第0章 魔女の始まり
第1話 魔法を知って
俺こと、鈴木康輔は今非常に焦っていた。
なぜなら遅刻しそうだからだ!
「目覚ましなんかに頼るんじゃなかった.....」
俺はランクF。能力者の中での最弱。能力者として扱われることすらはばられる存在。要は、一般人のそれとなんら変わらない能力者を表す。
例えば、電気を操る系統の奴らの中でFというのは、ドアノブに触れた時に発生する静電気程度しか起こせない。
ただし、FにもまれにC、Bへと変化するものがいる。
それは開花。無能力だったものがあるきっかけを起点に能力を発現させること。
「——ということだが、それだと一般人全員にランクFが与えられることになる。しかしそうはなっていない。特定の人物だけがFになっている。それはなぜだと思う?鈴木!」
先生に当てられた。
「それは、能力の波長があるから......」
「そうだ。能力の波長があるものは何かしらの能力を持っている。無能力なのに能力の波長がある者はおかしい。つまりは能力が発現していないということになる。だからFがつけられるわけだ。何かしらの能力を有していることがわかるが、能力が開花していない、つまり一般人となんら変わりないからな」
そう。自分には能力の波長があるのだ。無能力なのに。
「しかし、浮かれるんじゃないぞ。最悪、開花せず、能力の波長が消える者もいないわけではないからな....」
ー休み時間ー
正直、学校は嫌いだ。Fというだけでいじめられるから。
パシられすぎて、疲れたし、金欠だし。
そう言って、廊下の角を曲がった時だった。
俺はそこそこ大きい
その瞬間、体から力が抜け、力尽きた。
そう思ったのに、痛みが消えた。
目を開けると、そこは通り過ぎる風が心地良い草原だった。
「どこだよここ」
そう言うと、後ろから、
「アルド草原よ」
と言われた。振り返ると小さな翼と尻尾、ツノが生えている1人の女性がいた。
「誰だあんたは」
そう俺は尋ねる。彼女は、
「サキュバスよ」
と答えた。
「はぁ?冗談はいいから」
俺はその時の返答をまだ信じられなかった。
「冗談な訳ないでしょ?あんたが急にこのアルド草原に現れたんだから」
「マジでいい加減に...」
そう言いかけた時に、ある都市伝説が頭を過った。
<能力者から発せられるエネルギーがぶつかると5次元のどこかへ行ってしまう>
.......まさか、本当に来たのか?異世界に?.......いや5次元ってことは、ここはパラレルワールドの可能性が高い。そもそも5次元じゃないかもしれないが。
「んなことはどうでもいいんだよ」
と俺が大きな声で言うと、
「何急に.....頭イカれた?」
と若干引かれてしまった......いやドン引きされてしまった。
「.....とりあえず、あんたがサキュバスなのは分かった」
「で?あんたは誰なの?」
彼女が聞いてきた。
「俺は鈴木康輔。とりあえず異世界から来た」
という、シンプルな自己紹介をした。
「異世界?ああ、あんた<ワーリスト>に巻き込まれたのね。道理で話が通じないわけだわ」
そう彼女は言った。
「ワーリスト?」
輪廻の輪みたいなものだろうか。
「ワーリストっていうのは死んだ者がたまに少しだけできている世界の隙間に入り込んでしまう現象よ。ちなみにワーリストに巻き込まれた者は生き返るわ」
ということは俺、死んだのか。
「で?あんたはどうやって死んだの?」
彼女が聞いてきた。俺は、彼女にここまでの経緯を話した。
「なるほど.......スズキの世界だと「超能力」なるものがあるのね...」
「ああ。そこで折り入ってお願いがある」
「お願い?」
俺は真剣な顔をしながら言う。
「俺に魔法を教えてくれ‼︎!」
それから、彼女はなんとかOKしてくれた。
ちなみに彼女の名前はリンというらしい。
「まず、あんたが覚えなきゃなのは身体強化ね」
「え?」
「だって、スズキの話だと、そっちには魔法的な力を持った奴らがわんさかいるのよね?」
「ああ」
「それで、能力のレベルが高いと身体能力が上がるのよね?」
「まぁ、そうしないと体が耐えきれないからな....」
「だから、まずは身体的な面で鍛えた方がいいわよ。相手に魔法を避けられたら相手の攻撃を避けなきゃいけない。そうした時に身体能力で劣ってるあんたが勝つなんて100%無理よ」
一理あると思った。
確かに、俺の運動神経はいい方だと思うが、それは無能力者の中での話。
能力者の中では底辺中の底辺だろう。瞬殺されるのが目に浮かぶ。
「じゃ、じゃあ。なんの魔法を覚えるんだよ」
「身体強化系には、クイック系、ブレイク系、アミナ系、センス系、メンタル系があるの」
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