜」
「"水伸舞"!…………何なのよ!これじゃあ、まるでワタシがいじめているみたいじゃない」
当然、得意の罠を設置したところで宙に浮かれてしまっては意味がない。代替策として魔法を放ってはみるものの、これもフロウが空中を華麗に移動して躱してしまう。ステータス上ではローズの方が圧倒的に有利な筈ではあるが、それだけではない何かがあるのだろうか………………例えば、戦闘経験や生きてきた環境、またはステータスには現れていない特別な能力の差が………………
「いじめ……………?」
「ん?どうしたのよ?」
「い、嫌です…………や、やめて下さい…………いじめはもう嫌………………もう私をいじめないでっ!!」
「っ!!」
その時、大量の魔力がフロウから溢れ暴走が始まった。当の本人は目から光が消え、自我をなくした状態で地に足を下ろした。そして、彼女が一歩を踏み出す度、魔力が辺りを別の風景へと変えていく。木々は切り倒され、大地には亀裂が走り、突風でも吹いているのか、まともに立っていられない程の強風が吹き荒れている。この暴走は両者にとって本来は良くないことであり、非常事態である。しかし、目が虚になり、口を大きく開けながら譫言のように何かを呟いているフロウに自身でこれを止める手段はないと思われる。ひとえに絶望的なこの状況。そんな中、ローズは……………何故か悲しい顔をして、こっちに向かってくるフロウを見つめていた。
「そう……………アンタにも何かあるのね。分かったわ。ワタシがきっと止めてみせる!これはワタシの責任だから!」
――――――――――――――――――――
「初めから全力でいくわ!"強呪術""全罠""五感限界"!!」
ステータスが何倍にも膨れ上がっているフロウに対して生半可な力は通用しない。かと言って、最初から全力で行ってもいいものなのか、長期戦になった場合を見越して温存しておいた方がいいのではないかなど様々な葛藤があった。だが、中途半端な力で対抗しようとして返り討ちに遭えば、次のチャンスがあるかは分からない。ローズは平気でも土地の限界があるし、もし逃走を許してしまえば部下達が危ないかもしれない。色々考えた結果、初めから自身の持てる最大の力で以って、フロウを迎え撃つことに決めたのである。
「うぅ…………ぐぅ…………」
「はぁ…………はぁ…………」
お互いが苦しそうにしながらも距離を縮めていく。フロウは呪術と罠によって、身体を内外ともにダメージを負いながら、一方のローズは固有スキルを最大に発揮しようとした代償により、身体機能に弊害を起こしながら…………それでもお互いに譲れないものを抱えながら、前へと進む。そして、遂にその距離は目と鼻の先になった。
「あぁ…………んぅ?あれ?私は一体…………くはっ!」
「はぁ…………はぁ……………どうやら暴走が止まったようね」
「ぐっ…………はぁはぁはぁ…………なるほど。そういうことですか」
「あれは一体、何だったの?」
「あれは……………私達、幹部が改造された時に施された切り札のようなものです」
「切り札?」
「はい。その者達の一番根っこにある触れられたくないものやトラウマが呼び起こされた時に勝手に発動してしまうんです」
「それがあの暴走?」
「ええ。命が尽きるまで魔力を無理矢理、放出し続けて、あらゆるものを破壊していくんです。ちなみに自分で止める方法はありません。だから、止めて頂いてありがとうございました。危うく、無関係な多くの方達を傷つけるところでした」
「何よ、それ!じゃあ、アンタ達は組織の人形として都合の良いように使われてるってことじゃない!精神的に弱くなって負けそうになったら、自爆のようなマネまでさせて!」
「…………みんな、それを承知の上で行動しているんです。だから、憐れだとは思わないで下さい」
「何でよ……………何で、そこまで」
「一人一人、事情は異なるでしょうが……………たった一つ共通していることがあります」
「何よ?」
「それは組織の長であるランギル様をお慕いしているということです。正直に言うとアスターロなんて邪神、私にとってはどうだっていいんです。ただランギル様がそれの復活を望むのであれば、私は手助けがしたいと思ったんです」
「アンタ、まさかそいつのことが」
「ええ…………好きです。愛しています」
「良く考えてみなさいよ!そいつのやってることを!アンタ達を使い捨て、世界を滅茶苦茶にしようとしているのよ!?」
