すいも甘いも…

みゅうた

第1話 あとむや

ここはとある田舎町の商店街



人々で賑わう大通りにそれはあった



【菓子本舗あとむや】



創業100年の老舗の和菓子屋



今の店主は3代目の葛城東吾(かつらぎとうご)



店の屋号になっている「あとむ」とは2代目の名前から取ってある



創業者である葛城甚之丞(かつらぎしんのじょう)

は西洋文化に興味があり、原子力を意味するアトミックから我が子に名前を付けていた



小春日和のこの日…



「はぁ〜この空気…この景色…懐かしいわ〜みんな元気かしら」



大通りを大きな荷物を持って歩く1人の少女



彼女が訪れたは【菓子本舗あとむや】の前だった



徐に引き戸を開けると威勢のいい声が聞こえた



「いらっしゃませ〜」



店の中には数々の和菓子が並んでいる



どら焼き、羊羹、葛切り、団子にお饅頭



ここの名物は「あとむ饅頭」である



薄皮の饅頭の中にカスタードクリームと粒あんが入っていて程よい甘さが人気の一品である



1人の店員が店に入って来たこの少女に気づくと慌てた様子で出迎えた



「時緒お嬢様!言って下さればお迎えに上がりましたのに…お帰りなさいませ!」



そうこの少女こそこの店の3代目である葛城東吾の長女である葛城時緒であった



彼女は和菓子屋の娘でありながらパティシエを目指してフランスに留学しており修行を終えて帰国したのだった



「お父様達の姿が見えないようだけど?」



「今度祭りで振る舞う菓子を決める会議に出席する為に商工会議所にお出かけです」



「そうなの…相変わらず忙しいのね…」



時緒が寂しそうな顔を見せると店の奥から誰かやって来た



「おお…時緒お帰り!長旅で疲れただろう…父さんなら夜になれば戻るから家の中に入ってゆっくりすると良い」



「嵐志兄様!」



奥から出て来たのは時緒の兄である嵐志であった



「もうすぐ武蔵と山吹も学校から戻って来るから先に風呂にでも入ると良い」



「ありがとう兄様…お土産沢山持って帰って来たのよ!」



「おお〜それは嬉しいね!土産話も沢山聞かせておくれ」



葛城時緒…彼女が老舗和菓子店の娘として培った能力を発揮してパティシエとして活躍していく物語である

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