この美しくもクソったれな異世界にそろそろわからせる時が来たようです〜異世界孤児スタートとかいうデバフスタートですが何か?〜

mitsuzo

プロローグ

第1話001「異世界に転生したようです」


 新作です。

 毎日12時更新です。よろしくお願いします。


※初回は3話更新(12時、17時、21時)となります


********************



  俺の名はリオ。


 親はいない。孤児だ。


 そんな孤児の俺は孤児院で生活している。歳は8歳だ。


 この世界では、王族がいて、貴族がいて、平民がいて、その下に⋯⋯貧民がいる。そして、その貧民の中でもさらに親のいない子供⋯⋯いわゆる『孤児』がこの世界のヒエラルキーの最底辺。


 そして、それが今の俺である。


 この孤児院は『セイントファイン小領』という小領地が管轄する『タスク地区』にあり、そして、孤児院の運営費用はタスク地区の貴族である地区長やその他の貴族の寄付により運営されていた。


 しかし、その寄付が突如ストップとなる。


 理由は、先週、孤児院の子供の一人が他領の貴族の馬車を誤って止めてしまったためだ。ただ、その子が貴族の馬車を止めたのは、いつも可愛がっている子猫が馬車の前に飛び出したのでそれを助けようとしたためだ。


 ただ、それだけだ。


 それなのに、その他領の貴族は子供の行為に激怒。本当ならその場で切り伏せられるところだったらしいが、一緒にいた孤児院の院長先生が助けを請うたらしい。


 周囲の目もあり、貴族が女の子を切り伏せられることはなかったものの怒りが治らなかったのか、その後、そいつは自身の権力を使って地区長にこの孤児院への寄付をやめさせるよう訴えた。


 そして、その訴えはすぐに通った。


 これが孤児院の寄付が止まった全容である。


 孤児院への寄付金なんて貴族にしたらそこまで多いものではない。何せ、『貴族の1回分の食事代・・・・・・・』で『孤児院の子供10人の1日分の食事代・・・・・・・』が賄えるのだから。いや、むしろ余るくらいだろう。


 それが、そんな一他領貴族の個人的な恨みから端を発した提言で寄付が止まってしまったのである。


 それが俺が暮らしている国の⋯⋯いや、この世界の政治なのだ。


 ひどいだろ? クソだろ?


 でもさ、これが異世界転生した・・・・・・・俺の現実リアルなんだよな〜。


 マジ、勘弁。



********************



 俺の名は、山田三郎。


 就活失敗して大学卒業後、そのまま家に引きこもった25歳のニートだ。


「あ〜〜〜〜〜⋯⋯ニートになっちゃったぁぁぁ〜〜」


 大学在学中、就職活動に明け暮れていたが終わらない不況の余波で就職できなかった俺は、そのままニートとなった。


「全部、不況のせいだ!」


 ということで、ネットの匿名掲示板に「不況の余波で就職できなかった件」というスレタイを立て、同志に励ましてもらおうと書き込みをした結果、


——————————————————


「ただの甘えで草ww」

「こういう不況のせいで就職できないとか言ってる奴はだいたいニート」

「そもそもこいつ情弱そうw」

「あと、童貞そうw」

「不況のせいにする前に、不甲斐ない自分を受け入れることから始めましょう」

「ファイトだよ!」


——————————————————


「全俺が泣いたっ!!!!」


 そんな、ネットの悪意に晒された俺はショックのあまり、三日間部屋に閉じこもっ⋯⋯、


「あ、俺、ニートだったわ」



 その後、俺はあいつら(掲示板の同士と思っていた奴ら)から誹謗中傷を浴びせられたが、逆に、そのおかげで奮起する。


「絶対に一流企業に就職して、俺を笑った奴らに目に物見せてくれる! あと、ど、どどど、童貞ちゃうわー!」


 そうして俺は、その日から必死になって勉強をした!⋯⋯⋯⋯わけなどなく、


「まー今日は英気を養って、勉強は明日からだなっ!!」


 という『明日からダイエットするムーブ』を地震で死ぬことになるその日までかましまくり、そして、その『人生最後の日』も部屋でダラダラとネットサーフィンをしていた。



 そして、地震が起きた。


 凄まじい揺れだった。


 東京に住んでいたが、あれだけの地震は生まれて初めてだった。


 まともに立てないどころか、自分がどういう状態になっているのかさえまったく把握できないくらい激しい揺れだったのを覚えている。


 死ぬ直前——はっきりと覚えているのは『後悔の念』だった。



「ああ⋯⋯しょうもない人生だったなぁ」



「結局、俺は死ぬ直前まで何かを成し遂げることも弛まぬ努力もすることなかったなぁ」



「小さい頃からずっと問題から逃げてばっかだったなぁ」



「ダサい人生のまま⋯⋯⋯⋯終わっちゃったなぁ」



 そんな言葉を頭の中でずっと繰り返していた。


 そして、最後の言葉は、



「もしも、生まれ変わることができたら、今度は問題から⋯⋯人生から⋯⋯逃げることはやめよう」



 だった。



********************



 そうして、俺こと⋯⋯山田三郎は異世界に転生した。


 転生したときは赤ちゃんだったが、もちろんこの時点で前世の山田三郎として意識はあった。ただ、少し奇妙ではあるのだがこの世界で転生して意識が覚醒した時、俺はすでに孤児院にいた。


 つまり、俺を産んだ母親や父親といった存在を知らないのだ。


 普通⋯⋯というか、異世界に転生するといった読み物ラノベ作品だと最初は両親の存在がいるものだと思っていたが、俺の場合、そんなことはなく、いきなり孤児院スタートだったのだ。


 なぜだかわからないが、しかし、こうなってしまっては仕方ないので、全てを受け入れ、俺は『リオ』としてこの孤児院から異世界生活をスタートさせたのであった。





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こちらも、よろしくお願いします。


「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」

https://kakuyomu.jp/works/16817330650503458404


「生活魔法で異世界無双〜クズ魔法と言われる生活魔法しか使えない私が、世界をひっくり返すまでのエトセトラ〜」

https://kakuyomu.jp/works/16817330655156379837


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