第9話 対話
女性のケガは、見た目よりも深くはなかった。
(良かった!骨にも異常は無い、左太ももの横辺りを少し削ったせいで血が多く出てきたんだな!)
不幸中の幸いなことに、彼女の足に弾が残ることはなかった。
「とりあえず、これで大丈夫な筈だ」
「ねぇ、私は敵よ?」
「知ってるよ」
「じゃあ、なんでこんなことしたの?」
彼女の当然の問いかけにロキは苦笑いをすることしか出来なかった。
「貴方は、何が目的なの?」
「え~と、……なんだろう?」
「……!?私に聞かれてもわからないわよ!」
「ハハハ……だよね!」
「貴方、変わってるって言われない?」
「ないな!」
「そう……なら私が言ってあげるわ!貴方は充分な変わり者よ!」
女性が『ビシッ』と指をロキに向けてそう語った。
「褒め言葉と思っておくね」
「褒めてないわ!」
「……」
「……」
「アハハ」
「ウフフ」
そんな問答の後、お互いに無言になり『プッ』と、どちらからともなく笑い合った。
「やっぱり、お礼だけは言うわ!……ありがとうございます」
「なら俺は、ケガをさせて、ごめんなさい」
お互いに頭を下げて、お礼と謝罪を言い合った。
「どうして謝るの?」
「君にケガをさせてしまったからだよ!」
「元はと言えば、私が貴方を殺そうとしたからよ」
「そうかもしれないけど……」
ポリッポリッと頬を掻いて、困った顔をするロキに訝しげな目になる女性。
「何を考えてるの?」
「君がキレイだなって……!?」
「……!?」
彼女の問いに思った事をそのまま言葉にしてしまい固まるロキとその言葉を聞いて目を大きくして固まった女性。
数瞬の見つめ合いのなか、初めに硬直から解けたのは……
「な……何を言うの!?」
「た……他意はないんだ!?」
そのまま、お互いに意識をしてしまい目を合わせることが出来ず、両者は頬を染めながら下を向くのであった。
(き……気まずい……!?)
(え!?……今、彼は私の事を……キ、キレイって……!?)
「おーい、ミツキどこにいるの?」
そんな静寂を打ち破ったのは、遠くから聞こえる別の女性兵の叫び声だった。
続く
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