助けてもらったかっこいいお姉さんが
さて、ノービスまで歩くのに俺の体力は持つかな。一回、回復を挟んだ方がいいかも。ちなみに、サキュバスの怪我や体力低下の時の回復方法は男の精だ。
この世界には薬草とか、回復液の入った瓶とか存在するが、サキュバスには効果がほとんどない。なにをするにしても精液である。
一応、クロエから貰った精液瓶を持ってきている。今回は前回の事を踏まえて、きちんと水で薄めておいた。飲むとそれなりに回復すると思う。
だが、飲むのに時間もかかるし、嗚咽を漏らしながらなので苦しい。
「感覚的にはいつもの半分くらいか。走って、ノービスに向かっても十分足りる気がする。それに、この辺で声を出しながら飲むのは危険な気がする」
せめて、安全な
魔物が出てきても全力で逃げるぞ。帰り道をちょっと進む。すっごい違和感を感じた。
「あれっ、こんな所に植物が生えていたか?」
もちろん、来た時と同じ道を通っているのだ。来た時には間違いなく、こんなでっかい植物は生えていなかったよ。えっと、迂回するしかないよな。
ちょっと大回りになるけど。俺がそう思いながら植物を見ていると植物と目があった。どうやら、目を閉じていたようだ。どう見ても、自分の数倍でかい魔物。そ、そう言えばプライムが成長したデカプライムもいるって聞いてたな。
ゆっくりと後ずさり、その後勢いよく背中を向けて走り出した。だが、デカプライムの触手に足を掴まれてしまい宙吊りにされてしまった。
天と地が逆転した。気持ち悪い、頭痛いくなってくる。
「は、離せ!!」
必死に抵抗するが、宙吊りの状態では全く力が出ない。暴れるのを嫌ったのか、デカプライムはもう片方の足も掴んだ。股を開いた状態で完全に固定されてしまった。
てか、俺の方からデカプライムの姿見えないんだよ。一体、この後どうするつもりなんだ。ゆっくり地面に下ろしてくれるとかないよな?
「あっ、いったぁ!?」
尻がジンジンする。見えないが間違いない、尻を叩かれている。見えないせいで次がいつ来るのかわからないのが、俺の恐怖を余計に誘う。
も、もしかしたら、俺が暴れたから怒っているのかもしれない。
「も、もう暴れないから、尻を叩くのはやめ、いったぁ!!」
全然関係なかった。くそう、リズムよく叩きやがって。尻が四つになるだろ。だが、抵抗する手段がない俺は叩かれるしかない。
ど、どうにか、抜け出す手段を考える。しかし、段々と叩かれて声が出なくなり目がぼやけてくる。ま、不味い、マジで死んじゃう!! このままだと、こんな所で死んでしまう。
意識がもうろうとする中で、かろうじて感じる落下する感覚。ただ、地面に落とされたわけじゃなくて、体全体が抱っこされている感じがした。
ただ、なんか固い。
「はっ、美しい。いや、そうじゃない。君、大丈夫かい。見た所サキュバスのようだね。精液瓶は持っているかな?」
俺がかろうじて顔を動かすと鎧の女性の姿。どうやら、俺はまたも助けられてしまったようだ。俺は座れる所で下ろされた。
女性に精液瓶の蓋を開けてもらい、飲んでいく。こんな時でも嗚咽が漏れるが、勢いよく飲んでいくと段々と意識が回復してきた。
そっからはゆっくりと飲み干した。視界が戻ったので、助けてもらった相手をようやく確認する。鎧をつけたお姉さんだ。ただ、普通じゃない。鎧の隙間が青白く発行しているのだ。
それは、炎にも見えた。
女性は嗚咽を漏らしながら飲んでいる俺を心配そうにしつつも、ゆっくりと俺が喋り出すまで待っていてくれたようだ。
「助けてくれてありがとう。俺はシイ、一応冒険者をやってる」
「奇遇だね、私も冒険者をしているんだ。私はミラ、よろしくねシイ」
ミラは笑顔で答えてくれた。周りを見ると、さっきまで俺を宙吊りにしていたデカプライムが、葉と触手一本だけを残して消滅していた。これだけで、彼女がかなり強い事がわかる。どれぐらいのランクなのだろうか?
「見た所、サキュバスのようだけど精液嫌いなんだね。まっ、私も種族としてははみ出し者だしわかるよ」
「ミラさんの種族って?」
特殊な種族なのは見ただけわかった。だが、実際にどんな種族なのかは俺にはわからない。
「ミラでいいよ。私はデュラハンなんだ。ほらっ」
ミラは自分の頭を取り外して持った。ほ、本当に頭が外れている。これは驚いた。いるのか、頭が取り外し可能な生物が。
「デュラハンは鎧の中にある青い炎が本体なんだ」
「へぇ、だから鎧が青白く発光しているんだな」
「ああ、これは興奮しているからなんだけど。気にしないで」
前半の部分がミラの声が小さすぎて上手く聞き取れなかった。最後の部分が気にしないでだし、気にしないようにしよう。
「でも、本当に運命を感じるよ。面倒な依頼ばかりを受けて来たかいがあるってものだ。まさか、こんな出会いがあるとは思わなかった」
「運命? よくわかんないけど、運命かもしれないな。ミラが助けに来てくれなかったら死んでいたと思うし」
ミラの方から運命を感じるのはよくわからんが、俺の方からは運命を感じるかもしれん。声も出せないのに、助けに来てくれたもんな。
「そうだ、俺に出来る事があるなら何でも言ってくれよ」
助けてもらった恩を返したいしな。
「えっ、今、何でもって言った?」
凄い食い気味に聞かれてしまった。
「う、うん、俺に出来る事なら何でもするよ。だって、ミラは命の恩人だし」
「それじゃあ、私と結婚してくれないか」
時間が止まったかのように感じた。はっきりと大きな声で言われたから、ミラが何を言ったのかは理解できているつもりだ。だが、自分の頭が違うんじゃないかと言ってくる。
えっと、結婚してくれないかって言った? いや、違うんじゃないか。結構いいですねみたいな聞き間違いをしたのではないか。そうに決まっているよな!!
ちゃんともう一回聞こう。
「ご、ごめん、もう一回言ってくれるか?」
「聞き取れなかったようだね。私の女王様になって欲しいんだ!!」
もう、全文違うんだけど!! さっきと言ってる事が違い過ぎてびっくりだよ!! どうなってんだ、俺はさっきまでの品のよさそうなお姉さんと話していたつもりだったんだけど。
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