第66話 花人

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バイラ

性別:女 種族:花人(薔薇種) 年齢:25歳


Lv 50

HP 4400/4400

MP 4400/4400

ATK 4589

DEF 4263

AGI 4152

INT 4347

LUK 4200


固有スキル

査定・甘い香り・両手に花・挑発・魔の境地・守護神・叡智・サイボーグ・炎熱操作・戦士の誓い・透過・明鏡止水・???


武技スキル

刀剣術:Lv.MAX

体術 :Lv.MAX


魔法

全属性魔法


装備

黒衣一式(神級)

茶色の仕込み杖ウアス(上級)


称号

花の女神の加護・傍観者・勘定論・美しさを追い求める者・傅く者・恋する乙女・従者の心得・武神・魔神・魔物キラー・盗賊キラー・冷静沈着


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査定

物や人の価値がおおよそで分かる。また、金銭を取り扱う職業への適性が高くなる。


甘い香り

指定した者の精神を錯乱させ、思考力を奪うスキル。


両手に花

1日1回しか使用できない。あらゆるスキルや魔法を使用する際のデメリットがなくなる。


花の女神の加護

花の女神ショチケツァルの加護。HPの値に補正。


傍観者

常に周りを俯瞰的な目で見ている者に与えられる称号。INTの値に補正。


勘定論

物や人などを価値基準で考える者に贈られる称号。MPの値に補正。


美しさを追い求める者

美への探究心に溢れ、常に美しくあろうとする者に贈られる称号。DEFの値に補正。


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花人。それは花の特徴を有した人間のこと。あまり他の種族との交流を持たないことが多く、大抵は自分達の集落や村を作り、そこで細々と暮らしてる者がほとんどだ。かく言う、ウチもその1人だったし、このまま村を出ることなく、ずっとここで暮らしていくものだと思っていた。ある商人がウチの住んでいた村を訪れる、その時までは…………。幼少の頃から、何となく、数字や商売に興味を持っていた。かと言って、それをどこまでも探究していきたいと思ったことはない。なぜなら、もっと別のことに関心があったからだ。それは何かというと、ズバリ美しいものである。自分が常に美しくあることはもちろん、周囲の物や環境にもそれを求めていたのだ。だから、それ以外のことに注力している余裕はなかったし、またしようとも思っていなかった。そんなある日、1人の商人が村を訪れた。それは度々、村へと物資や食べ物を売りに来る人とは違う人だった。それがたまたま目に付いたウチは物陰から、こっそりと様子を窺っていた。すると、すぐに驚くこととなった。その商人の圧倒的な商売の手腕に。いかに商品を買ってもらうか、それにはどのような価格設定にしておく方が良いのかを緻密に考えられた戦略、またお客さんに対する姿勢など、そのどれもが美しかった。飛び交う数字も売り捌いていく姿も何もかもが美しい。ここで初めて、ウチは気が付いた。何故、幼少の頃から数字や商売に興味があったのか……………。それは何も難しい理由などではない。ただただ単純にそれらが美しいものだったから。ただ、それだけであった。


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「ここが港町、プールなの」


「そうアルね」


シンヤ様から発表されたウチの上司はレオナさんだった。現在、ウチらはシリスティラビンから遠く離れた港町、プールへとやって来ていた。海がとても近いこの町は常に潮の香りが強く、レストランなどで提供される食事も海産物を使ったものが多い。迷宮都市にいてはなかなか味わえない独特の空気や風景があり、次はクラン全員で来てみても面白いかもしれないと思う程だった。


「で、船は手配できるの?」


「はい。途中までなら可能みたいアル」


この町に着いて、すぐにギルドへと向かって色々と情報を得た結果、分かったことがある。それは町に面した海のどこかに海賊がいるというものだった。ただし、それは噂程度のものであり、未だかつて、被害に遭った者もいない。では、何故そのような噂が流れているのか。


「それにしても海賊アルか………」


「本当にいると思うの?」


「レオナさんはどう思うアルか?」


「ボクはいると思うの。なんとなく」


ある日、1人の冒険者が慌ててギルドに駆け込み、こう言ったらしい。


「ウチは…………いないと思うアルよ」


海賊がこの海のどこかにいると…………


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「すまん、嬢ちゃん達!これ以上は怖くて、とてもじゃないが無理だ!」


