2019年7月25日

 友人とT字路を歩いている。大通りにぶつかり信号待ちしていると左から軽トラがやってくる。軽トラの荷台にはライフルを持った男がいる。男は向かいの歩道に立っている人々を狙撃しはじめる。私は咄嗟に来た道を走って戻る、友人もやや遅れてついてくる。男は私たちがいる方の道も撃って通り過ぎていった。私たちはそのまま大通りから離れるように歩いていく。軽トラの姿は見えないが軽トラから流れていた演説の音は今も聞こえている。私たちは音から軽トラの位置が予想できないかと耳をそばだてる。私は前方右側の駐車場に隠れようと提案する。友人と一緒に車の後ろにうずくまる。軽トラの音が近づいてくる。荷台の男は私たちに気が付いたのか、駐車場に向けて威嚇射撃をして通り過ぎていった。私たちはもう大丈夫かと立ち上がる。すると先ほどの軽トラとは反対の方向から別の軽トラが現れる。荷台でライフルを持って立っている先輩と目が合う。彼は私たちの真正面に車を停めさせる。私は彼が主犯格なのだと理解する。先輩はいつもの笑顔で「二発だけ撃つよ」と言ってライフルを構える。友人と私はその場にうずくまる。友人は車からもぎとったカーナビで頭を隠しているが、私は何も持っていなかった。まず友人が狙われたが先輩は弾を外した。次は私だった。発砲の瞬間、頭を撃ち抜かれたことが分かる。痛みはなく血も流れていないが傷口から何かがゆっくりと失われていくのを感じた。先輩はとっくに去っており、友人は警察と救急車を呼んでいる。気が付くと私はいつまでも来ない救急車を待って部屋で横になっている。事件からは一日が経っていた。隣に座っている友人は何で気が付かなかったんだろうとサークルの写真を眺めているが、その写真に映っているのは別の先輩だった。友人が去ると入れ替わりに先輩がやってくる。武器は持っていない。先輩は今度の飲み会に来れるか聞いてくる。傷次第だと私は答える。あの時撃ったのは私が頭を守っていなかったからだと先輩は言う。それが許せなかったのだと。それから先輩は許せない人々について語りだす。それは犯行動機だった。先輩は意外に偏狭な人間なのだと思った。写真の方の先輩に会いたかった。


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