魏を去る范雎の背 稲妻轟く



 魏を去る范雎はんしょの背 稲妻轟く


 春秋戦国時代、范雎はんしょに仕えていました。ある時、范雎は陰謀により貶められ、散々に打ちのめされて、命からがらで魏を脱出します。その怒りと無念さは、どれ程だったでしょう。魏に失望した范雎は、しんへと亡命しました。

 秦の王は有能な人でした。

 范雎は登用され、秦の宰相(現在でいうところの総理大臣)にまで上り詰めます。後に、范雎は魏を攻めて大勝します。魏は、たった一人の才を見抜けなかったばかりに、大きな痛手を負ってしまいました。


 魏には、范雎に限らず多くの士人や才人がいて信念を燃やしていたのですが、魏は、范雎の件から学びませんでした。士人の忠言に声に耳を傾けず、冷遇し、身内ばかりを贔屓えこひいきしていたのです。


 結果、才人や士人は失望して、魏を去ってしまいました。彼らは范雎のように外国で出世して、後に魏を攻めました。

 こうして魏は滅び、秦に吸収されました。


 歴史は多くの教訓を伝えてくれます。これまでみくびったり意地悪をしたり冷遇した相手が、実はとんでもない天才野郎だった。なんて事は、現代でもしばしばあります。

 はい、怖いですね、恐ろしいですねえ!


 季語は「稲妻」です。故事をモチーフにしているので、季語の鮮度の問題で、この俳句はあまり評価されないかもしれません。ですが、現代を生きる多くの人の心には、鮮度を落とさず寄り添っているかと思います。

 今も、大概な時代ですから。


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