第18話 情報屋兼盗賊
「そいつなら数年前にいつの間にか消えていました!」
「今どこにいるか知ってるか?」
「分かりません!申し訳ございません!」
「しょうがない・・・別の組織に行ってみるか・・・」
そう言って去って行く十蔵。それにより安堵する
「ああ、そうだ・・・悪い事とかするなよ?もしそんな話を聞いたらまたぶっ飛ばすからな?」
「「「はい!!」」」
これ以降
*****
その後も十蔵は犯罪組織を襲撃して回った。その度に"数年前に消えた"とか"1年前に消えた"とか"半年ぐらい前に消えた"とかばかりで本人にたどり着かない。
「う~ん・・・消えた年数は縮まってるけど・・・これで冒険者ギルドから教わった犯罪組織の情報は無くなったし・・・」
翌日も獄殺のカシュ―・ラッツの捜索は続く。
「今日は・・・山賊に話でも聞いてみるか・・・」
冒険者ギルドから教わった山賊や盗賊の情報を頼りに今度はそっちにも話を聞いてみることに。
しかし山賊は拠点を持たず一回襲えばどこか別の場所に拠点を移すので中々に探すのに苦労した十蔵。それだけで数日を費やしていた。
「ハア・・・探すのに苦労した割には何の情報も得られずか・・・」
「・・・すいません・・・」
山賊からは獄殺のカシュ―・ラッツの情報は何も出てこなかった。
「次は盗賊か・・・でもこの盗賊はこいつら以上にどこにいるのか・・・」
そう呟いた十蔵。すると山賊の1人が何かを言いたげに手を上げた。
「あの~・・・その盗賊って情報屋の事だったりします?」
「情報屋?・・・詳しく」
「あ、はい。情報屋は金さえ払えばどんな情報も売ってくれる奴で俺たちはそいつのお陰で何回か騎士とか冒険者から逃れることが出来たんですよ」
「なるほど・・・情報屋か・・・で?そいつは盗賊もしてるのか?」
「みたいですね。なんでも悪い噂のあるやつの屋敷に忍び込んで金とか宝石を盗んでるみたいで。だからあまり問題にもならないみたいです」
「つまり情報屋兼盗賊ってところか・・・ちなみにどこにいるって聞いたことは?」
「なんか・・・下水道にいるって聞いたことがありますね・・・」
「下水道か・・・それにしてもよく知ってんな?・・・」
「いや~・・・俺も情報屋の真似事をしているので・・・」
と、いうわけで十蔵は下水道にやってきた。
「まさか獄殺のカシュ―・ラッツ探しで下水道に入ることになるだなんて・・・でもどこに・・・」
下水道は街全体に広がっているために大変広大で故にここから人一人を捜索するのは中々骨が折れる作業となる。
「・・・地道に探すしかないか・・・」
それから十蔵は毎日のように下水道に通うことになる・・・なんてこともなかった。
それは十蔵が下水道の探索開始から数十分経過した時の事。
「次はこっちに行ってみるか」
十蔵は曲がり角を曲がった。するとその先に人が待ち構えていた。
「やあ、待っていたよ♪ゴールドランク冒険者の津村十蔵さん♪」
それは小柄な見た目で外見からは性別が判断できない人物。
「お前は?なんでこんなところにいるんだ?」
「獄殺のカシュ―・ラッツを探してるんでしょう?教えてあげてもいいよ?」
「・・・もしかして・・・君が情報屋兼盗賊の?」
「そ♪お兄さんがここに来たのは僕を探してでしょ?それにしても・・・お兄さん強いよねぇ♪あのミルス・スノーデンに勝っちゃうんだからさ♪そりゃあ
十蔵の今までについていろいろと知っているようだ。ちなみに
「・・・いろいろ知っているみたいだな・・・」
「まあね♪これでも情報屋だからさ♪・・・私はずっと待ってたんだよ・・・お兄さんみたいな人を・・・」
情報屋はそれまでの明るいテンションから途中でシリアスな雰囲気に変わった。
「お兄さんには・・・殺してほしいんだよ・・・獄殺のカシュ―・ラッツを・・・」
そういう情報屋の表情は復讐者のそれだった。
「・・・君は・・・獄殺のカシュ―・ラッツを恨んでるのか?・・・」
「・・・お兄さんも聞いてるでしょ?獄殺のカシュ―・ラッツがどういったやつか・・・僕のパパとママはあいつの実験台にされたんだ・・・ある日、家にやって来て僕とパパとママはあいつに拉致された・・・そこで行われたのは火魔法での拷問だった・・・あいつは火力を変えてパパやママで火魔法の実験を行った・・・パパが死ねば次はママが・・・そんな地獄のような拷問は僕の目の前で行われた・・・幸いなのがママが死んで次は僕の番になったときに助けが来て僕だけは無事だったけどね♪・・・」
そう最後は無理に明るい雰囲気を作っていた情報屋。
「だから僕はずっと獄殺のカシュ―・ラッツを殺してくれる人を探してたんだ・・・どうかあいつを殺してほしい・・・これはあいつの全被害者からの思いでもあるんだ・・・」
十蔵の心に火がついた。
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