甘すぎます♡〜塩が効いた貴方は誰よりも私に甘い♡〜

chiropei

第1話

 °・.*·〇·………………………………·〇·*.・°




「はぁ〜っ… ε~(・д・`*)…」



 部屋の小さな窓から空を見上げ

 紺碧に輝くを見て、ため息をつく…



 私は愛実アミ17歳(メス)

 ここは月、私は月に住む


 と聞くと、全身毛むくじゃらの動物を

 想像すると思うけど、それとは少し…

 いや、かなり違う。


 姿形は地球に生存する人間に近い。

 人間の頭上に、長く伸びる耳と腰の辺りに

 丸い尻尾がある感じ、分かる?

 その二つにだけ、ふわふわした毛がびっしり

 生えている。



 私は、生まれた時から

 髪もも耳も尻尾も真っ黒だった。

 両親も兄姉も皆、白いのに…


 稀に生まれる【


 他所者よそものからは

「不吉、不潔、醜い」と罵られて生きてきた。


 でも、どんなに罵倒されようと、私は下を

 向いて生きて来たわけじゃない

 しっかり前を見て、先を考えて生きて来た。




 月は王国制度

 王様が決めた法律で全てが動いている。


 オスはメスをめとり、メスはオスに嫁ぐ

 それは家同士のバランスも計られる

 それが当たり前の慣習。



 中でも王家は特別で

 嫁入り、婿入りを望む家庭は多い。

 

 王家は一夫多妻制いっぷたさいせい一妻多夫制いっさいたふせい

 今の王様は7人のお妃様の間に

 5人の王子様と2人の姫様がいらっしゃる。


 王家の者のみが、妻、夫を望むだけ貰う…


 それってどうなの?

 …って私は思うのよね。

 言っちゃいけないらしいけど…


 移り気な夫が全ての妻を

 同じように愛し続けられるの?…逆も然り

 結局どちらかの想いが傾き

 一方通行な想いは、破滅を招く…

 …と思うんだけど?



 まぁ、私には関係ない。



 私は【

 嫁ぎ先など、あるはずもない。


 でもそれは、私にとっては好都合。


 ハッキリ言って、私は大の負けず嫌い。



 私は他所者お前たちのようにはならない!



 好きでもないオスに嫁いで子をもうけ

 育て、余生を送る?


 そんな将来に用はない!


 私は、自立したになる!


 その為には、どんなチャンスもモノにする!




 私は明日、18歳になる。

 18歳からは成兎おとなのうさぎとして扱われる。






 〇.*・。┈┈┈┈┈┈┈。・*.〇






 日付が変わる頃、両親に連れられ

 地球への降り口にやって来た。


 18歳になれば、この降り口を1人で通れる

 今から私は独り、初めて地球へ行く。


 これは、私にとっては大チャンス!


 地球のことは学校で学んだ。


『人種、言葉、文化、習慣』

 ありとあらゆることを学んで来た

 何故なら私は生まれた時から

 18歳になったら地球へ行くことを

 決められていたから。


 その理由は、私のこのだ。




 父が私を見下ろしながら言う

愛実アミ、お前は不完全だから

 そのように醜い姿なのだ

 地球へ行き、必ず

 綺麗になって帰っておいで」


「お父様、どうしたら白く綺麗に

 なれるのですか?」


 その問いかけに母が

 私の両耳の横に結い上げた髪を整えながら

半身はんしんに逢い【_月】を過ごすのです」


「お母様、ハンシンとは?

【_月】とはなんですか?」


半身はんしんとは、不完全なお前の片割れ

 逢えば必ず分かります」


 母は優しく微笑み、私の頬を撫でる

「さぁ、いってらっしゃい。私の愛する愛実アミ


「はい、いってきます。お父様、お母様」




 私は白くなった自分を想像し

 胸を躍らせながら地球への降り口に立つ。



 父が片手を上げ

「これより我が娘、愛実アミを地球へ降ろす。

 帰還条件は【姿】とする」


 父が手をゆっくりと下ろすと

 私は黄金色の光に包まれる

 その眩しさに目を閉じた。






 °・.*·〇·………………………………·〇·*.・°






 光が次第に収まり

 絶え間なく打ち寄せる波音と

 強い風が耳を震わせた。



 ゆっくりと目を開くと

 月明かりに照らされた紺碧の海が

 眼前に広がっている…


 私はその美しさに吸い込まれ

 しばらくの間 動けなかった…



「綺麗…」



 いつも月で見ていた空に浮かぶ地球は

 実際に目の前にしても青くて美しかった。



 初めてその地を踏んだ私は、第一声

「綺麗…」そうこぼした。




「すごい!…地球だ…これが海なのね?

 授業で学んだ通りだわ!

 どこまでも続く水溜り!」


 白い波は生き物のように

 立ち上がり消えるを繰り返し

 月の光が届かない波間は闇色にうごめいて

 恐ろしいほど美しい…


「わっ!冷たい!しょっぱい!

 砂もたくさんある!すごいすごい!」



 私は1人、ピョンピョンと飛び回り

 感動を発散した。





「はぁっ…はぁ〜、疲れた…。」



 キョロキョロと周りを見回すも

 人間の姿はない。

 それもそうだ、今は真夜中

 降り立った地は、吐く息も白い…

 辺りに雪は見えないが仲冬ちゅうとうの海…

 うろついている人間などいるはずもない。



「おーい!半身はんしん!どこー?」



 叫び、長い耳をそば立ててみても

 聞こえるのは波の打ち寄せる音だけ。



「…そんなに簡単に見つかるわけないか。」



 私は素足で踏む砂の感触をしばし楽しみ

 海を後にした。





 〇.*・。┈┈┈┈┈┈┈。・*.〇





「うわぉ…」



 波の音が消え、車が行き交う通りに出た。



「この箱が【車】ね!」



 私は、月から支給された7つ道具が入った

 大きな袋を背負い

 キョロキョロしながら街を歩く…

 キョロ(・ω・ U = U ・ω・)キョロ


 車はあれど人間がいない。


 左手には7つ道具のひとつ、スマートフォン

 通称スマホ、授業で使い方は習っている。



「まずは住処すみかへ向かわなくちゃ」



 スマホを操作する。

 私達うさぎが、地球へ来た時に住む家は

 渡されたスマホに登録されている。



「あった… えーと、直線距離で257km

 方角が… あ、こっちね!」



 住処すみかのある方角へ向き直り

 スマホをしっかりと握り直す。



 右手と左膝を地面に付けて、低く屈む。

 そして私は、勢いよく地面を蹴った。





 ヒンヤリとした空気を全身に感じながら

 上空を舞う。

 ビュウビュウと風を斬り

 長い黒髪と長い耳はパタパタとなびく。





「あった、ここね…」


 スマホで場所を確認

 人間には見られないように暗闇に紛れ

 静かに地に降り立った。



 5階建てのアパート

 この2階の一室が私の住処すみかとなる。



「さぁ、待ってなさい、半身はんしん!」



 私は、意気揚々と住処すみかへと足を踏み入れた。


 スタスタタ…(((((U ・-・)







 〇.*・。┈┈┈┈┈┈┈。・*.〇



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