第10話 無慈悲の兆し
「そういえば、康輔ってどれくらい魔法使えるんだ?」
「んーっと.........ざっと100ってとこかな」
「100⁉︎」
なんだよオーバーリアクションすぎだろ。能力者なんて10000人を優に超えているだろうに。
「ちなみに魔法ってそれで全部か?」
「んなわけないだろ。俺が覚えているのは初級と中級の魔法だけだ。まぁ、中級の中にも覚えていない魔法があるが....上級だけで200の魔法を超えるさ」
「.......」
どうやらあまりすごくないということがわかったらしい。
「さすがこうにぃだね」
氷華が教室に入ってきた。
「さすがって.....ん?何見てるんだ?」
俺は氷華の手に握られていたスマホに写っていた一人のVtuberが気になり、尋ねた。
「ああ、この人のこと?この人は荒木あえかって人だよ。現役小学生のときにデビューして現在は中学生の人気Vtuberだよ。すごく頭がいい中学生ってのと、マジの二重人格っていうのが人気みたい」
「ふーん」
なんでか知らないが、「荒木あえか」という名前に親近感が湧くが....まぁどうでもいいか。関わることないんだし。
その時、俺は先生に呼ばれた。
「おーい!康輔はいるかー?」
「いますけど」
「康輔。校長室に来てくれ」
そう言われたので、俺は校長室に向かうことにした。
ちなみにリンもついて来ていた。
「なんですか校長」
俺は校長に要件を聞く。
「君が魔法を使えることは知っているんじゃが、それでじゃな。生徒達と模擬戦をしてもらえないかと思ってじゃな」
「自分がですか?」
正直自分の魔法については未知数なはずだ。魔法なんてものはこの世界にないんだから。
俺が放った魔法が最弱威力だとしても、もしかしたらみんなには重傷になるかもしれないし....。
「いいんですか?ワンチャンみんなが怪我をする可能性が全然ありますけど....」
俺は念をおす。
「君の評判は担任の先生から聞いておる。じゃから大丈夫じゃ」
「そこまで言うなら、いいですけど...」
そうして俺はなぜか模擬戦をすることになってしまったのだった。
「あんたって敬語使えたのね....」
「当たり前だろ。使えなきゃこの世は生きていけんのだよ」
能力者.......特にランクAに関してはやばい。1人で世界を滅ぼせるのだから、警察...つまり国家権力...国は安易に手を出そうとしない。
もちろん、殺しが起きてもだ。ランクAによる殺傷は完全に合法とかしている。
「仕方ない.」の一言で殺されてしまうのだ。
「それにしても、模擬戦大丈夫そう?」
リンが心配そうに聞いてきた。
「んだよ急に。俺に魔法を教えたのリンだろ?なら大丈夫だって」
「......」
事実、魔法っていろんな種類があって強いしな。強いというか対応力があるとでもいうんかな?
そして、模擬戦が始まろうとしていた。
康輔の第一対戦相手は<氷華>だった。
彼らはじっと互いを見つめてその時を待つ。
そして「開始」という声が鳴った瞬間彼らは動いた。
康輔は自身に魔法を付与し、動こうとした。しかし、康輔はすぐに気付く。自身の足が動かないことに。
足を見ると氷によって足が固定されていた。
「すっかり忘れてた....」
康輔は思い出す。氷華はランクBの氷の能力者であることを。
「悠長に考えてる暇あるの?」
気が付くと、頭上から声が聞こえた。かかと落としが顔面目掛けて繰り出される。
「"ファントム"」
その瞬間、その攻撃は煙を切った。
な、なんで....。
私は確かに決めたはずなのに....。
康輔は確かに足が固定されていて動けなかった.....そしてかかと落としは当たったのに...。
手応えがまるでないこと、そして康輔が目の前から消えたことに氷華はひどく驚いていた。
びっくりしている内に、後ろからデコピンをされた。
「痛っ」
振り返ると康輔がいた。
試合終了のホイッスルが鳴った。
「ねぇぇぇ、どうやって脱出して私の後ろに回ったの?無理矢理引き剥がしたわけじゃないでしょ?」
俺は氷華から質問攻めを受けていた。
「はぁ...."ファントム"って魔法だよ。1〜4m付近に自身の幻影を生み出し、瞬時にそれと入れ替わるんだ。ちなみに幻影と入れ替わるまでの時間は約0.1秒ってとこだな」
「手応えがなかったのも幻影だったから?」
「まぁそういうことだな。まるでそこに存在しているのに攻撃を受けると煙かのように消えてしまうんだ」
「普通に反則でしょそれ.....」
「まぁ、俺もそう思う。けど、位置感覚がバグるから簡単じゃないんだよな」
覚えるの自体、手間取ったのに、使う気も慣れなきゃだなんて....大変だった。
それから俺は難なくみんなを倒し、最後の試合となった、その時だった。
「はじ...」
ドォォォンという爆発音共に何かが俺目掛けてきていた。
俺は咄嗟に左へ避けた。
辺りを見るとクラスメイト達が倒れていた。
「んだこれは」
正味理解が追いつかない。
しかし、爆発音がした方向から6人の男女が出てきた。
そいつらは俺の目にも止まらぬ速さでこっちにきた。
「あれ?全員気絶させたと思ったのに.....」
右にいた女がそう言った。
こいつらが主犯か.....。
そう思っても俺は迂闊には動けない。
こいつらの能力が分からん以上、下手に動くとみんなが危ねぇ目に遭うかもしれない.....。あそこには萌音もいるし、氷華も.......って、リンはどこに行ったんだ。
......いや、心配だけど今はそれどころじゃ.........。
(また、失うのか?)
そう聞こえた。俺の声で。
しかし俺はそんなことは言ってはいない。どういうことだ?
考えている最中に、何かが振り下ろされた。
「やべっ」
この距離は避けられ.....るか。
「"ファントム"」
そう唱え、俺と幻影は入れ替わり、俺は何かを避けた。
幻影が真っ二つになっているところを見るに、斬撃のようだ。
刀を持っているやつも俺の幻影のところに立ってるし。
「なんだこいつ.....」
一人の男がそう言った。
魔法なんてこの世界じゃ見ねぇから当然の反応か。
「こんな奴がいるなんて想定外だ。今日のところは引き上げるぞ」
リーダーらしき男が言った。
「おい!お前らは一体.....」
「......我らは、始祖を信仰する者だ」
そう奴らは言い残し、消えた。
......始祖?なんなんだよそれ.....?
しかし、俺は考えている暇などなかった。
「あっ!みんなは⁉︎」
俺は倒れているみんなに近寄る。
.......どうやら気絶しているだけのようだ。
なんだったんだ....あいつら......。
とりあえず、みんなが起きるのを待つか。流石にこれだけの人数に"バッドヒール"を使うのはめんどいし。
みんなが起きてから、事情を説明した。
そいつらを探そうにもどうしようもないので、一旦何もしないで過ごすという結論になった。
俺はみんなが無事だったので一旦気にしないことにした。
しかし俺はまだ知らなかったのである。
俺のこの出来事が、悲惨なことを起こそうとは。
そして、世界は無慈悲だと。
俺がそのことに気付いたのは、
大切な何かを失った......その時だった。
第0章 完
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