7話 うみーみ

料理研究部の部長へのお礼を渡し終えた浦島銀河は部活棟のプラロボ部の部室へと戻ってきていた。


そして案の定────そこにいた。


そこのアースカラーの小さなソファーにすぽっと収まって仰向けになっている、

昨日は病人、今日は寝転びながらスマホを横向きに────


何してんだと言おうとしたが、何かをゴロっと見ているようで。



「何見てんだお前……」


「この水の星のグランドっての」


「おぉ! そんな古いのを?」


水の星のグランド……そのグランドとプラロボのファンであれば誰もが知っているタイトル名に銀河は目を見開き口をすぼめて明るく驚いた。


「スマホでCクチャンネルってのでみってるー」


Cクチャンネル、Cクオリティっていうグランドを生み出した会社のチャンネルだからCクチャンネル。

グランドやその他アニメ過去作が全部お安く見れちまうファンの必需サービス。


シラガを掻きながらシラガ部長はオーバーなリアクションで言った。


「あー! んだよ言えよ俺も入ってるから見せてやったのに」


「2週間無料だからそれ終わったらみっせてー」


「ちゃっかりしてんな! ってお前ここ家じゃねぇぞ」


「ふんふーん、ごろろーんっ」


仰向けから横向きにごろろーんっ、女子高生は完全にソファーを占拠している。


「ご、ごろろーんっ……にしてもお前どうして一番古いのから見たんだ、去年やってたグランドネクストミッションとか」


「んーー。なんかもったいないじゃん。底のカラメルからコンビニのプリンは食べないじゃん」


「なんか分かる気もするけど……おまえそれポエムだぞ」


「わたしのは分かるポエムだからねーー」


「なんだよそれ……ところで今何話なんだ?」


プラロボ部の部長が気になるのは海魅が今何話を観ているのか。

何かを話したそうにニヤついた表情で口が開いたままだ。


「んーー、ごろろんのいち」


「ごろろんのいち? ────ってイチってお前見始めたのついさっきじゃねぇか! よく逆さのプリンがどうたら御大層に言えたな」


「ところでなんでこの人たちロボット乗っていきなし地球でたたかってんの? バカなの?」


裏側スマホの目隠しをしていた、青い目が唐突に銀河の目と合った。


「きゅ、急だな……。でもバカってのはその通りかもな、んっとそれはな。あー、それは────キセキのホシである地球にある天然資源の価格が宇宙に進出した宇宙居住区に住む人達の分も含めて人類全員を支えきれなくなって宇宙輸出向けは高騰しちゃって。宇宙の人と地球人との資源格差が深刻になっちゃって起こってしまった宇宙からの地球と同じ豊かな生活を望む者たちのどうしようもない一揆みたいなもんでさ。きっかけは地球式の豊かな暮らしを映像に収めたなんてことのない、さぁ水の星に行こうとかいうキャッチコピーの世界政府公式の煽り動画だったんだよ。そのくせ地球に行ってビザを貰えるのは一部の特権階級と金持ち有名人だけで、それでブチギレたのが宇宙ドーム星々に住まう人々! 秘かに作り上げたグランドロボットの宇宙戦闘訓練を秘かに繰り返してきた宇宙連合軍が電光石火の進軍劇で世界政府軍を破り地球に下りてきてほぼ地球人で構成された世界政府が彼らとの停戦交渉席での資源価格の正常化などの内容をほぼ飲み圧力にひよるんだけど、地球人も今後一生地球が宇宙人の奴隷になってたまるかーってことでロボット技術を盗んで数年後に地球を舞台にまた開戦するわけで。そこで出来たのがほらこの1話のグラ」


「んー」


「どしたビギナー?」


ご丁寧にしたつもりのグランドⅠの世界観の説明に海魅はじーっと元気に突っ立つ彼の方を寝ながらに見つめて、


「なんか、違うかなって」


彼女の言った一言で、銀河の長台詞がすべてアワへと還ったような。

銀河部長は大口を開いて驚いた。


「ええ!? イヤッ! よく見てもっかい! 1話の最初からっナレーションとそこの映像が重要でさぁ! あのービギナーさん? そのすんとした遠い目になって、巻き戻し……」


「はいはい笑。」


笑いながら1話の最初に巻き戻し、誰もが知っているあのオープニングソングが流れる、彼女はスマホの音量をしれっと上げた。




▽▽▽

▽▽▽




『えーではナシモ監督、ほんじつ最後のリスナー様からの質問です』

『おっなんと小学3年生! うみーみちゃん! わたしはさいきんみはじめたんだけどぉどうしてロボットグランドはたたかっているのですかぁ?』

『はい、なんともまぁかわいらしぃぃ…………みたいですけどいかがでしょうナシモ監督! 小学3年生!』


『ふっふ。この質問はぼくねぇ何度か答えたことあってそのつど答えが変わっていった気もするけど。ええ、やっぱ答えはねそのぉアレコレつぎはぐよりこれがいちばん夢があるのではないかと』



『子供たちが喜ぶから、です』



『ということで……すばらしい! いかがだったでしょうっか? うみーみちゃん!』


『ふっふ』


『ではこの辺でバッチリ! ほんじつのゲストはグランドの生みーみの親ナシモ監督でした!!! 来週のゲストはきっとしょぼくなってるけどッ、グランド電波基地また来週!』


『来週も来ようか』


『ええ!!! それは私の心臓の方がご勘弁! また来週ーーーー!!!』

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