「ここで充分なの!ありがとうなの!」


「助かったアル」


手配してもらった船で進むこと20分。向こうの方に島らしきものが見えてきたところで船頭からストップがかかった。噂ではここら辺から、もう既に海賊のナワバリらしく、いつ襲われてもおかしくないんだとか。あくまでも噂であるし、襲われた事例は今のところない。ウチらは船頭にお礼を言い、色を付けて報酬を手渡す。顔が真っ青になりながら焦っているのを見て、悪いことをしたなと罪悪感が湧いた為だ。


「さて、行くアルか」


「ボクはあれこれ言わないから、バイラのしたいようにしてなの」


「了解アル。じゃあ、早速1つ頼みたいことが………」






「せ、船長!おかしな連中が前方から、やって来ます!」


「なんだ?前に来たような不届きな冒険者か?」


「いえ!クランのマークがついた黒衣を纏っている為、一応冒険者ではあるみたいなんですが……………」


「なんだか、歯切れが悪いな。報告はしっかりと明確に行いな」


「そ、その…………2人組みなんですが…………1人は空を飛んでいて、もう1人が海の上を歩いているんです」


「は?」


「い、いえ!信じられないのかもしれませんが、本当なんです!」


「何を馬鹿なことを言っているんだい!そんな芸当、聞いたこともないよ!」


「だから、本当なんですって!」


「埒が明かないな。分かった。あたしも確認しに行く」







「本当じゃないか!」


「だから、そう言ったでしょう!」


「な、なんなんだ奴らは…………」


「と、とりあえず、どうしましょう?」


「そうだね…………こうなったら、向こうの出方を待つしかないよ」








「あ、海賊いたの」


「本当アル。ウチの直感も鈍ったもんだ」


「どうするの?」


「手筈通りで。向こうが攻撃してきたら、空から威嚇程度に打ち込んで欲しいアル」


「了解なの」


「よし……………そこの海賊達!」


「な、なんだい?」


「ウチらはとあるクランに所属する冒険者アル。名はウチがバイラで…………」


「ボクはレオナっていうの!」


「そ、そうか。あたしはメアリー。女だけで構成された海賊団の船長を務めている」


「ウチらがここに来た目的は噂の真相を確かめる為アル」


「噂…………?」


「ある冒険者がもたらした噂アル。なんでも町に面した海のどこかに海賊がいると。どうやら、その噂のせいで港町プールの住民がいつ訪れるやもしれない恐怖にビクビクしているらしいアル……………。まだ被害が出たことないのに」


「なんだい、それは。随分と馬鹿げた話だね。じゃあ、なにか?本当にいるかも分からないものに怯える日々を過ごしているってのかい?」


「そういうことアル。ちなみに今まで冒険者と関わったことは?」


「…………一度だけあるね。船に乗った冒険者共が色めき立って、いきなり襲い掛かってきたのさ。まぁ、返り討ちにしたんだけど」


「もしかしたら、その内の1人が?」


「可能性はあるね。全く、なんてことだい。もし、そうなら、たまったもんじゃないよ。自分達の方から襲い掛かってきたのにも関わらず、負けた腹いせにあたしらを悪者に聞こえるように吹聴するなんて…………言っておくけど、海賊とは名乗っているけど、今まで善良な町人や冒険者をこちらから襲ったことなんてないよ。あたしらはただ自由に生きていきたくて、この道を選んだんだ。別に戦いを求めていた訳じゃない。だから、船員も訳アリなのが多くてね」


「なるほど。気持ちは分かるアルよ。ウチも自分のしたいことをしようと村を飛び出した結果、黒ローブを纏った変な連中に捕まり、シリスティラビンのオークションに出品された後、色々あって、ここにいるんだから」


「いや、それ色々の部分が一番重要じゃない!?何でそこを隠すんだい?」


「ご想像にお任せするアル」


「なんだよ!気になるじゃんか!」


「まぁ、どうしても知りたいなら、ウチらが所属しているクランに入ればいいアルよ」


「は?」


「ちょうどいい。ウチは自分の組に入ってくれるメンバーを探していたアル……………ってことで、入って。一応、拒否権はあるよ?」


「いや、顔怖いよ!それ、絶対断っちゃ駄目なやつじゃん!!」

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