古民家に現れるもの

Aさんは独身貴族のやり手会社員だった。


独身で貯めた小金を、彼は人里離れた古民家のリフォームに使った。


昔から古民家カフェなどに憧れていたAさんは、リフォームをして自分の理想の家を作るのが夢だった。


思惑どおり古民家カフェ風の家に仕上がった。


Aさんは囲炉裏を使ってコーヒーを淹れたり、竈門でご飯を炊いたりと…楽しく生活していたが、ある時異変が起きた。


Aさんは通勤に車を使っている。

夜、仕事を終え帰宅して、ガレージに駐車のため後退させ始めた。


突然、後方から子どもの悲鳴が聞こえた。


Aさんはバックモニターに頼らない質で、それをまた自慢にしていた。


Aさんは大慌てで車を降り、後ろを確認する。


何もいない。


何か動物の鳴き声だったのだろうと、その時は気にしなかった。


翌日夜の帰宅時、Aさんは再び後退して駐車しようとしていた。


Aさんはバックモニターを見るが、何もいない。


安心してサイドミラーを見て下がり、停める寸前に再度モニターを見た。


すると、モニターに写っていた。


車のすぐ後ろに、絶望の表情を浮かべた小さな子供が立っていたのだ。


Aさんは慌てて急ブレーキした。


だが、またしても子どもの悲鳴が周囲に響いた。


今度こそやってしまったとAさんは車を降りる。


だが、車の周囲には何もいなければ、血や破片等といった事故の形跡も全く無かった。


怯えたAさんは町役場や、自治会の古参に話を聞いた。


すると、ある事件が判明した。


Aさんが生まれる前の時代


この古民家で、祖父が運転する車で駐車場にいた幼い孫を轢いてしまう事故があったそうだ。


村や町の人間は気味悪がって、この古民家には近づかなかったらしい。


何も知らないAさんが、突然購入したという経緯だった。


Aさんはそれを聞いて、神仏の関係者を呼び、子どもの霊を供養したそうだ。


供養を終えてから、その子どもはバックモニターに現れることなく、悲鳴が聞こえることもなくなったそうだ。



【おわり】

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