第65話 ゲームの結果。いざ、トゥギャザー・デート!!

「はい、無事に私が欲している装備ができました。これから結果発表なんですが......一つ良いかしら」


「はい、なんでしょうか......お嬢様!!」


「なんでも聞きますわ、ユミナ様!!」


「一つだけじゃなく幾つでも良いぜ、お嬢!!」


「その目から溢れる自信............はぁ〜」


 みんなに対してのご褒美企画。結局と言うべきかやってくれたと言うべきなのか......とにかくアクイローネは今度会った時、懲らしめる刑は確定だ。


「タウロスの生産品含めて、三人とも同点とは。全くも〜」


「「「イェーイ!!!!!!!!」」」


「何、ハイタッチしているのよ!?」


「これで私たちはお嬢様に対して命令をなんでもできると言うことですね」


「ぐぐぅ......ヴァルゴ......卑猥なの禁止」


「使いどきを見極める必要がありますわね」


「いや、速攻で使用して。割引シール貼るわよ」


「問題はどこまで、だな」


「言わなかったかしら。私ができる範囲よ。それにしても貴女たち......恥ずかしくないのかしら。一人の女の子に三人でなんて」


 少しの間があった。


「「「———ッ!?!?」」」


「あのさぁ、なんでみんな頬を赤らめてるの!?」


「私に『卑猥なの禁止』って言っておきながら」


「頭、吹いているの? みんなは大人なんだからもっと節度的な命令にってことよ」


「遥か年下を導くのも上の務めですよ、お嬢様」


「格好いい風に言っているとこ申し訳ないけど、自分たちが遥か年上だって暴露していることに気づいている?」


「「「———????」」」


 三人は両方の手のひらを上に向けて肩をすくめるしぐさをしていた。


「そのボディランゲージ、腹立つからやめなさい。命令よ」


「ユミナ様、今命令ができるのはアタシたちです」


「そうだぜ、まさかお嬢は自分が言ったことをなかったことにするのか〜」


「えぇえぇ、分かったわ。分かりました。このユミナ女王はそんなセコいことは絶対にしないわ。ドンときなさい」


 こうして私はヴァルゴ、アリエス、タウロスの星霊三人から一人に一個、ご褒美を与えることにした。





 私たちは『ティーグル』の街中を散策していた。アリエスの願いは私と一緒に街を歩きたいとか。


「まさか、ジャンケンして一番目がアリエスとはね」


「これも運命と心に留めておきます」


「そんなに重くならなくてもいんだよ。これが最後って訳じゃないし」


「この一瞬はこの時にしかないんです。貴重です」


「そ、そうですか」


 いつになくやる気に満ちている。私と歩くのがそんなに楽しみだったんだね。


「アリエスもその装備......ごめん」


 今のアリエスは歩く光源とでも言うべきなのか。聖女としてのオーラが溢れていて周りにいるプレイヤーが惚れ惚れしている。あわよくばの精神で触れると一貫の終わりだから気をつけなさい、プレイヤー諸君。

 本来ならアリエスに『純白の霊奏シルク・ヴェール』を装備させて私以外に見えないようにしたかった。


「いいですよ、実はこの『牡羊の星衣』の効果で【呪いのカースト救護ホーリー】が発する瘴気を抑えているんです」


「他の、それこそタウロスに頼めば......」


「昔、色々作ってくれましたがどれも【呪いのカースト救護ホーリー】の瘴気に耐えれなくて大破しました。いや、爆散の表現で合ってる?」


「どっちもどっちだよ。結局は壊れたのが事実だし」


「と、言うことで『牡羊の星衣』以外に瘴気を抑える装備品が発見されるまではこのままです」


「タウロスたち星霊が試行錯誤してもダメだったのに......私にできるのかな」


「今のこの世界はアタシたちがいた時代より進化しています。奇抜さも含めてですが、もしかしたらかもと。そして、ユミナ様なら見つけれる予感がします」


「じゃあ、アリエスの期待に応えないとね!」


「いつまでも待ちます。アタシは貴女様のモノですから!!」




「............私を慕ってくれての言葉なのは重々理解はしているんだけど、公衆の面前だし。言葉は選んでね」


 アリエスが周りを見ると、自分たちを見て居た堪れない雰囲気が漂っていた。いきなりアシリア聖女ちゃん似の金髪清純美少女が『アタシは貴女様のモノ』なんて言ったから変なドキドキを発生させてしまったかも。



