黙示録ダンジョン

ありのまま今起こったことを(ry


 あ........ありのまま今、起こったことを話すぜ。


 俺は、CH(中国)と戦争をしていたら、いつの間にか黙示録のダンジョンの攻略を始めていた。


 何を言っているのか分からねーと思うが、俺も何をされたのか分からなかった........


 頭がどうにかなりそうだった。神のイタズラとか、運命のイタズラだとかそんなチャチなもんじゃあ、断じてねぇ。


 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ........と言うか、今も味わってるぜ。ファァァック!!


「クソッタレがぁ!!」


 赤き馬に乗った騎士が剣を振り下ろすよりも先に、俺は能力を行使する。


昔懐かしの玩具箱トイボックス”。


 小学生の頃に遊んだ玩具が、今の俺を生かすか殺すかを決めるのだ。


 俺は素早くワイヤーを具現化すると、赤い馬の足に絡ませる。が、このクソ馬はそんなこと知ったことかと言わんばかりにワイヤーをブチブチと引きちぎりながら、俺たちに迫った来た。


 なんてこったWhat the fuck!!


 こいつ、俺のワイヤー戦法が全く効かねぇ!!俺が1番苦手とするタイプの化け物だ!!


 俺は続け様に足元に大量のサッカーボールを展開。さらに、相手の視界を少しでも封じるべく、煙花火を限界まで具現化して俺たちの姿を隠す。


 サッカーボールはあわよくば踏んで転んでくれないかなと言う期待の表れ、そして、視界を少しでも封じる事で、逃げる時間を稼ぐのだ。


 上に乗っている半裸の男にもワイヤーを巻き付けたが、どう見ても引きちぎられそうで困る。


 あぁ、神よ。頼むから俺を玩具にして遊ぶのはやめてくれ。


「リィズ!!逃げるぞ!!」

「分かってる!!」


 視界を封じたことにより、僅かに動きが鈍った赤い騎士。その隙を付いて、リィズは俺を抱き抱えながら全力でその場を離脱する。


 俺はその間もできる限りの妨害工作をし続け、とにかく俺たちを追えないようにありとあらゆる玩具で道を封鎖した。


 あぁ、ママチャリがまたぶっ壊されてる。かつてオークにも壊されていたよな。あれ。


 俺が使う能力の中で、ママチャリが1番不遇な扱いを受けている気がする。


 すまんなママチャリ。また俺達のために犠牲となってくれ。


 大量の煙花火と音を紛らわせるための爆竹。更に火薬の匂いを周囲にばら撒きまくったお陰か、その後赤い騎士が俺達を追うことは無かった。


 もし、追われ続けていたら、ワンチャン死んでいたかもしれないと思うと怖いな。


 リィズの足が早いお陰で生き残れたし、リィズにも感謝である。


「はぁ、はぁ........グレイちゃん、大丈夫?」

「なんとか。今思えば、ピギーに止めて貰えばよかったな。急すぎる展開に頭が回ってなかった」

「私も応戦すれば良かったね。急に視界が切り替わったから、少し取り乱しちゃった」


 道無き道を走り続け、ある程度の距離を確保した俺達。


 これでようやく自分の置かれた現状を把握できる。一体何が起きたんだ?


「ここはどこなんだ?」

「多分、アルプス山脈近辺だよ。あの騎士に見覚えがある。ここは、黙示録のダンジョンの外、かつて天使の1人が滅びを齎した世界........だと思う」

「あぁ、なるほど。通りであの赤い馬に見覚えがあったわけだ。確か、騎士の一人を討伐して天使がラッパを吹いたところだよな。調べておいてよかったぜ。これで、自分たちの居場所がわかったな。で、なんで俺たちこんなところにいるの?スーちゃん達もいないし........」

「多分、転移系能力者がどこかにいたんじゃないかなぁ........一瞬魔力の反応があったし。殺意を感じなかったから、少しだけ反応が遅れちゃった。ごめんね。油断してた」

