伸ばした手【BL】

柊 奏汰

プロローグ

―嫌だ


目の前で行われるその行為から、まだ幼かった俺は目を逸らす事が出来なかった。


―やめてくれ


その光景が、声が、触られた感触が。

心にも身体にも染み付いて、記憶から消えることはない。


助けて、誰か―




悪夢のようで、それでいて変えようの無い事実。


触れたいのに、触れられない。

触れて欲しいのに、受け入れられない。

それが当然で、仕方の無いことだと諦めていた。


でも…心の中ではもう1人の自分が叫ぶ。


このままじゃ嫌だ。

何で自分だけ?

当然なんかじゃない、仕方無いなんて思いたくない。


ねぇ、どうしたらいい?




【伸ばした手】




この手を掴んでくれる人なんて、誰も居ないと思っていた。

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