第204話 偽皇帝
ホワタに乗って物資を貯蔵してある砦に向かった。
味方が苦戦してると聞いていたが、味方は居なかった。
清水さんに言われて、俺は敵兵士を説得する為に砦へ向かう。
夜中に到着した俺達を乗せたホワタが、砦の外にも柵や堀を作って集合している、敵の兵士を掻い潜り砦に接近した。
俺はホワタから飛び降りて砦の城壁前に落ちる。
ホワタはそのまま遠くへ去って行った。
敵兵士は落ちて立ち上がった俺の近くを囲う。
「お前は何者だ?あの虎は何だ?」
「動くな動けば殺すぞ」
俺がスキル持ちや魔法使いかもと警戒して、少し遠目から何十人という兵士が弓を構えてる。
『俺はアイス国のアイス王だ』
『ルーガ帝国とアイス国は同盟を組んでる、ルーガ帝国の新しい皇帝ルシーセ帝に従うよう使者として来た』
『司令官に会わせてくれ』
王が自ら使者として来るチグハグさは、確かに理解するのに時間が掛かるよな。
周りの兵士は、どう対処して良いか判断出来ずに上官を呼んで来ているみたいだ。
上官
「アイス王だと言う証拠はあるんでしょうか?皇帝が新しく即位した情報は此方にも来たが、同時に地方の皇太子が皇帝に即位して此方に向かって進軍して来ています」
「私達は帝都に居るのは偽の皇帝と聞いていて、それを討伐する為に集合している」
まだ1週間も経ってないから各地の軍人も混乱しているのかな。
比較的近い砦でさえ、指揮をしていた貴族は帝都で死んで、代理の軍人が指揮をしているみたいだ。
地方に居た皇太子が皇帝に即位して、進軍して来ているらしいが、皇帝が死んでから即位まで早いな。
俺はルシーセ帝の印章が入った通行手形と、前皇帝とアイス国がスタンピードの為に同盟した時の同盟証を見せた。
上官も本物と思ったのか、砦の司令官が出てきて対応してきた。
砦の司令官
「ルシーセ様が皇帝の庶子なのは知っていたが、皇帝になれるとは思えない」
「東に居た第五皇太子が、皇帝陛下に即位して帝都に進軍しております」
「アイス王よ、此処で貴方を捕縛して皇帝陛下に対処をお任せする」
『俺の事を知らないのか?此処に居る兵士を皆殺しに出来るが』
『少し待っていろ、皇帝に即位した皇太子と会って来る』
アイス国のアイス王の話はもっと広まっていると思ってたけど、ネスカ国での話は思ったより広まって無いのか。
俺1人で街を破壊したなんて、見ないと信じられないか。
砦の司令官は俺の話を無視して兵士達に、俺の拘束を命令した。
強いとは思ってても何百人と兵士が居たら、拘束出来ると思ってそうだ。
矢が俺の足を目掛けて、何十本と射ってくる。
反射スキルで全部跳ね返る。
火魔法を今度は殺すつもりで放ってくるが、反射された炎で逆に放った魔法使いが火傷する。
司令官は30メートル離れた位置に居たけど、俺は周囲50メートルの地面を一瞬で凍らせて、周りの兵士達の足を地面に固定した。
砦の司令官
「な、なんだ!?」
『砦の城壁を溶かすから全員離れていろ!』
大声で言ってから俺は城壁に近付いて、手を付ける。
火魔法を手から出し、高温で城壁を溶かして2メートル幅の城壁を一部無くしてしまう。
城壁は土と鉄とコンクリート?の幾重の層で作られた頑丈な物だけど、赤く変化して溶けるという現象を見て兵士達は茫然自失している。
『これでも俺を捕縛して殺せると思えるなら、お前達を全員殺すしか無いな』
周りの凍らせた地面を溶かして足を自由にしたが、誰も動こうともしなかった。
『今から東へ向かい偽の皇帝と会って来るが、まだ止めるか?』
まだ戸惑っているが臨時の司令官は此方に従う感じになった。
砦の司令官
「い、いえ、我々はルシーセ帝に従います、我々はどうすればいいでしょうか?」
東の偽皇帝を倒すか従わせれば、砦や周辺の兵士はルシーセさんに従いそうだ。
偽皇帝が逃げようとしても、ホワタで移動する俺達から逃げられないだろう。
『まだ判断しないでも良いぞ、偽皇帝がどうなったか分かってからルシーセ帝の指示に従え』
俺は火の玉を頭上に飛ばして、清水さんとホワタを呼ぶ。
それから、此処を攻めていたアイス国の兵士が南に撤退した情報を聞いて、其処へ向かう。
アイス国の兵士を指揮して居たのは山口さんだった。
山口さん
「アイス王、面目御座いません」
「3000人も兵士を使い攻めたのに、2日で撤退してしまいました」
砦には1万人も居たし周辺から1万人も兵士が集まって来たんだ。
山口さんが直ぐに撤退し無かったら大勢が死んでいた。
山口さん自身も大怪我を負っていたけど生きていた、それで良いと思う。
『無駄に誰も死ななかったのなら、山口さんの判断は間違ってないです』
2人きりになった時に口調を変えて、山口さんに話し掛ける。
山口さん
「アイス様が来てくれると思っていたから、死なないで無駄な犠牲を出さない事だけを考えられました」
アイス国の兵士を全員回復させてから、砦にはまだ近寄らないで待機してと伝えた。
偽皇帝と会って来るので、もし上手く行けば周辺のルーガ帝国の兵士は、全員ルシーセさんに従うと思うから。
『清水さん、ホワタ、先に偽皇帝へ会いに行くので、東へ移動お願いします』
清水さんは服を何重にも重ねて、その上から兜と鎧を着ている。
暖かそうだし、多少の揺れならホワタの上で、ぶつけても痛く無さそうだ。
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