「気にすんな。命があるだけ儲けもんだよ」


 転移系能力者。


 確か、相当希少な能力だった筈だ。


 しかも、その能力者の殆どが使い物にならないほどに弱い能力であり、世界で最も有名な転移系能力者の能力が5メールの範囲まで自分を転移させられる能力だったはず。


 確認されている範囲では、5メール程が限界。しかも、その能力も一回ミスをすると地面に足が埋まってネジ切れるなんてリスクがあったはずだ。


 少なくとも、数百kmを移動させる転移能力は聞いたことがないな。


「他のみんなも飛ばされたのか?」

「多分それは無いと思うけど、どうなんだろう。同時に複数の場所に座標を指定して飛ばせる転移能力を持っていたら、この戦争に駆り出されていると思わない?きっと、私たちの動きを補足して何度か妨害してきてると思うんだよねぇ」

「確かにそうだな。そんな便利な能力があったら、政府が黙っているわけもない。となると、政府ですら使いたくないようなデメリットが何かあったってことか」


 俺はそう言いながら、携帯電話を取り出すとレミヤにメールを入れようとする。


 が、しかし、滅びた世界には電波が届かないらしい。思いっきり圏外であった。


 これじゃ俺達が無事だという情報を渡せないな。


『ピギー?』

「ピギー。やっぱりピギーは着いてきてくれたのか。俺の中に入ってるしな。そりゃそうか」

『ピギ、ピギー』

「いいよいいよ。ちょっと眠かったのはしょうがないさ。転移に気づけなくても仕方がないよ」

「ピギーも眠くて反応が遅れることなんてあるんだねぇ。可愛い所があるじゃん」

『ピギー』


 ピギー、眠くて転移攻撃に対応できず。


 眠かったのならばしょうがない。ピギーだってそりゃ眠い時もあるさ。


 こうして俺達は生きているんだし、別にピギーに怒ったりとか叱ったりとかはしようと思わない。


 普段お世話になりっぱなしだからね。むしろ、ピギーがおっちょこちょいで可愛いじゃないか。


「それで、これからどうする?CHに帰る?」

「出来ればみんなと合流しに向かいたいけど、それをあの騎士が許してくれるのかがわからんよな。全ての草木が枯れ落ちたアルプス山脈の地で、生と死をかけた鬼ごっこをさせられる可能性の方が────」

