お届け物で〜っす!

「…………っ!」


 3撃。

 それらの突進をかわそうと、ヤツの動きは変わらない。いつまでも機械のようにこちらを追い続けるのみ。


 ……このストライクバスターパック?……僕が持ってても、使い道がない気がする。どこかで隙を見て、センさんに渡す……ことができればいいけれども。


「センさん!」

『何だ、ヴェンデッタパイロット!』


 ……もはや名前すらマトモに呼ばれなくなったし……


「どうやら、僕が一番狙われるらしくって……このストライクバスターパック……って装備をそっちに渡して、僕の方が近接装備に交換した方がいいんじゃないかって……」


『なるほど、確かにそれはいい案だと思うが……どうやって実現する気なんだ!』


 ———だよなあ。

 ……やりようならあるかもしれないけど……いいや、言ってみるか。


「そっちは……長刀を上に投げてください!」

『は……………はあ……??』


「僕がそっちの方に行って、このライフルをすれ違いざまに渡すので、そっちはその直前に長刀を2本上に放り投げてください!」


『投げた長刀をキャッチする気か?! サイドツーにそこまでの複雑な操縦を求めるなど、無茶だ!』


「無茶じゃ……ないです。できますよ、この———ヴェンデッタなら!


 それに、このままずっと追い回されるよりマシです!」


 ヴェンデッタには、直感的に動かせるOSが搭載されている。この体で、頭で、感覚で動かせる謎のシステムが。


 今、この手足は僕のものと同義だ。僕がそのようにあれと命じた瞬間に、ヴェンデッタのも同じように動く。


 だからこそ、だ。そのような不可能な話にだって、可能性が生まれる……!


『…………そうか。……やろう、確かに言う通りだ。何もしないよりかは、そっちの方が……


 まずはその機体を引き離してほしい! そのままこっちに接触すれば、武器を渡した瞬間にヤツに貫かれて終わりだろうからな!』


「引き離す、か……


 行けるのか、ヴェンデッタ」


 機関出力……60%。

 いける。まだまだ回せるじゃないか。


 スラスター出力再調整、こっちだってまだまだ出せる……!


 後から整備士に何言われたって、もう知るものか!……こっちは戦ってるんだ、そんなこと気にしている場合でもないっ!


 ———きたっ!


「…………っぎ……っ!!」


 スラスターと魔力機関の出力をありったけ上げた結果、ヴェンデッタの加速は最高潮に達した。

 がその分、僕自身にかかる負荷だって大きい。


 だが、ヤツの姿はみるみるうちに遠ざかってゆく。


「センさんっ!」


 ———が、センさんのジンはどんどん近づいてくる。


『……ああ、分かった!』


 ジンが2本の長刀を空に放り投げた。……今だ。


 猛スピードで突進しゆく中、2つのライフルを構え、そして———、


「……いっ———」


『———来たっ!』


 ライフルの受け渡しは———成功だ!

 いった、いった、やったぞ!……あとは長刀を……


『しまった、ケイ!……長刀はもう!』


「な———」


 しかして、ヤツは止まらず。

 超スピードで迫り来るヤツの刃、対するこっちは丸腰。

 無論、対抗できるわけもなく———、










『はいはいはい〜っ! お届け物に来ましたーっ!!……なんて』





 確かに、ヤツの刃はこちらに迫り来ていた。

 ……が、その刃を、ヴェンデッタの眼前で止めた、もう1つの刃が、そこに。


「え———」



 そのもう1つの刃———長刀を持っていたそのサイドツーは、またしても銀色に輝いていた。


 サイドツー・グリントラヴエル。全身の装甲が銀色に輝いているのが特徴的な機体だったが、その右腕だけは———通常のカラーのものに換装されていた。

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