車に乗っていると…

これは私の体験談である。


家族を連れ、車で隣町へ遊びに来ていた。


公園に行き、子ども達を遊ばせ、その帰りに買い物や食事をして帰路についていた。


辺りは暗くなり、街灯やロードサイド店舗の明かりが点々と灯っていた。


皆疲れから黙り込んでいた。


私は前照灯の向こうの闇に視線を向け、車を走らせていた。


私の車の他、通行車両はなかった。


ただぽつんと、私の車だけが道路を走っていた。


静寂と、ほのかな街明かりだけが広がる世界をひたすら走る。


突然、警報音が車内に鳴り響き自動ブレーキが作動した。


車は急減速し、家族は悲鳴を上げる。


パネルには、前車に過剰接近していると警告が表示されていた。


そんなバカな。

私は前を見る。

やはり、前に車はいない。


それどころか、周辺に車はおらず、人すらいない。


私は車を脇に停め直し、自動ブレーキがかかった場所を見た。


そこには何もなかった。


灰色のアスファルトが、街灯に照らされ

鈍く光っているだけ。


自分の車を見直しても、どこにも傷や凹みはない。


私の車は何をレーダーで感知したのだろうか。



それとも、単なる誤作動だろうか……


後で聞いた話だが、その道路区間は事故が頻発する場所だったらしい。


中には悲惨な事故も…


誤作動と言ってしまえばそれまでだが、追突防止の自動ブレーキが作動したのは何年も乗っていて初めてのことだった。


ひょっとすると…

漫然としていた私に何者かが警告をしたのでは…と思ったりする。


【おわり】












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