「チッ!!」


 俺が呑気にそんなことを言った瞬間、リィズが俺を抱き抱えてその場を飛び退く。


 次の瞬間、俺たちのいた場所に斬撃が走り地面は真っ二つに割られていた。


 WOW。反応が1歩遅れていたら死んでたかも。


 ありがとうリィズ。やはりリィズは凄いね。俺は全く気づかなかった。


「........帰るのは無理そうだね。完全に補足されちゃってる。向こうが逃がしてくれるとは到底思えない」

「何とか逃げたいけど、あれ相手に逃げるのは無理そうだよなぁ。ピギーが鳴けば行けるか?」

「どうだろう?ピギーで動きを止められれば行けるかな?」

「行けばするだろうけど、数百km鳴き続けながら移動するのは厳しいかもな。ピギーが封印されてなければ全部破壊できただろうけど」

「ピギーの声にも限度はあるからねぇ。やっぱり、完璧に逃げるには攻略が安全かも。流石にあれを引連れて逃げたら世界が崩壊しそう」


 ですよね。


 ピギーにも射程範囲があるのは確認済み。遠ければ遠いほど、その力は弱まってしまう。限界まで封印された状態だから、出力に問題があるんだな。


 だからと言って封印解除!!とは行かないが。世界が滅んじゃうし。


 そして、あのストーカー騎士は間違いなく俺達を追いかけ続けるだろう。海越え山超え谷を超え、確実に俺たちを殺すはずだ。


 なんで分かるかって?鈍い俺ですら、明確な殺意を感じるから。


 執着する男は嫌われるぞベイビー。頼むから諦めてくれ。


「攻略するか?この三人で」

「それしか安全に帰る方法はないと思うよ。騎士を倒した後出てくる天使達のことも考えないといけないし」


 そうか。騎士を倒したら天使が出てくるんだったよな。


 しかも、地球を破壊するレベルの大災害を引き起こすとまで言われている。


 無理ゲーすぎでしょ。どうやって攻略するんだこれ。


 逃げればケツを追いかけられ、立ち向かえば滅びが待っている。


 あぁ、クソッタレのファック野郎め。誰がこのダンジョンに向けて核を落としてくれよ。




【黙示録の四騎士】

『ヨハネの黙示録』に記される四人の騎士とされているが、これは「馬に乗る者」(英語では「Horseman」)の意訳であり、原典には身分階級としての「騎士」に相当する単語は無い。小羊(キリスト)が解く七つの封印の内、始めの四つの封印が解かれた時に現れるという。四騎士はそれぞれが、地上の四分の一の支配、そして剣と飢饉と病・獣により、地上の人間を殺す権威を与えられているとされる。




 グレイとリーズヘルトが消えたCHの地にて、取り残されたジルハード達は困っていた。


 それもそのはず、急に目の前から自分たちのボスと仲間のひとりが消えれば慌ててしまうのも無理はない。


 つい先程まで隣にいた者が突如として消える。これは、誰しもが味わったことの無いはじめての経験であった。


「ボス?ボス!!おい!!ボスが消えたぞ?!どうなってんだ?!」

「ダメだ。電話が繋がらない。レミヤ、グレイお兄ちゃんを探せるか?」

「探しています。全世界の衛星から」

「また、ピギーが現れた時のようにダンジョンに誘拐されたのですかね?」

「ふむ。その可能性は高そうじゃが........一瞬魔力の反応があった気がするのぉ」

「どうするんのん?ボスが居ないとかなり困るわよん」


 彼らは基本的にグレイが絶対的な指針だとして付き従っている。


 つまり、グレイが居なければ、上手く動くことが出来ないのだ。


 このような事態に陥ったらどうするのかと言う、対策すらも立てていない。何故ならば、ボスが死ぬなどありえないから。


「困るっすね。でも、とりあえずはこのままCHを潰すべきなんじゃないっすか?どうせボスのことですし、生きてますよ。リーズヘルトの姐さんも多分一緒ですし」

「まぁ、リーズヘルトお姉ちゃんとグレイお兄ちゃんが居れば大抵は何とかなるだろうな。それこそ、五大ダンジョンが相手とかじゃなければ。いや、ピギーも居ないはずだから五大ダンジョンでも何とかなるか。あれは理の範疇を超えた存在だし」

「一体何があったら五大ダンジョンに行くんだよ。レミヤ、できる限りボスを早く見つけろ。心配だからな」

「意外と心配性なんですねジルハードさん」

「俺が心配してるのは、ボスが盛大に何かやらかして地球をぶっ壊さないかの心配だ。あのバカボスならやりかねないぞ。何せ、ダンジョンを使ってマルセイユを吹っ飛ばしたイカレ野郎だからな」


 確かに。


 全員が同じ事を思う。


 最近は大人しかったが、グレイは事ある毎にとんでもない騒ぎを起こす天才。


 今回がその天災になるかもしれないと思うと、焦りも見えてくる。


「できる限り早く見つけます」

「そうしてくれ。じゃないと、今度はこのユーラシア大陸を真っ二つに割るとかやりかねないからな........」


 ジルハードはそう言うと、お願いだから大人しくして欲しいと言う無理な願いをグレイにするのであった。




 後書き。

 ちなみに、ピギーが鳴いてリィズが戦うと言う選択肢をしなかったのは正解。

 もしその選択にしてたら、ワンチャン地球が滅んでた。

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