「……………私は生まれ育った里で幼少の頃から、いじめを受けていました。別に誰かのことを傷つけたり、悪口を言ったりしたからではありません………………変わっていたんです、私。特に理由などはないのに外の世界に興味を持っていて、しきりに空想を続けていました。それが周りの同年代の方達は気に食わなかったんでしょう。まるで自分達は眼中にないと言われているみたいで…………ある時、私は我慢が出来なくなって遂に里を飛び出したんです。最低限のお金と里の特産品をいくつか持ち出して……………するとどうでしょう。里の中で一生を終えていれば到底出会うことの出来なかった景色や食べ物、人々に次々と巡り会えたんです。そんなことを繰り返していく内に気が付けば3年が経とうとしていました。そんなある日、私は悪い人達に騙されて持ち物を全て奪われてしまったんです。そこからは本当に大変でした。常に飢えに苦しみ、弱り切った私を奴隷として売ろうとする盗賊に狙われて……………最終的に私は森の中で意識を失ってしまいました。何もない状態で森の中に寝そべるなんて自殺行為に等しいです。しかし、どういう訳か目を覚ますと私は無事でした。何故なら、あの御方が……………ランギル様が守ってくれていたからです」
「そこで初めて出会ったのね」
「ええ。ランギル様は弱り切った私に食料や水、お金も与えて下さり、身を挺して盗賊や魔物から守ってくれたんです。それから、数日後に組織のことを聞かされました。私はランギル様のお役に立ちたい一心で頷くことしかできませんでした」
「アンタの話は分かったわ。でも、それによって世界が」
「分かっています。私だって無関係な人達を巻き込みたくないし、争いだって嫌いです。でも…………」
「でも?」
「好きな人が…………心の底から愛している人がそれを望んでいるんです!私には両方を天秤にかけて、どちらかを選ぶことなんてできません。できない筈でした…………でも、気が付けば、私はここにいて、こんなことをしています……………あなたには今、大好きな人や大切な人達がいますか?」
「っ!!な、何よ、いきなり」
「どうなんですか?」
「…………い、いるわよ!ええ、いるわ!いちゃ悪い?」
「その人が…………その人達があることを望んでいて、その力になれるのなら、それを叶えるお手伝いをしてはいけないんでしょうか?私がしていることは間違いなんでしょうか?あなたはどう思いますか?」
「………………一概にどれが正しくて、どれが間違っているかなんて言えないわ。でも、大切な人達が何かをしようとしていて、それが第三者の目から見て間違っていると思ったのなら、全力で止めるべきだとワタシは思うわ。本当にその人達のことを大切に想っているのなら、内面や外見だけでなく行動まで見るべきよ。で、間違っていると思ったら、正す。それも一種の愛情表現なんじゃないかしら?」
「……………」
「ちょっと!急に黙られたら、こっちが恥ずかしいじゃないのよ!」
「すみません。あまりに予想もしていなかった答えが返ってきたもので」
「あ、そうなの?」
「ええ……………でも、最期にそんな言葉が聞けて良かったです」
「最期って…………」
「暴走の代償、それとあなたが私を止める際に放ったスキルの数々……………どうやら、私の身体はもう限界みたいです。むしろ、今の今まで良く保った方です。おかげでいい言葉も聞けましたし。冥土の土産にピッタリです」
「アンタ…………」
「そんな顔しないで下さい。私がどんな生い立ちでどんな人生を歩み、そこにどんな想いがあろうが、やってしまったことは消えません。本来なら、その十字架を背負い、一生を償って生きていくという方法もあるのでしょうが…………それすらも許されない程、私の犯した罪は重いものだったのでしょう」
「次に生まれ変わったら、真っ先にアンタを見つけ出すわ」
「私なんかよりもよっぽど素敵な空想をしますね……………ちなみに見つけ出した後は?やっぱり私を裁きますよね?」
「友達になるに決まっているじゃない!裁く権限なんてワタシにはないもの……………アンタが望むなら、一緒に買い物したり、食事したり、遊んだり……………それこそ一緒に懺悔だってしてやるわよ!」
「どうして、そこまで私なんかに」
「アンタを見てると放っておけないのよ。なんか、昔のワタシを見ているようで」
「……………もっと違う形で早くあなたと出会っていたら」
「何かが変わっていたかもしれないわね。でも、現実には"もしなんて"のはないのよ。辛いようだけど、時は戻せないし、やってしまったことは取り消せないわ」
「ですね……………厚かましいんですが、来世の友人に最期のお願いをしてもいいですか?」
「何?今なら何だって聞いてあげるわよ」
「世界をよろしく頼みます」
「任せなさい!!」
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