SS ドラゴン


「ねえ、ママ。このドラゴン、ほんとうにいるの?」


5歳になった下の子が不思議そうに、私が妊娠中にハマっていたウッドパズルをみつめてる。


心配症で、インフルエンザやコロナが、自粛やマスク、うがい手洗いの緩和により、いつもより流行ってしまった頃に私が妊娠した。


だから、私より春馬くんの方が少し神経質になってた気がする。


ー自分が感染源にならない。


そういう意識が強かったようだ。私は釣りやドライブに行ってもいいのに?


って思いながらも、春馬くんがそばにいてくれるのは、


ー素直にすごくうれしい。


だから、甘え放題だった。ほんとうに遠恋中の塩対応が嘘のように、春馬くんはいまも甘々だ。


春馬くんがつくるなぞのレインボーだけが、


ーレインボー。


もちろん、子供にも食べさせてない。


ーパパがつくるレインボーだけは、ダメだよ?


って小さな頃から教えてるし、春馬くんも絶対に食べさせない。


ね?


春馬くん?


午年の春に生まれたから、春馬くん?


流石に娘たちの名前は、私も赤ちゃんの命名辞典みながら、いろんな読み方や画数とか調べたけどさ?


ね?


春馬くん?


ー絶対にお腹壊すからパパの料理はダメ。


って自分でいうってどういうこと?


って私はあきれてた。


「神話上の生き物かなあ。かっこいいね?」


ね?


春馬くん、なぜか、龍にもチャレンジして玉砕してだけど。


「ママ、楽しそうだね?ーあっ!」


ドラゴンの輪ゴムネジを巻きながら、


ーびしっ!


って音がして、娘の手が止まる。


私は声をだして笑ってしまった。


「だいじょうぶだよ?わざとじゃないなら、パパがまたなおしてくれるから?」


春馬くんの場合、喜んで分解していくから。


私はクスクスと笑った。


わざとじゃないは、みてたら、わかるし、また目をキラキラして、作ってくれるよ?


ね?


春馬くん。


はやくあいたいなあ?


って私は外国の空で元気に笑う春馬くんの姿を思い出し、少し寂しくなって、


「あっ!ウシさま!」


エスパーな旦那様だ、って笑ってた。

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