第7話 魔剣使い
ヤンデレの魔剣レーヴァテインを手にして、一か月が過ぎた。
そんな俺が今何をしているのかというと――。
「死ねぇ!」
「ぐぅぉぉぉ!!」
ダンジョンのボスを倒していた。
相手はBランクダンジョンのボス。
ヴァンパイア・ロードとかいう奴だ。
道中の魔物もダンジョンのボスも、全員レーヴァによる一撃で倒している。
「これでBランクダンジョンを制覇か」
『さすがですマスター!』
俺は現在、Bランクの冒険者。
たった一月でDランクからBランクまで上がるという、冒険者としてかなりの出世をしていた。
冒険者にはランクがあり、E~Aランクの五段階に分かれている。
冒険者に登録したての新米がEランク。
新米から脱した下級の冒険者がDランク。
ある程度経験を積み、一人前と認められるCランク。
才能のある者が努力を積んでやっとなれるBランク。
一部の突出した天才のみが到達できるAランク。
ランクごとに適性のダンジョンに挑み、攻略を行うのが普通だ。
自分のランクにあったダンジョンをクリアすることで、一つ上のランクに上がることができる。
そしてまた自分のランクのダンジョンに挑む。
この繰り返しである。
たまに自分の実力を過信したバカが上のランクのダンジョンに挑むことがある。
まあ少し前の俺のことだのだが。
先日までの俺の冒険者ランクはDランク。
新米冒険者をやっと脱した程度。
冒険者で言えば、下から数えた方が早い。そんな実力。
俺は自分に特別才能があるとは思っていない。
Eランクから脱するのに有した期間は3月で、それ自体は別に早くも遅くもない。
普通だ。
一般的な速度でDランクに上がった。
普通はDランクにあがるまでの期間は2、3月程度。
そこからCランクにあがるまでは1年あれば速い方で、普通は5年ほどかかる。
10年かけてCランクに上がる者も珍しくはない。
Aランクに上がるような奴らは、それこそ一瞬でEランクを卒業する。
たしかとあるAランク冒険者はたった1日でEランクからDランクに上がったらしい。
ちなみにその3日後にはもうCランクにあがったというのだから凄まじいものだ。
そいつらと比べてみると、俺がそのレベルに達することができるとはとても言えない。
せいぜいがCランク止まりの冒険者になるのが関の山だろう。
しかしそれは、純粋な俺の実力の話だ。
いまの俺にはこの魔剣レーヴァテインがある。
彼女の力を使えばもっと上のランクに行くことができる。
なにせAランクダンジョンにいるミノタウロスという魔物を一瞬で切り飛ばしたほどの力を有しているのだ。
彼女を使えば、既にAランクほどの力を持っていると言っても過言ではない。
そしてそれを証明するかのように、俺は破竹の勢いで冒険者ランクを上げていった。
レーヴァを手に入れた俺はDランクダンジョンに挑み、単独でボスを倒して制覇。
そのすぐ後にはCランクダンジョンに挑んでそこのボスも倒した。
その功績が認められ、審査の後にBランクの冒険者に昇格。
Bランクに上がった俺は、本日めでたくボスを倒してBランクダンジョンを制覇した。
これは快挙である。
聞いた話によると、Bランクダンジョンの制覇は普通はもっと時間がかかるものらしい。
しかし俺は戦闘自体は全て一瞬で終わらせることができたから、短い時間ででクリアできたのだ。
改めてレーヴァの強さを感じる。
そして街に帰って来た俺が、Bランクダンジョンを制覇したことをギルドに伝える。
すると――、
「さすがユーリ君ですね」
「期待の新人冒険者だけあるな」
「応援してるぜ!」
その場にいた職員や他の冒険者たちからめっちゃ持ち上げられていた。
そう、俺は急激にランクをあげたおかげで期待の新人として扱われている。
最初はやっかみや嫉妬から嫌がらせをされることもあった。
それに加えて、虚偽報告などのズルをしていると思われることもあった。
EランクからDランクに行くために3か月もかかったのに、DランクからBランクまで一か月で上がったからな。
そういう疑いをもたれても仕方ないとは思う。
まあ、きちんとボスの素材を持ってきていることから虚偽報告の疑いは晴れたし、こちらに絡んでくる者は魔剣を使って屠っているから心配はない。
ていうか、俺が魔剣を発見したおかげで強くなったということはきちんと報告しているんだよな。
それをズルだと思う人もいるだろう。
しかし強い武器によって武装をするのも含めて本人の実力だと考える人もいる。
ギルドとしては後者の考えをもっているようで、もっぱら俺は期待の新人扱いだ。
まあ、強さの理由なんて言うのはどうでもいいというのが本音だろうな。
ギルドとしては強い魔物の素材を持ってきてくれれば利益を得られるのだから、それで十分なのだ。
そして、魔剣を持っていることを報告した影響が一つある。
それは。
「さすが、【魔剣使い】のユーリ・クローターだな」
そういった声が聞こえてきた。
ギルドでつけられた俺の二つ名。
それが、魔剣使い。
その由来はもちろん、魔剣を使って戦っているからだ。
一部の活躍している冒険者は二つ名がつけられることがある。
俺もそれが与えられたということだ。
『魔剣使い。素晴らしい名前です』
それを聞いたレーヴァがうっとりとしながら言う。
『こんないい二つ名をつけて頂いて、私も恋人として嬉しいです。これも全て、マスターと私が力を合わせて協力したおけげですね。愛の共同作業です』
きゃー、と喜ぶレーヴァ。
だがその喜びから一転。
急に声のトーンが低くなる。
『でもマスター。さきほど女性の方と目を合わせてませんでしたか? 私言いましたよね、レーヴァ以外の女性と目を合わせちゃダメって』
「そ、そうかな? 勘違いじゃないかな? ていうか女なんていた? 俺はレーヴァ以外の女とか眼中にないから全く気が付かなかったなぁ」
実際にはそんなことはないし、普通に女性の冒険者とは目が合っていたことに気づいている。
だけどそんなことを言ってしまえば後が怖いから嘘をつく。
『そうだったんですね! マスターは私にしか興味がないんですね。もう、マスターったら! 本当に私のことが好きなんですからっ! もうもうっ!』
嬉しそうにレーヴァが言う。
その反応自体は可愛いものだが、これは俺が最適な答えを述べたためである。
一つ対応を間違えると危ない目にあうんだよなあ。
この一月、対応を間違えたせいで何度もえらい目にあいかけた。
目が合ったということを認めてしまったせいで、人間形態をとったまま一晩中ハイライトのない目でジーっと見つめられたこともある。
あの時は怖くて怖くてまともに寝られなかった。
もうあんな思いはしたくない。
パーフェクトコミュニケーションとらなくては。
そして、周りの人間や魔剣から持ち上げられている俺がギルドからでようとしたとき。
「冒険者の皆さんは、街の門の前に集まってきてください!」
そう叫ぶ声が響いた。
「魔王軍が現れました!」
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