「す、すみません。ユミナ様の前だと言わないと後悔すると考えてしまって......」


「話を変えましょう。ずっと聞きたいことがあったのよ」


「なんですか?」


「なんでアリエスたち、そのー......星霊はあんなに喧嘩腰の会話が中心なの?」


「う〜ん。話せば長いですが。アタシたちの時代にそれはもう種族同士で争っていまして。戦争も絶えませんでした」


「まさか、今でもお互いを恨んでいるの!?」


「それはもうありません。みんながそれぞれの種族のことを現状を知ってしまいましたので」


「じゃあ、なんで?」


「忘れないためです」


「『忘れないため』?」


「過去は過去ですが、無くしてはいけないモノ。だからアタシたちがああすることで二度と同じことをしないようにと、一つの決意表明みたいなものです」


「そんな理由があったんだね」


「まぁ、段々エスカレートしていって喧嘩してしまうこともしばしばありましたが」


「......ほどほどにね」




「それにしても......」


「はい?」


「アリエスって本当にアシリアさんに似ているよね」


 ゲームじゃなかったらこれほどまでに顔が類似しているなんて双子説まで疑われそう。

 しかしだ、二人とも知っている私にはそれぞれの個性があるので見分けが簡単。


「そのアシリアさん? なるお人はご存知ありませんがそんなにアタシに似ているのでしょうか」


「顔は瓜二つだな。うん、もう本当に......」


 アリエスが自分の顔を触っていた。そして少し落胆しているアリエス。


「ということはユミナ様にとっては顔見知りの認知ってことですか」


「そうだけど......明確に二人は別人と私は断言できるよ」


「そうなのですか?」


「うん、まずは......」


 私は隣に座っているアリエスに近づき、耳に手を伸ばす。


「まずは、これだよね。アリエスの耳」


「あっ、その......」


「顔を真っ赤にして、恥ずかしい顔も良いわね」


「うぅー......あまり触られると」


「牡羊座になった時に耳がこうなったの?」


「あっ.....はい。あっ......就任と同時に羊に似た耳になりました。初めは戸惑いましたが」


「そうだよね。人間の耳だったのに急に別物になるとか驚かない方がおかしいってものよ」


「あ、あの......ユミナ様。そろそろ......鋭敏なんです」


「あっ、ごめん。触りすぎたね。それにしても、大丈夫?」


「はひぃ、だ、大丈夫です......」


 こんなに息を荒げると......やっぱり疲れているんだね。小一時間とはいえ『ティーグル』の街を散策していたんだ。

 散策なのでどうしても街のメインストリートを歩く必要もあった。多くのお店が連なっていたのでプレイヤーやNPCでごった返し。

 加えて純白の霊奏シルク・ヴェールが装備できないアリエスは見る人全員がその清楚&聖なる感全開のオーラに当てられて群がってきたけど......

 因みにアリエス自身の美貌も言わずもがなだけど聖なる的なオーラは呪いのカースト救護ホーリーでそう見えているとか。群がってきたところを即死級の呪いのカースト救護ホーリーで不埒な者たちを撃退するとは聖女としての仕事的には完璧な防御方法だけど、アリエス自身に焦点を当てた場合は、これを考えた制作者は聖女に恨みでもあるのかっと考えたくなる。


「......これは早めに対策法を考えないと」


「どうかなされましたか?」


「うんうん、こっちの話。それにしてもあれ城じゃなかったんだね」


「そうでしたね、遠くからはお城に見えましたのに。近くで見たら神殿だったとは驚きでした」



『ティーグル』の中心にある建物。街から頂上にある建物を登ると見えてくるのが白を基調とした神殿だった。

 前にアクイローネが言っていた職業変更ができる施設がまさにこれだった。無数に存在する職業をビタスの神殿で変更......転職が可能らしい。私には【星霜せいそうの女王】を外す理由がないので使う機会がないかもしれないな。


「職業だけど、アリエスたちも変更できるのかな」


「どうでしょう。【星霊】は無理でしょうが、サブ職ならあるいはいけるかもしれません」


「ヴァルゴが言っていたけど......みんなのサブ職って種族だったり、元々の職業が該当するんだよね」


「はい、ヴァルゴなら【悪魔】、アタシとタウロスの場合は【聖女】や【炎鍛治神】ですので......他には【錬金術師】とか【天使】とか色々いましたよ。珍しいのでしたら【人魚姫】も在籍していました」


「本当にバリエーション豊かな種族だよね、星霊って」


「選出も、バラバラでした」


「【星霊】って一種の縛りみたいだよね」


「その分、特典がすごいので」


「『特典』って......それもそっか。元々持っていた職業とかの完全上位互換だしね」


「アタシの【聖女】の力を高めてくれますので、例外もありますが」


「例えば?」


「ヴァルゴです。彼女の場合は【悪魔】を完全に度外視しています。剣の能力とそれに必要な力の底上げに注力されています」


「確かに、ヴァルゴの攻撃......一発一発の破壊力高いよね」


「それでも、明らかに弱体化していますが」


「石化していたから?」


「訓練しないと習得した技なども錆びついてしまいます。アタシもそうです。回復魔法の回復量が以前よりも減っていました」


「そうなんだ。私にはどっちも強力で大変助かっておりますが〜」


「ユミナ様は時々、無茶な行動をしております。こっちは落ち着きません」


「ごめんなさい。考えるよりも体が動いちゃう性格なので」





「......まぁ、そこが好きな部分ではありますが」




「うん? なんか言った?」


「いえ、なんでも!」


「ふ〜ん。それにしても、良かったの?」


「何がです?」


「いや、卑猥なことを禁止とは言ったけど......街を歩くだけって願いもな〜って」


「ふふん、ユミナ様はアタシとそういうことをしたかったんですか」


「そ、そんなわけないじゃん。従者に手を出すとか女王の名を汚す行動」


「ヴァルゴを見ても同じこと言えますか」


「あれは......まぁ、なんと言いますか......」


「良いんです、これで。アタシ自身の体のこともそうですが、聖女時代は誰かと一緒に買い物などをしたことがなかったので。なのでシスターたちがみんなで街を散策しているのが羨ましいかったんです」


 そうか、アシリアさんも同じだった。聖女ってブラックすぎない。改善案を提出した方がより良い環境になると思うけど......大丈夫かな、アシリアさん。メンタルがズタボロになってないといいんだけど。もしも地獄の日々で嫌気がさしたら私の所にこればいいし。まぁ、アシリアさんを苦しめた者たちは私が叩きのめして生きていたことを後悔させるけど〜


 遠くで仕事をバリバリやっているキャリア聖女でNPCの友達を心配する私であった。



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